7年半ぶりとなる写真集を発表した筧美和子。この春30歳を迎え、モデル、役者、そしてグラビアの被写体として今なお活躍し続ける彼女に、グラビアとは? 写真とは? 何かを聞いた。

篠山紀信にも尋ねた質問

――今回の写真集を撮影した写真家の佐内正史(さないまさふみ)さんとは、ほとんど打ち合わせをせず撮影に臨まれたとか。

筧美和子(以下同)
 「こういうのアリかもね」「ここで撮ってみようか」という感じで、お互いその場で案を出し合うことはあったのですが、ふだんの撮影のようなきっちりした段取りや打ち合わせはなかったですね。

会話しているうちに撮影が始まって、自然なままの私を撮られるというのは、すごく心地のよい体験でした。“気持ちファースト”というか(笑)。

――「心地のよい体験」というのは、具体的にどのような感覚だったのでしょう。

「私はただここにいるだけでいいんだ」という感覚、でしょうか。もちろん、撮影において「自然」であることが常にベストなわけではありません。でもお芝居においても、「自然体」を意識しすぎるとかえって体に力が入ってしまったりするんです。

「ありのまま、自然な自分をさらけ出す」というのは、久しく忘れていた表現の仕方だな、と撮影を通して再発見できましたね。

――「グラビアって、なんだろう?」というキャッチフレーズが目を引きます。今回の撮影を通して答えは見つかりましたか?

いやあ、難しいですね。私、11年前に篠山紀信さんに撮っていただいたときも、篠山さんに「グラビアってなんですか?」って尋ねてみたんです。篠山さんは「本来は印刷の種類のことだけど…グラビアってなんなんだろうね」とおっしゃっていたのですが、確かになかなか言葉じゃ言いあらわせない。

――筧さんのキャリアの中でグラビアという仕事にモヤモヤした感情を抱いたことはありますか?

正直ありますね。写っている自分が自分じゃなく感じてしまったこともありますし、一方でそこに需要もあるし必要とされているという事実もある。

今回の撮影を通じて撮られる人の魅力――シンプルな人間味のようなものが感じられる写真なのでは?と思うようになりました。でもときどきで答えが違うのかなとも思いますね。

レタッチはほぼなし 

――「撮られる人の魅力」といえば、今回の作品は、ほとんどレタッチをされていないそうですね。

そうなんです。女性の友達と話していて、「太ったんだよね」「最近体のここが気になる」といった話題になることがあるんですけど、他人からしたらまったく気にならないところ、むしろ魅力的な部分までもがコンプレックスになってしまうことがある。シワやシミだって年齢を重ねた結果ですし、その人の魅力だと思うんですね。

だから今回の写真集では、普通レタッチで修正してしまうようなところも、「このシワはありだね」「ここに見えてる血管もキレイじゃない?」と、なるべく見てもらおうとあえて残しています。私は他人のシワや傷あとも素敵だなと思うから、読者の人にも、私のそういうところを嘘なく出したい、と思ったんです。

――写真集の中でヘアスタイルも変わっています。

撮影を通して、私自身どんどんニュートラルな状態になっていったんです。佐内さんとお話を重ねるうちに、シンプルなところ、写真の原点に立ち返っていくというか。よけいな考えや雑念がどんどん削ぎ落とされていった結果、「髪も、いらないかな…」と切ってしまいました(笑)。

――今後もまた「グラビアって、なんだろう?」という問いに対する答えを探求し続けていかれますか?

どうかな…実は「被写体」としてグラビアを探求するというのは、今回でやり切った気もしているんです。もちろん「グラビアとは?」と頭で考えることは今後もあるでしょうけど、被写体・筧美和子としての熱は、今のところすべて『ゴーみぃー』につぎ込みました。

そんな写真集を楽しんでいただければと思います。

取材・文/結城紫雄 
撮影/松木宏祐 
ヘア&メイク/白水真佑子 
スタイリング/番場直美

筧美和子写真集 ゴーみぃー

筧美和子 佐内正史
筧美和子写真集 ゴーみぃー
4月26日
3,300円(税込)
菊判変型/256ページ
ISBN: 978-4-08-790158-0
グラビアってなんだろう? 写真ってなんだろう? 東京、福江島、沖縄、そしてまた、東京。写真家・佐内正史とタッグを組んで、答えのない答えを探しながら、日々、撮影を重ねてきた。 「グラビアは私の原点であり、写真が好きだからこそ、本質に近づきたいと思いました。佐内さんの写真は、人物も景色もモノも等しく自然な状態で区別なく写っている印象があります。その世界の中で、私もフラットに撮ってもらいたい――」 約7年半ぶりのリリースとなる写真集は、“新しいグラビアの形”が詰まった大ボリューム256ページ。30歳になる筧美和子の新しいスタートラインとして、「好きにやっちゃえ!」と読者の背中も優しく押す意欲作。