ローソンの看板商品でコンビニが生んだ国民食といえば「からあげクン」だ。1986年の発売から今年で37周年を迎え、シリーズ累計41億食以上を販売する超ロングセラーを記録している。なぜ、ローソンの“顔”となり、国民食と呼ばれるほどの人気商品になったのか。からあげクンを担当する株式会社ローソン・商品本部の吉岡亜希子さんに理由を聞いた。(前後編の前編)

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シリーズ累計41億食…ここまで人気を獲得した理由とは?


ローソンは1979年に、業界内で先駆けて店舗内にフライヤーを導入し、店内調理のホットスナックをいち早く販売していた。こうしたなか、“指でつまんで歩きながら食べられる”ひとくちタイプのレジ横商品として1986年に誕生したのが「からあげクン」だった。


発売当初の「からあげクン」。 定番の5コ入りだけでなく、9コ入りパックもあった


発売当初のフレーバーは、今でも定番の味として親しまれている、塩味をベースにした「からあげクン レギュラー」のみ。鶏むね肉の唐揚げをおやつ感覚で食べられるホットスナックとして登場し、当時コンビニのメインターゲットだった男性層の心をつかんでいった。


「からあげクン レギュラー」


1988年には唐辛子を使用したスパイシーな味が特徴の「からあげクン レッド」が登場すると、さらに購買層が拡大していき、2003年には「からあげクン チーズ」も定番商品化される。同時に、現在でもお馴染みのキャラクターである“妖精”がパッケージに描かれるようになった。


「からあげクン レッド」


それから20年経った今も売上は伸び続け、現在まで全国のローソン店舗において、シリーズ累計41億食が売れているという。


「からあげクン チーズ」


これほどまでのヒット&ロングセラーに成長した理由を、「からあげクンの誕生当時に購入していたお客さまに今でも慣れ親しんでいただいているから」だと吉岡さんは話す。

「ローソンに来店する30〜50代のお客さまで、子どものころからからあげクンが好きで買っていただいていた方が、お子さん用にも買っていただけるようになっていたりと、世代を超えて親しまれていることが大きな理由だと考えています。

また、食の安心、安全が求められるなか、国産若鶏むね肉、国産小麦粉を100%使用し、常に品質向上に努めてきたほか、お客さまを飽きさせない商品開発に取り組んできたことも、多くのお客さまにご支持いただけているのではないかと思っています」


本部長も涙した37年目で初めての値上げ


また、価格に関してもからあげクンならではのこだわりが1つある。

それは、値引きセールを一切しないこと。

コンビニでは、販売数を伸ばすためにクーポンを発行し、消費者の購買につなげる販促活動がよく行われているが、からあげクンの場合は値段を下げるのではなく「1個増量中」という個数を増やすキャンペーンを実施している。

発売以来一度も値引きセールをしていない理由を吉岡さんは説明する。

「からあげクンは1986年に生まれた当初から、他のホットスナックが100円代だったのに対し、200円代という高価格帯に設定していた商品でした。そのため、値引きによるブランド価値の低下が起こらないないように、“増量キャンペーン”という個数での販促活動を行っています。ちなみに、からあげクンが1個増量セール期間中は、1店舗あたり1日平均10個くらい販売数が伸びるんです」

しかし、近年の原材料の高騰や輸送コストの上昇によって、発売以来一度も値上げせずにきたからあげクンが、2022年5月末からついに、従来価格の216円(税込)から238円(税込)へと約10%の値上げに踏み切った。

ローソンの看板商品のこの値上げは、まさに本部長にとっても苦渋の決断だったそうだ。

「商品本部長が、からあげクンの価格改定を決める会議で涙を流すくらい、値上げは断腸の思いで決断したものでした。1986年から一度も値上げしていないブランドでしたが、人件費や材料費の高騰を考えると、そうせざるを得ない状況だと判断したんです」




担当者が涙するほど、ローソンの“アイコン的存在”として、社員からからも一目置かれるからあげクン。値上げした今もなお、主力商品であることに変わりないが、ロングセラーでありながら柔軟に新しいチャレンジをしている商品でもある。


さらに人気を加速させたヒット商品「ソースinシリーズ」


現在、からあげクンのブランド担当を務める吉岡さんは、ローソンの商品本部で10年以上にわたってさまざまな商品の開発に携わっていた。2022年にからあげクンの担当を前任から引き継いだあと、「からあげクン ソースinシリーズ」や「からあげクン ほりにし」などのヒット商品を担当している。


「ソースinからあげクンシリーズ」の第1弾「たっぷりタルタルソース味」


商品開発におけるエピソードについて、吉岡さんは「からあげクン ほりにし」の発売前のエピソードを教えてくれた。

「もともとは近畿エリアの支店長がキャンプ好きで、商品企画の会議で『ほりにし』を提案したのが始まりの商品でした。近畿エリアで先行販売し好調だったので、全国販売することになりました。商品化に向けて動いているなか、当初に予定した数量よりも多く販売したいという目標に急遽変わったことで、製造に使用するスパイスの量が足りなくなってしまい、1日に何度も交渉したのを覚えています」


「からあげクン ほりにし」 ※2023年8月現在は販売していません


また、発売日に間に合わせるため、正式にスパイスの追加確保が決まると同時に、すぐに生産ラインを動かせるように工場と連携をとり、全てスタンバイした状態で待機してもらっていたという。

「発売日の遅延は避けたかったので、製造元から『OK』をもらった瞬間に、電話で工場に依頼して生産をすぐに始めることができたのは、関係各所のいろんな協力があってこそだったと思っています」

結果として、初めは近畿エリア限定で販売された「からあげクン ほりにし」は、反響のよさからエリアを拡大し、全国でも人気商品になったのだ。

後編につづく


#2 累計358種類の味を持つローソン「からあげクン」の歴代フレーバーで人気ランキングベスト5

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