分厚かった3回戦の壁を突破し、佐賀工業高校ラグビー部が全国ベスト8の常連となったのは1990年代後半からだ。筆者がスポーツ担当時代に「花園」に乗り込んだのは98年の大みそか。元日、佐賀工は順当に8強入りを果たす。だが、3日の準々決勝で啓光学園(大阪)に2点差で敗れた◆この時の2年生レギュラーの中に大田尾竜彦さんと山村亮さんがいた。2人が中心となり、佐賀工は翌年の大会でベスト4入り。大田尾さんは準々決勝で前歯を折るけがをしながらもチームを勝利に導いた◆それでも日本一には届かなかった。2人はしかし、大学でもラグビーを続け、4年後の大学選手権決勝で顔を合わせる。大田尾さんは早稲田、山村さんは関東学院の主将。県出身の2人が最高の舞台で戦うのを誇らしく感じた。そして、日本一をかけたこの一戦は関東学院に軍配が上がる◆頂点を極める厳しさを、悔しさとともに熟知する大田尾さんが母校の監督に就任したのは3年前。その早稲田があす、佐賀にやってくる。対戦相手は慶応。両校には伝統のチームカラーがある。展開力を武器にする「横の早稲田」に対し、慶応は「魂のタックル」が持ち味だ◆100年の歴史を誇る伝統の一戦。大田尾さんの哲学を選手たちがどう体現するか。あすはこどもの日。家族で観戦するのもいい。(義)