映画『ハピネス』窪塚愛流、蒔田彩珠

いま大注目の若手俳優、窪塚愛流さんと蒔田彩珠さんがW主演を務める映画『ハピネス』が5月17日(金)、公開される。原作は「下妻物語 ヤンキーちゃんとロリータちゃん」などで知られる嶽本野ばらの同名小説。ある日「私ね、あと一週間で死んじゃうの」と唐突に告げられ、戸惑いながらも恋人に寄り添う国木田雪夫役を窪塚さん、余命を宣告されつつも自らの運命を受け入れ、自分らしく生きる女子高生・山岸由茉役を蒔田さんが演じた。17歳という若さで告げられた残酷な運命と対峙し、慎重に生きることよりも残りの人生を笑顔で幸せに過ごすことを選んだ2人の、“悲しくて最高に幸せな7日間”が映し出される。難役を好演した窪塚さんと蒔田さんに、本作の見どころを聞いた。

映画初主演となる窪塚愛流、「逃したらもったいない」と出演決意

映画『ハピネス』窪塚愛流、蒔田彩珠

日々の当たり前を見直すきっかけになる作品に

――余命1週間と宣告された少女とその恋人という難しい役どころです。出演が決まった時はどんなお気持ちでしたか?

窪塚愛流(以下、窪塚) お話を頂いた時は嬉しかったですが、主演を担えるなんて全然思っていませんでした。でも脚本を読ませていただいてからは、弱音が一切なくなりました。それは自分に自信を持てたからではなくて「この作品を逃したら、自分の俳優人生もったいない!」と思ったからです。「できるかできないかの弱音は、クランクアップしてから吐こう!」と思って、切り替えて気合を入れました。せっかく今の自分にいただいたお仕事なのだからこそ、感謝の気持ちを持って本気で臨もうと思いました。そして、自分だけではなく、(主演としての)“責任の重さ”を蒔田さんが半分担ってくれたことは、とても心強かったです。

蒔田愛珠(以下、蒔田) 私も愛流くんと一緒で、1人じゃないっていうのはすごく心強かったですね。今までやったことのない役柄だったので、楽しみでした。一方で、衣装の着こなしをはじめ、話し方や言葉の一つ一つも難しかったので、不安ももちろんありました。でもそれ以上に、いただいた脚本が本当に素晴らしかったんです。2人で演じている姿というのが想像できたので「挑戦したい!」と思いました。

――この作品に出演される前と後では、死生観のようなものに変化はありましたか?

窪塚 やっぱりまずは“命の大切さ”っていうのを、改めて実感しました。これまでも考える機会はあったとは思いますが、いざ「自分の大切な人が亡くなる」ということを考えたときに、今まで感じたことのない感情が湧き上がってきました。(本作に出演することで)自分の人生にすごく大きなアクセントをもらったことが、“受け容れる”っていうことでした。僕が演じた雪夫が(蒔田さんが演じた)由茉の幸せのために“受け容れる”ことをしたように、大切な人や家族の幸せのためには、自分のエゴよりも相手のやりたいことや想いを最大限に受け止めることが、ゆくゆくは自分の幸せになるのだと思いました。

蒔田 私も愛流くんと同じように思っています。普段は当たり前に過ごしていても、そばにいてくれる人のことをもっと大切に考えないといけないんだなっていうのは、演じてみてもそうですし、完成された作品を観ても、改めて思いましたね。

映画『ハピネス』窪塚愛流、蒔田彩珠

――余命一週間と宣告された由茉の人としてのあり方に、憧れや共感を抱くことはありましたか?

蒔田 自分のことよりも周りのことを幸せにできて、こういう状況でもそれを貫き通せるっていうのがすごく強いことだな、と。もし自分がそうした似たような状況になったときに、自分のことだけじゃなくて、周りのことも想える人になりたいなと思いました。

――ご自身や恋人が余命1週間と宣告されたとして、どんな行動を取ると思いますか?

