2023年度(1月〜12月)に反響の大きかったスポーツ記事ベスト5をお届けする。男性編第1位は、59年ぶりの関西対決となった阪神タイガースとオリックスバファローズの日本シリーズを考察した記事(初公開日:2023年11月6日)。互いに譲らず3勝3敗の接戦で最終戦までもつれる白熱の展開となったが、第7戦を7−1で勝利した阪神が38年ぶりの日本一となった。

2023年度(1月〜12月)に反響の大きかったスポーツ記事ベスト5をお届けする。男性編第1位は、59年ぶりの関西対決となった阪神タイガースとオリックスバファローズの考察し、球団とファンの絆に迫った記事だ。(初公開日:2023年11月6日。記事は公開日の状況。ご注意ください)

阪神とオリックス、1300人対100人の警備格差

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今年のプロ野球は阪神タイガースの38年ぶり日本一で幕を閉じた。

59年ぶりの関西対決は一進一退の攻防の末、第7戦までもつれる球史に残る日本シリーズとなった。しかし、接戦の試合内容の裏で阪神とオリックスのある大きな“格差”も話題となっていた。

11月4日、大阪府警は阪神が優勝した場合、多くのファンが集まる道頓堀の警備に1300人の警備員の動員を予定した。一方でオリックスが優勝した場合、警備員はたった100人の動員予定。この警備格差に対して、X(旧Twitter)上では「むしろオリックスの時、100人要ります???」という声まで上がった。

こうした阪神・オリックスの人気格差は、球場でも顕著だった。

阪神の本拠地・甲子園球場で試合のあった第3〜5戦は、スタンドの約9割を阪神ファンが埋め尽くし、オリックスにとっては完全アウェーの状況となった。オリックスの本拠地・京セラドームで行われた試合でさえ、球場全体で両チームのファンは半々の割合。オリックスはホームの優位性を活かしきれたとはいい難いかった。

それでも、オリックスファンは阪神ファンで埋め尽くされた甲子園のレフトスタンドの一角で、気迫のこもった応援を見せた。その健闘に対して、第3戦で決勝適時打を放ったオリックスの宗佑磨は試合後、「応援聞こえてますよ」と称えていた。また、第6戦の試合後には、中嶋聡監督が「明日は決戦になりますので、みなさん大きな声で、声枯らして、のど飴持ってしっかり応援してください」と呼びかけた。

阪神とオリックス。両球団のファンの数にはたしかに大きな開きがあるのかもしれない。

しかし、それは警備態勢に1300人と100人ほどの差をつけるほどの開きなのだろうか。

「ファンの数では阪神に負けるけど、オリックスのほうが…」

「ぶっちゃけ、阪神ファンの応援すごいっすね。でも、オリファンだって負けてない」

第6戦を京セラドームで応援していた会社員の池上彰宏さん(40歳)は、今シリーズでのオリックスファン、特にオリ姫(オリックスの女性ファンの愛称)の応援に驚いたという。

「みんな声でてますね。特に今日のオリ姫やばいっす。こんなオリ姫見たことない。『バファエール』の女性パート、あんな声でてるの聞いたことないし、感動しました」

本来チャンスのときにしか歌われない男女混成の応援歌『バファエール』が、第6〜7戦では1回裏の攻撃で、全打者に対して歌われた。その際、女性パートの声量はこれまでに聞いたことのないほどの大きさだった。

この応援には選手たちからも反響があり、セットアッパーの阿部翔太は第6戦の試合後に自身のX(旧Twitter)でその感動を伝えていた。

由伸やっぱり凄いぞ!!
今日の初回からのバファエールも凄かった!!
👍あと1試合応援よろしくお願いします!!
日本一なろう!!
#みんなでバファエール #全員で勝つ

「シーズン序盤に『バファエール』を聞いたときは、女性パートの声が小さくて、みかねた熱烈な男のファンが裏声で歌ってましたからね(笑)。でも、シーズン後半からオリ姫の気合いも入って、女性パートの声量が少しずつ大きくなったような気がします。そういうちょっとずつ成熟していく感じを見られるのがオリックスのよさなんですよね」(池上さん)

同じく第2戦を球場で観戦していた会社員の西川安希子さん(42歳)は、今シリーズでの奮闘でさらにオリックスが好きになったという。

「阪神ファンの声援はドームで反響してすごいけど、オリックスファンの応援もシーズン中よりすごかった。ふだんは内野席で応援歌を歌う人は見かけないけど、いっぱいいたのは日本シリーズならではやなって思いました」

「ファンの数では阪神に負けるかもしれんけど、絆はオリックスファンのほうが強いと思う。
中嶋監督になってからチームも強くなって少しずつファンも増えている。ほっといてもファンがたくさん集まる阪神よりも、オリックスのほうが球団がファンを大事にしてくれてるように思います」(西川さん)

38年ぶりの日本一を待ちわびた阪神ファンの熱狂的な後押しはすごかった。

しかし、オリックスにはオリックスにしかない楽しみと歴史がある。人気格差が顕著だったといわれる今年の日本シリーズだが、改めて球団とファンの絆は固くなったはずだ。

取材・文/集英社オンライン編集部

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