村上頌樹、岩崎優、近本光司、大山悠輔らが候補?

阪神が2位・広島との直接対決をスイープし、8連勝でマジック5とした。いよいよ2005年以来18年ぶりの「アレ」、いや、もうハッキリ言っても大丈夫だろう。優勝へ秒読み態勢に入った。

厚みのある先発投手陣に、盤石のリリーフ陣、一発はなくても四球や盗塁も絡めてリーグ最多得点を奪っている野手陣。それを束ねる岡田彰布監督の下、チーム全員で白星を積み上げてきた。

ただ、このまま優勝を決めた場合、難問が発生する。ほとんどのシーズンで優勝チームから選ばれているMVPの選出が難航しそうなのだ。

チーム一丸となって勝ってきた分、飛び抜けた成績を残している選手がいない今季の阪神。投手陣では10勝を挙げ、リーグ1位の防御率1.76をマークしている村上頌樹か、クローザーとしてリーグトップの31セーブを挙げている岩崎優らが候補だろう。

野手ではリードオフマンとしてリーグトップの24盗塁をマークしている近本光司、あるいは全試合で4番を張っている大山悠輔の名前が挙がるかも知れない。いずれにしても投票権を持つプロ野球担当記者の意見は分かれそうだ。

MVPは優勝チームから選ぶと規定されているわけではないため、飛び抜けた成績を残した選手がいれば優勝チーム以外から選ばれることもある。1リーグ時代も含めて該当者は下表の通り。順に見ていこう。

優勝チーム以外から選ばれたMVP

藤村富美男、野村克也、王貞治らそうそうたる面々

1リーグ時代の1937年秋シーズン、MVPはイーグルスのバッキー・ハリスだった。チームは3位だったが、全球団を通じて最多の62安打、17二塁打を放ち、打率.310をマーク。捕手としてリード面でも貢献し、MVPに選ばれた。

翌1938年春は東京セネタースの監督兼任だった苅田久徳が打率.299、5本塁打、15打点をマーク。チームは5位でタイトルも獲っていないもののMVPに選出された。

1949年には初代「ミスタータイガース」と呼ばれた藤村富美男が187安打、46本塁打、142打点と3部門で新記録を樹立。首位打者は小鶴誠(大映)に譲ったが、本塁打、打点の二冠王に輝き、チームは6位ながらMVPに輝いた。

2リーグ分立後は、1963年に2位だった南海・野村克也がプロ野球記録を更新する52本塁打を放ちMVP。翌1964年には巨人・王貞治が前年の野村の記録を更新する55本塁打を放ち、3位ながらMVPに選ばれた。

王はチームがV9でストップして2位に終わった1974年も打率.332、49本塁打、107打点で2年連続三冠王に輝き、自身7度目のMVPに輝いた。

三冠王の落合博満、「不惑の大砲」門田博光、「トルネード」野茂英雄

1980年は日本ハムのドラフト1位左腕・木田勇が22勝8敗4S、防御率2.28をマークし、最多勝、最優秀防御率、最高勝率のタイトルを独占。チームは3位ながら史上初めてルーキーで新人王とMVPに選ばれた。

ロッテ時代に3度の三冠王に輝いた落合博満は1982年、打率.325、32本塁打、99打点でチームは5位ながらMVP。1985年には打率.367、52本塁打、146打点でチームは2位ながらMVPを受賞した。1986年も三冠王だったが、MVPは優勝した西武の石毛宏典だった。

1988年には「不惑の大砲」と呼ばれた南海・門田博光が44本塁打、125打点で二冠王に輝き、チームは5位ながらMVP。1990年の近鉄・野茂英雄は「トルネード旋風」を巻き起こして18勝を挙げるなどタイトルを総なめし、チームは3位ながらMVPに輝いた。新人王・沢村賞・MVPのトリプル受賞は史上初だった。

イチローに岩隈久志、バレンティンも

1994年、高卒3年目のオリックス・イチローは当時プロ野球史上最多の210安打を放ち、打率.385をマーク。チームは2位だったが、史上最年少のMVPに輝いた。

2008年には楽天・岩隈久志が21勝を挙げ、チームは5位ながらMVP。2013年にはヤクルトのウラディミール・バレンティンが現在もNPB記録の60本塁打を放ち、最下位球団から初のMVPに選ばれた。

2014年にはオリックスの右腕・金子千尋が16勝、防御率1.98でタイトルを獲得。チームは優勝を争いながら惜しくも2位に終わったが、沢村賞とMVPに選出された。

今季のセ・リーグで阪神以外から選ばれる可能性があるとすれば、巨人・岡本和真かDeNA牧秀悟あたりだろうか。そういう意味では、たとえ優勝が決まってもシーズン最後まで重要な試合が続くと言えそうだ。

※成績は9月10日終了時点

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