蒔田 演じてみても(自分が“余命1週間”と宣告されることは)なかなか想像し難いことではあるんですが、私も由茉のように自分の好きな人と好きなことに囲まれながら最後まで生きられるのが一番いいと思います。やっぱり雪夫をはじめ、両親や周りのみんなも由茉への愛が本当に深くて、演じながらもその愛を実感しました。

窪塚 僕は雪夫のようには到底なれないなと思いました。いくら好きな人や大切な人の幸せを願ったとしても、1週間という短さは僕には耐えられない。あそこまで幸せそうに一緒に笑ってあげられることは、正直想像できないので、やっぱり雪夫のことは尊敬します。

――劇中では雪夫も心が乱れ、気持ちが追いつかずにいる場面もありました。

窪塚 共感しました。でも僕だったら自分の中で決心したことがあったとしても、葛藤がずっと続いてしまって、やっぱり相手の前で涙が出てしまうこともあると思います。由茉の前で、あそこまで悲しさを隠すことはできないです。

蒔田彩珠のロリータファッションは「お世辞なしで本当に似合っている!」 

映画『ハピネス』窪塚愛流、蒔田彩珠

窪塚愛流が惚れ惚れした世界観

――ロリータファッションが大好きな主人公・由茉ですが、実際にまとってみていかがでしたか?

蒔田 今まで自分の人生には全くなかった分野のファッションなので、最初衣装合わせで着たときは、ちょっと恥ずかしさはありました。でも由茉の一番好きなものですし、ロリータ服を着ているときの由茉が一番輝いていたので、その気持ちに乗っかりました。ロケ中も、より目立つので恥ずかしかったりはしたんですけど、そんな時、橋本愛さんが演じる(同じくロリータファッションが好きな)雪夫の姉・月子の「私は何も恥ずかしいことはしていません」というセリフがあって「その通りだな」と思ったので堂々と着ていました。

――ロリータファッションの蒔田さんを見た感想をお聞かせください。

窪塚 お世辞なしで本当に似合っていました!橋本愛さんもロリータファッションがすごくお似合いで美しかったですが “自分のお姉さん”という目線で見ていたので、ちょっと手が届かない別世界の人みたいな印象でした。蒔田さんは彼女役だったので、ずっとかわいらしくてお人形さんみたいな感じでした。その2人に挟まれている雪夫が羨ましかったです(笑)。間近でロリータファッションを目にする機会がなかったので、思った以上に世界観に惹き込まれて、雪夫を演じる上でとても助けられました。

――由茉にはやりたいことがたくさんあり、2人は残された時間で“奇跡的な日々”を過ごしていきます。もしお2人が何の制限もなく、今やりたいことが何でもできるとしたら何をしますか?

蒔田 好きな人たちを全員引き連れて海外旅行ですかね。あんまり海外に行く機会がないので、フランスに行きたいです!

窪塚 おしゃんですね〜(笑)!

蒔田 おしゃん(笑)。

窪塚 僕、オーロラを見に行きたいです!

蒔田 あ、わかる!人生で1回は見たい!

窪塚 オーロラって本当に実在していることはわかるのですが、あの美しさは本当なのか信じきれていないので、生で見てみたいです。

窪塚愛流が涙を我慢した理由

映画『ハピネス』窪塚愛流、蒔田彩珠

注目してほしいワンカット長回しシーン

――撮影通して一番心を揺さぶられたシーンを教えてください。

蒔田 お風呂のシーンですね。ワンカットの長回しで由茉が自分の気持ちを語るシーンがあったんですが、そこは雰囲気も、灯りやカメラワークも全部完璧でした。あのシーンはすごく素敵なシーンだったなって思います。

窪塚 僕もそのシーンですごく印象に残っていることがあって。由茉が打ち明けてくれたことについて、雪夫としては我慢しきれなくて涙がこぼれそうになりそうになりました。(涙は)ト書きにはなかったので、監督に「どうしても涙が出そうなんです」って相談しに行きました。そしたら「それをぐっとこらえるのが雪夫の優しさだ」っておっしゃってくださって……。「あぁ、そうだな」と思って、終始我慢をしながら演技したことを覚えています。

――娘の幸せを願う由茉の両親に、山崎まさよしさんと吉田羊さんという実力派俳優が脇を固められています。

蒔田 私は、愛流くんとの2人のシーンが多かったのですが、完成した作品を観たときに皆さんのお芝居を観て、それぞれの由茉に対する気持ちや想いが伝わってきました。みんなに愛されるこの役を演じられて本当によかったなと、改めて思いましたね。

窪塚 僕は吉田羊さんと山崎まさよしさんと共演するシーンが多かったのですが、言葉ではなくて触れられたときのぬくもりだけで、言葉ではない想いが伝わってきて泣きそうになったことが衝撃的でした。“親にしか出せないぬくもり”っていうものがスっと心に入ってきたときに「芝居じゃない」って思ったんです。それぞれに備わったというか、もともとあった想いなのか、とにかく芝居とはまた違う何かを受けてすごく驚きました。

