引き締まったハイレベルなシリーズを期待
阪神とオリックスの対戦となった2023年のプロ野球日本シリーズ。お互いの本拠地は直通電車なら約15分の距離で、「阪神なんば線シリーズ」とも呼ばれる59年ぶりの関西対決となった。
開幕前の盛り上がりは関西とそれ以外の地域で温度差がありそうだが、実際に始まると双方のファンでなくても、野球好きなら惹き込まれるような熱戦になるのではないか。両リーグをぶっちぎりで制した両軍はそれほど実力が拮抗しており、ハイレベルな戦いが期待できる。
両チームとも投手力が抜群なため、お互いに大量得点は望めそうにない。野手陣がどこまで相手投手のスキを突けるかが勝敗の分かれ目となるかも知れない。今季のチーム打撃成績を比較したのが下の表だ。
カギを握る近本光司と中野拓夢の1、2番コンビ
チーム打率はパ・リーグ1位のオリックスが.250で、セ・リーグ3位の.247だった阪神を上回っているが、大きな差ではない。目立つのは本塁打数だ。
オリックスはリーグ1位の109本記録しているのに対し、阪神はリーグ5位の84本。阪神は佐藤輝明が24本塁打、大山悠輔が19本塁打、森下翔太が10本塁打と2桁本塁打を放った打者が3人しかいないが、オリックスは森友哉(18本)、頓宮裕真(16本)、杉本裕太郎(16本)、中川圭太(12本)、ゴンザレス(12本)と5人いる。
ほかにもセデーニョ(9本)、紅林弘太郎(8本)らパワーも兼ね備える打者が揃っており、クリーンアップ以外は小粒な阪神より破壊力では勝っていると言えるだろう。ただ、クライマックスシリーズで杉本と紅林が故障しており、回復状況が気掛かりだ。
逆に阪神が圧倒しているのが四球数。12球団トップの494四球を選んだのは、岡田監督が開幕前に四球の査定ポイントを上げるよう球団に掛け合った効果もあった。大山悠輔が最高出塁率のタイトルを獲得できたのもリーグ最多の99四球を選んだことが大きい。
当然、日本シリーズでも阪神打線はボール球をしっかり見極めようとするはず。オリックス投手陣がその裏をついてストライクを先行させるのか、バッテリーの攻め方はひとつのポイントになる。
また、犠打数も阪神が106で、83犠打のオリックスを上回る。盗塁も79の阪神が52のオリックスを上回っており、一発長打が少ない分、小技と足を絡めて得点につなげてきたことが証明されている。
28盗塁でセ・リーグ盗塁王に輝いた近本光司と20盗塁の中野拓夢の1、2番コンビがどこまでかき回せるか。オリックスのバッテリーはクリーンアップ以上に近本と中野を塁に出さないことが重要かも知れない。
岡田監督はDHに誰を何番で起用するか
個人成績も見ていこう。主な阪神野手陣の今季成績は下の通りとなっている。
岡田彰布監督はシーズンを通してオーダーを固定。日本シリーズでも大きく動かすことはないだろう。
143試合に4番としてフル出場した大山悠輔、左打者では史上初の新人から3年連続20本塁打をマークした佐藤輝明がどこまで期待に応えられるか。オリックスの強力投手陣を打ち崩すのは簡単ではない。
先述の通り、近本・中野の1、2番コンビや8番で渋い働きをしてきた木浪聖也らが揺さぶりをかけながら相手のミスを誘うなど、試合巧者らしく少ない得点を守り抜く野球が求められる。
もうひとつポイントになりそうなのがDHだ。オリックスのホームで戦う1、2、6、7戦で採用されるが、誰を何番で起用するのか。ミエセス、原口文仁、小野寺暖あたりが候補になるだろうが、岡田監督の腕の見せ所と言えそうだ。
中嶋聡監督の用兵の妙が問われるオリックス打線
続いてオリックスも見ていこう。主なオリックス野手陣の今季成績は下の通りとなっている。
吉田正尚がレッドソックスに移籍し、その穴が心配されたが、西武からFAで加入した森友哉が18本塁打、64打点をマーク。さらに頓宮裕真が打率.307で首位打者に輝くなど、大きなマイナスは感じさせなかった。
ただ、頓宮は9月から左第4中足骨疲労骨折で離脱し、CSファイナルステージで復帰したものの代打での起用だった。さらに杉本と紅林もケガで万全ではないとなると得点力の低下が懸念される。阪神のように走れる選手が多いわけでもないため不安は尽きない。
シーズン中から中嶋聡監督は日替わりオーダーで臨んできたが、日本シリーズでも用兵の妙を問われそうだ。阪神はリリーフ陣が分厚いため、先制点を奪えるかがカギになるだろう。
38年ぶりの阪神か、2年連続のオリックスか。日本一を懸けた熱い戦いは28日から始まる。
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