演劇界の異才・三浦大輔の3年ぶりの新作舞台『ハザカイキ』で主演を務めるSUPER EIGHTの丸山隆平。演じるのはなんと芸能記者役。舞台にかける思いと「記者に向いている」と語る自身の能力とは?

登場人物みんなが、ろくでなし

──丸山さんは今回、三浦大輔さんと初タッグを組みますが、『娼年』『愛の渦』『何者』『そして僕は途方に暮れる』『物語なき、この世界。』など、三浦さんの映画や舞台を何本もご覧になってきたそうですね?

丸山隆平(以下、同) 三浦さんの作品の魅力は登場人物がみんな、ろくでなしだというところ。現代という檻の中で必死にもがいて、自分の中の小さな革命を起こそうとしている人物が描かれているのが魅力的だと感じております。三浦さんの作る世界に入れるなんて思ってもいなかったので、とても光栄でうれしかったです。

──『ハザカイキ』で一番注目なのは、ふだん、取材される側の芸能人である丸山さんが、芸能記者を演じられることだと思います。

いやもう、どこからどこまでが芸能記者というのか、カテゴリ的にも曖昧ですし、霧の中を探るような感じです。もちろん、今回は撮る側の記者の心情と撮られる側の芸能人の心情は劇の中で欠かせない要素だと思うのですが、それ以上に大事なのは、記者がスキャンダルを世にさらしたことでどのような影響を及ぼし、どんなメンタルになり、どういう選択をしていくのかということ。

仕掛けた側と仕掛けられた側で起こる何かしらの摩擦が物語になると思います。物事の外側ではなく、人間の内面を描く物語を楽しんでいただければ。

ねちっこい文章力は芸能記者に向いていると思う

──芸能記者の菅原裕一役を演じるにあたり、どのように作品に臨まれる予定ですか?

職業の性質そのものに関しては、物語の軸ではない気もしますが、もしも繋がれるなら専門の方にお話を聞いてみたいなとは思っています。撮られる側の気持ちはめちゃくちゃわかるのですが、撮る側の心情はわからないので。

──もしも丸山さんが実際に芸能記者になった場合、強みにできると思う部分、向いていないと思う弱点はありますか?

保証がないものに対して長い間待てないので、向いていないと思いますね。たとえば、ラーメン屋さんでもそうなんです。いくら人気のお店でも、僕の舌に合うという味の保証がないわけじゃないですか。そこに並んだりするのは耐えられないんです。

記者もそうじゃないですか。確実にスクープが取れるなら待つけど、長く張り込んでもうまく撮れるかどうかわからない。暑かろうが寒かろうがずっと待つのは難しいです。

──では、強みになると思うのは?

文章じゃないですかね。なんてことない出来事をふくらましていかにねちっこく、いやらしく書くかということは、たぶん、長けていると思います。

撮られる側の人間からすると、ここ最近、週刊誌の方ってあまり努力していないと思うこともあります。芸能人がその日どこで何をしていたのか、ファンの方でもわかる日にちを別の日にすり替えて報じたりするんですよ。

僕だったらきっちり下調べして書きますから。ペンは剣よりも強いというけれど、あれは僕のことやと思います。

情報が溢れる今は、まさに時代のハザカイキ

──タイトルの『ハザカイキ』からイメージされることは?

今はジャーナリズムと一般人による誹謗中傷との境界線やはざまみたいなものが曖昧になっている気がします。ウェブニュースやTikTokなどでポップに情報が入ってくる時代だから、何が本当で嘘かというはざまさえも、情報が多すぎてわからなくなっている。ほんまに転機だと思うんですよね。

そういう大きな流れに惑わされない自分を持っておかなきゃいけない時代になってきている。「百聞は一見にしかず」という言葉もあるし、「論より証拠」という言葉もあるように、自分の目で見て体感したことを信じる勇気を持ったり、努力をしなきゃいけないんじゃないかなって思います。

「そろそろピンチですよ、みなさん気づいてますか?」みたいな警鐘を鳴らされているような気がしますね。

──今回の作品の見どころは?

いわゆる芸能とメディアという派手な話だったりするので、メッセージ性がある社会派の作品だと捉えられるかもしませんが、僕らはもうちょっとエンタメとして作っていきたいと思っているんです。

台本はめっちゃおもしろいし、それぞれの人物がしっかり描かれるいわゆる群像劇です。登場人物たちがろくでもない部分をどう打開していこうとするのか、最後まで逃げ切ろうとするのか……。人間の曖昧さやつかみどころのなさを表現できれば、このエンタメは成功じゃないかな。

見てくださった方が身近な人を大切にできるような、そんな舞台になるんじゃないかと思っています。


取材・文/松山 梢 撮影/大塚雄太 ヘアメイク/高 千沙都 スタイリスト/釘宮一彰


丸山隆平/まるやまりゅうへい
1983年11月26日生まれ、京都府出身。2004年に関ジャニ∞(現SUPER EIGHT)のメンバーとしてCDデビュー。以降、個性あふれる楽曲を次々と発表している。音楽活動のほか、バラエティ、情報番組の司会など多岐に渡って活躍し、俳優としても、ドラマ・映画・舞台とジャンルを問わず高い評価を得ている。現在『関ジャム完全燃SHOW』、『SUPER EIGHTのあとはご自由に』、『ありえへん∞世界』にレギュラー出演中。『マクベス』(2016) 『泥棒役者』(2018)『パラダイス』『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(2022)など舞台やミュージカルにも積極的に出演している。

Bunkamura Production 2024『ハザカイキ』


芸能記者である菅原裕一(丸山隆平)が担当することになった、国民的人気タレントの橋本香(恒松祐里)と人気アーティスト・加藤勇(九条ジョー)の熱愛疑惑。リークしたのは、香の友人・野口裕子(横山由依)。香の父・橋本浩二(風間杜夫)は人気俳優であったが、芸能事務所の社長となり、いまは香のマネージャーの田村修(米村亮太朗)とともにマネージメントをしている。香がまだ幼い頃に、不倫をスクープされ芸能界から姿を消した自身の経験を元に、香にはスキャンダルを起こさないよう諭している。マンションから出てきた香を追い、菅原が入ったスナックには浩二と離婚した香の母・智子(大空ゆうひ)がいた。菅原には同棲している恋人・鈴木里美(さとうほなみ)と、親友・今井伸二(勝地涼)がいる。菅原は里美との生活に安らぎを得、今井と会うときには仕事の愚痴を話したり、ごく普通に過ごし、そんな生活が今後も続くと信じていたが、実は二人は菅原の仕事を快く思ってはいなかった。
ある日勇がとある不祥事で芸能界を追放され、事態が急変する。勇との熱愛をスクープされた香にも芸能人としての存続の危機が訪れ、菅原も芸能記者として最悪の事態に陥る……。


作・演出:三浦大輔
出演:丸山隆平、勝地涼、恒松祐里、さとうほなみ、九条ジョー、米村亮太朗、横山由依、大空ゆうひ、風間杜夫ほか

日程・会場:3月31日(日)〜4月22日(月) 東京・THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)
4月27日(土)〜5月6日(月・休) 大阪・森ノ宮ピロティホール

【公式サイト】https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/24_hazakaiki.html