いろんな立場からみつめる“ハピネス”

映画『ハピネス』窪塚愛流、蒔田彩珠

余命宣告を受けた女子高生、その恋人、そして両親……

――感涙必至のストーリーです。作品の見どころをお願いします。

窪塚  『ハピネス』という題名は、一見ストーリーとは矛盾しているので「恋人を失うのに、なぜ“ハピネス”なんだろう……」ってずっと考えていたのですが、自分なりの解釈ができるようになりました。その解釈というのは、撮影中はこう、撮影が終わった後はこう……と、僕には何段階かありました。でもそれは多分、映画自体がすぐに答えを渡さなかったように、映画が(“ハピネス”とは何か)考えさせてくれる作品なのだと思います。 

蒔田 人によって、視点や感じ方が違ってくる作品だと思います。私は由茉を演じたので「もし自分が同じ状況になったら、自分の大切な人や両親はどういうふうに思うんだろう」という目線で観ていましたが、たとえば私の母だったらやっぱり親心で観ると思うんです。ぜひいろんな方にいろんな視点で観ていただけたらと思います。そして、作品の題材自体がどうしても切ないものではあるんですが、観終わったときには心温まるような作品になっているので、楽しみにしていただけたらと思います。

窪塚 僕も本当に観る人それぞれの解釈があっていいなと思っています。そして、それはどれも正解だと思います。老若男女問わずいろんな方々の視点で、それぞれの“ハピネス”、幸せの形っていうのがあると思うし、これをきっかけにまた新しい自分の優しさっていうものを知れると思うので、ぜひ劇場で観ていただきたいです!そして、僕と蒔田さんが演じた雪夫と由茉や、由茉の両親が、もし自分の立場だったと考えたときにどう受け止めるか、いろんな目線に立ってみてもらえるとすごく嬉しいです。

(了)

Profile/窪塚愛流(くぼづか・あいる)
2003年10月3日生まれ、神奈川県横須賀市出身。2018年に映画「泣き虫しょったんの奇跡」でスクリーンデビュー。2021年から本格的に俳優活動を開始。映画「麻希のいる世界」、「少女は卒業しない」、ドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」などに出演。
Instagram:@airu_kubozuka

Profile/蒔田彩珠(まきた・あじゅ
2002年8月7日生まれ。映画『海よりもまだ深く』や、映画『三度目の殺人』、映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』、映画『万引き家族』、NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』、Netflix「忍びの家 House of Ninjas」などに出演。
Instagram:@makita_aju

映画『ハピネス』作品情報

【窪塚愛流&蒔田彩珠インタビュー】W主演映画『ハピネス』は恋人を失うのに、なぜ“ハピネス”なのか

ストーリー:好きなお洋服を着て、好きなものを食べて、大好きな人と一緒にいたい。
出会いは、高校の美術室。好きな作家の画集を見て、好きな本の話をする…。そんな雪夫と由茉の平凡な日々は、「私ね、あと1週間で死んじゃうの」という由茉の突然の告白によって一変する。その言葉に雪夫の心は乱れ、気持ちが追いつかずにいたが、彼女はすでに自分の運命を受け止め、残りの人生を精いっぱい生きると決めているようだった。そんな思いを受け止めた雪夫は、彼女との残り少ない日々に寄り添う決意をする。由茉にはやりたいことがたくさんあった。今まで人目を気にしてできなかったファッションに挑戦することや、日本一のカレーを食べに行くこと。そして何よりも残り少ない日々をふたりで一緒に過ごし、最期の瞬間までお互いのぬくもりを感じ合うこと。そんな“奇跡的な日々”を過ごした2人は、間違いなく“ハピネス”だった──。

出演:窪塚愛流  蒔田彩珠
             橋本 愛  山崎まさよし  吉田 羊
原作:嶽本野ばら「ハピネス」(小学館文庫刊)
監督:篠原哲雄 脚本:川﨑いづみ
制作プロダクション:光和インターナショナル
配給:バンダイナムコフィルムワークス
公式サイト:happiness-movie.jp
5月17 日 金 より全国公開!

【窪塚愛流】
スタイリスト=上野健太郎
ヘアメイク=小嶋 克佳(TRON)
【蒔田彩珠】
スタイリスト=小蔵昌子
ヘアメイク=山口恵理子

写真=斎藤大嗣
インタビュー・文=石野志帆