幸せな日々を夢見て迎えたが　ほえ続け、かみついたら離れないポメラニアンに流血沙汰

　見た目のかわいらしさと活発なキャラクターが人気のポメラニアン。しかし、ＵＧ ＤＯＧＳアトラスタワー中目黒店（以下ＵＧ）には、寝ない、暴れる、ほえる、かみまくるポメの子犬と、手に負えず困り果てた家族が続々とやってくる。今回も規格外の体力で延々とほえ続け、家族をめちゃがみするポメラニアンの男の子のお話。

　激アツ店長こと高橋信行さん、中目黒の駅前で叫ぶ！

「かわいい！　だけではすまないハイパーポメラニアンはいる」

お花畑にいるような幸せをもう一度

「もう一度、ワンコと暮らしたいなぁ……」

　以前飼っていたポメラニアンとチワワのミックス、通称「ポメチワ」は、ほえない、かまない、イタズラなんてしたことがないという、お母さん曰く「奇跡のイイコ」だった。しつけなどまったく必要なく、もちろんなんの悩みもなかった。「本当に癒やされて、お花畑にいるような幸せな日々だった。もう一度、あの生活をしたいと考えるようになりました」

　ほしかったのは、毛色がブラック＆タンのポメラニアン。「大好きなK-POPグループの推しのメンバーが飼っているので、同じ毛色の子犬がいいなぁ、って」

　ある日、ブリーダーのサイトを眺めている中で、まさにブラック＆タンのポメを発見。すぐに見学を申し込む。元気いっぱいの子犬は、「もう、ただただかわいくて」とお母さんは目尻を下げる。とはいえ、そのときはちょっと見るだけの軽い気持ちだった。が、ブリーダーによると、その日も次の日も子犬の見学予約がぎっしり詰まっているという。そして、「一番最初に決めた家に売る」と。

「かわいいですよ」「おとなしいですよ」とあおられ、こんなにかわいいんだったらすぐに売れちゃうに違いない！　と焦ったお母さんは、その場で即決。「いつかは犬と暮らしたいなとは思っていましたが、われながらものすごい急展開でした」

　とはいえ、コロナ禍で仕事は完全リモート、さらにペットＯＫの物件にも入居済み。出会いは突然だったが、準備は整っていた。３日後、正式にお迎えに行くと、「キャンキャンほえてわちゃわちゃ暴れて、とにかく元気いっぱいでした」。ポメの子犬は「りく」と名付けられた。

ほえ続け、甘がみといえないほどかみつく

　連れて帰ったその日から夜鳴きが始まった。「３日間はずーっとほえ続けてました」とお母さん。最初は１時間ほえたら１時間静かになったが、ほえる時間がどんどん長くなっていく。「ポメラニアンはほえる犬種という印象があったので、仕方ないのかな……と」

　ふわふわゴージャスな毛とうるうるの瞳。キュートな見た目のポメラニアンだが、刺激に敏感で警戒心が強い傾向があり、興奮するとほえやすい犬種とも。さらに「犬種に限らず、黒い毛色の子は強い気質を持っているように感じます」と高橋店長は解説する。

　りくくんは興奮しやすく、何かをきっかけにスイッチが入ると延々とほえ続けた。食べることへの執着も強く、「フードの袋のカサっという音や、ドライフードがコロンと転がったときの小さな音も聞き漏らさず、『よこせ！』とばかりにギャンギャン要求ぼえしました」とお母さん。

　かみつきもひどくなっていく。「甘がみというには激しすぎるほどで……。私の二の腕にかみついて、ぶら下がっても離さないこともありました」。体に触られることを極度に嫌がり、首輪をつけようとするとガブッ、抱っこしようものならガブガブ！　お母さんの手は傷だらけになったが、「私はあまり物事を深く考えないタイプ（笑）。痛いし大変ではありましたが、それなりにりくと楽しく暮らしていました」と明るく振り返る。

もう待っていられない！

　しかし、りくくんはものすごい勢いで大きくなっていった。「ブリーダーさんから『この子は大きな体格になるかも』と言われていたので、このままどんどん大きくなって本気がみされたら大ケガをしてしまうかも」。実際、りくくんがかむ傷はどんどん深くなり、流血沙汰に。お母さんは薬局で特大サイズの消毒液を購入するが、それもあっという間になくなるほど。さすがに危機感を覚え、犬のしつけの動画を見ては試してみた。

　ほえたりかんだりしたら飼い主が部屋から出て、犬が静かになったら戻る。興奮した犬を落ち着かせ、大好きな飼い主がその場を離れるという「イヤな体験」と結びつけることで問題行動をしなくなる、というしつけ法だ。早速挑戦してみたが「１時間でも、それ以上でも、りくはずーっとほえ続けていました」とお母さんは苦笑い。

　季節は真冬。お母さんは暖房のないキッチンで漫才の動画配信をひたすら見て時間を潰したという。「とにかく体力がすごくて。いつまでもほえ続けることができちゃう。うちは賃貸物件なので、このままではご近所迷惑になるのではという不安もありました」

　発散のためと１日３回は散歩に出かけ、休日はなんと３時間以上歩くことも。とはいえ、りくくんは自分が行きたい方向にロケットダッシュ、と思えば拾い食いして……と、なかなかの破天荒ぶり。そんなはちゃめちゃ散歩にお母さんはヘトヘトになったが、りくくんは疲れた様子を見せることはなく、やはり何かきっかけがあると火が付いたようにほえ続けた。

　プロに見てもらおうと出張トレーニングに問い合わせると、予約がいっぱいで１カ月以上先になるという。「どんどん体が大きく、ほえもかみもひどくなるのに、そんなに待ってられない！」。お母さんはあわててインターネットで検索する。

　「子犬」「本気がみ」「流血」

　この検索ワードでヒットしたのが、sippoのこの連載だった。「ちょうどポメラニアンの

が公開されたタイミングでした。同じポメということもあり一気に読んで、うちと同じだ！　と」。

　りくくんは月齢４カ月を迎えていた。年の瀬も押し迫っていたこともあり、お母さんは新年明けてすぐのカウンセリングの予約を入れる。

後編につづく（４月29日公開予定）