字幕翻訳の第一人者・戸田奈津子さんは、学生時代から熱心に劇場通いをしてきた生粋の映画好き。彼女が愛してきたスターや監督の見るべき1本を、長場雄さんの作品付きで紹介する。

アメリカの闊達な女性という
イメージそのまま

『スピード』(1994)で一躍有名になったサンドラ・ブロックは、存在感のあるルックスと明るいキャラクターが魅力。あの映画のスリリングな展開には誰もが手に汗をにぎったはずです。スターになりたてのキアヌ・リーヴスを現場でサンドラが励ましていたそう。ふたりの相性のよさも見事でした。

彼女を主役に据えた『スピード2』(1997)も製作されましたが、こちらはあまり評判がよくなかったわね。封切に際して来日した主演スター2人の通訳をしましたが、肝心のジェイソン・パトリックがあまりおもしろ味のない暗い人だったの。

黙っている彼に対して、サンドラが朗らかにいじりまくっていたのを覚えています(笑)。頭の回転も早いし、アメリカの闊達な女性というイメージそのまま。それを生かしたラブコメも楽しいけど、シリアスなドラマにも果敢に挑戦しています。

『スピード』(1994)Speed 上映時間:1時間56分/アメリカ

客を乗せたロサンゼルスのバスに、走行速度が時速50マイル(80km)を下回ると爆発する爆弾が仕掛けられる。LA市警のSWAT隊員ジャック(キアヌ・リーヴス)は、危険を顧みずにバスに乗車。自分を追ってきたと勘違いした不法滞在者の乗客が発砲し、運転手が負傷してしまう。

代わりにハンドルを握ったのは、スピード違反で免停中の乗客アニー(サンドラ・ブロック)だった。

サンドラ・ブロック

1964年7月26日生まれ、アメリカ・ヴァージニア州出身。『失踪 妄想は究極の凶器』(1993)『デモリションマン』(1993)などに出演し、キアヌ・リーヴスと共演した『スピード』(1994)で一躍スターに。

主な出演作は『あなたが寝てる間に…』(1995)『微笑みをもう一度』(1998)『デンジャラス・ビューティー』(2000)『トゥー・ウィークス・ノーティス』(2002)『あなたは私の婿になる』(2009)『ゼロ・グラビティ』(2013)『オーシャンズ8』(2018)『ザ・ロストシティ』(2022)など。『しあわせの隠れ場所』(2009)でアカデミー主演女優賞を受賞した。

語り/戸田奈津子 アートワーク/長場雄 文/松山梢