Jリーグ序盤戦の印象をフカボリ!
Jリーグ序盤戦の印象をフカボリ!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!

第93回のテーマはJリーグ序盤戦について。第2節終了時点で全勝するクラブがなくなり、より混沌としてきた今季のJリーグ。第7節を終えた時点で見えてきた上位クラブや注目クラブの現状を福西崇史が解説する。

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今シーズンのJリーグが開幕し、7節を消化しました。徐々に上位、下位とグループが見えてきましたが、序盤の印象としては例年にも増してリーグが混沌としてきたな、というものです。

開幕から2節を消化してすでに全勝のクラブがなくなり、引き分けが非常に多いというのはそれを象徴していて、本当に突出したチームはないと思います。

王者のヴィッセル神戸は、連覇に向けて昨季のベースになにを加えていくかというところで宮代大聖や広瀬陸斗など新戦力が先発に名を連ね、相変わらず大迫勇也や武藤嘉紀の個の強さもあります。ただ、4位と上位につけているものの、さすがに研究されてきていると感じます。

横浜F・マリノスは監督がハリー・キューウェルに替わり、新チームとなりました。アタッキングフットボールというこれまでのベースがありつつ、やり方に変化を加えながらリーグと並行して開幕前からACLのラウンド16、準々決勝を戦ってきました。そんななかですでに2敗と、さすがに選手層の厚さはそこまで感じられず、苦戦を強いられています。

浦和レッズはペア・マティアス・ヘグモ新監督になって攻撃的なサッカーを標榜すると、ややバランスを欠いている印象です。12得点と攻撃力はあるものの、10失点と昨季の強みであった守備の安定感が出せなくなっています。

一方で昨季から続いて好調なのが、無敗を維持し、現在2位のサンフレッチェ広島です。ミヒャエル・スキッペ体制も3年目になり、強度の高い守備をベースに縦に速い攻撃は健在で、前線に大橋祐紀を加えたことでよりチーム力が増していると感じます。

そして序盤の台風の目となったのが、現在首位に立つ昇格組のFC町田ゼルビアです。昨季、シーズンを通して示した強度が高く、安定感した守備をベースにしたサッカーが、J1でも通用することをここまで証明しています。オ・セフンや柴戸海、仙頭啓矢、ドレシェヴィッチら新戦力もフィットし、チーム力アップに成功しています。

個人的に注目しているのが、広島と同じく無敗で現在3位のセレッソ大阪です。日本代表の毎熊晟矢と新加入の登里享平が偽サイドバックとなり、ビルドアップの出口になったり、押し込んだ際にはアンダーラップで攻撃に厚みを加えたりと、SBを含んだサイドの強みを活かすサッカーは面白いと思います。

また、北海道コンサドーレ札幌から獲得した田中駿汰のアンカー起用も注目すべき点です。大型のアンカーは日本にはあまりいないタイプで、このまま良いシーズンを過ごせば日本代表も見えてくると思います。

序盤こそ引き分けが続いて勝ち星に恵まれませんでしたが、第3節から3連勝と勝てるようになり、調子を維持できれば優勝争いに絡んでくることも十分にあり得ると思います。

シーズン序盤、選手マネジメントなどを含め、苦戦を強いられている印象を受けたのが札幌と東京ヴェルディです。

札幌はオフに主力の多くを引き抜かれ、それを補うだけの補強ができず、その影響がそのまま出ていると感じます。とくに昨季までの強みであった前からのハイプレスでハメることができず、厳しい展開を強いられています。

東京Vはここまですべての試合で失点していて、昨季の強みであった守備の固さを発揮できていません。それでも4試合で引き分けていて、どちらに転んでもおかしくない試合が多く、今後勝ち星が増えていく可能性もあると思います。ただ、補強という面で多くを望めないのが厳しいところです。

序盤を終えて各クラブの動向が見えてきて、ここから本当の上位、中位、下位というグループが分かれていきます。序盤の中で見えた課題に対してどのように取り組み、夏の補強でどう補っていくのか。

そこでの動きや修正の速いクラブは上位に上がってくることはありうるだろうし、町田や広島、C大阪など結果が出たチームがより安定感を増して、突き放していくこともあると思います。リーグがより混沌としてきたからこそ、これからの動き次第で順位の大きな変動も十分にありえます。

まずは夏場までに各クラブがここからどうチームを強化、立て直していくのかにぜひ注目してもらいたいと思います。

構成/篠 幸彦 撮影/鈴木大喜