3つのファクターから推奨馬を見つけ出す

今回は5月18日(土)に京都競馬場で行われる平安Sについて下記3つのファクターを組み合わせる、コンプレックスアナライズで分析を行っていく。

・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走の敗因」
・適性と素質を知るための「血統評価」

特別登録のあった18頭を検討対象とし(除外対象のヴィジョンオブラヴ、マリオロードを含む)。中京開催時も含めた過去10年のデータを使用する。

重要データ:4、5歳馬に注目

年齢別成績,ⒸSPAIA


<年齢別成績(過去10年)>
4歳【4-3-1-28】勝率11.1%/連対率19.4%/複勝率22.2%/単回率273%/複回率123%
5歳【6-2-5-37】勝率12%/連対率16%/複勝率26%/単回率46%/複回率88%
6歳【0-3-1-33】勝率0%/連対率8.1%/複勝率10.8%/単回率0%/複回率24%
7歳【0-2-2-17】勝率0%/連対率9.5%/複勝率19%/単回率0%/複回率49%
8歳【0-0-1-9】勝率0%/連対率0%/複勝率10%/単回率0%/複回率229%
※9歳以上は【0-0-0-3】

中距離以上のダートレースはタフでスタミナを要求されるため、ベテラン馬が活躍しやすい。しかし、平安Sではスピードが要求される展開になりやすい傾向から若い馬の成績が非常に良い。

年齢別成績を見ると4、5歳馬が活躍しているのに対して、6歳以上となると連対率、複勝率が一気に下がり、優勝馬は一頭も出ていない。今回人気を集めそうなスレイマンは6歳、ハギノアレグリアスは7歳で過去10年勝ち馬が出ていない年齢だ。

【4、5歳の出走予定馬】
・オーロイプラータ
・カフジオクタゴン
・サンデーファンデー
・ゼットリアン
・バハルダール
・ハピ
・マリオロード(除外対象)
・ミトノオー
・メイプルリッジ


前走の敗因:マーチSのミトノオー

ミトノオーは前走マーチSで2着。前後半3Fが36.8秒-37.7秒、前半5F通過が60.9秒とペースとしてはやや速めで、そのペースを逃げ粘って2着に入った。休み明けということもあり馬体重は+16キロと、成長分もあったがやや余裕残しの馬体で、今回は状態面での上積みが期待できる。

内容を振り返るとラップ構成こそややハイペースだったが、機動力を求められる中山コースということもあり後方勢は仕掛けが遅れており、そう考えれば着順通りの実力と考えて良いだろう。勝ち馬のヴァルツァーシャルには力負け、3着ペイシャエスにはしっかり実力勝ちしたと言える。

重賞2着は立派だが、ミッキーヌチバナ、スレイマン、ハギノアレグリアスが1〜3着だったアンタレスSに比べるとメンバーレベルは低かった印象。その点、メンバーが強くなる今回でどうかだろう。


血統解説:スレイマン、ハギノアレグリアス、ミッキーヌチバナ

・スレイマン
日本での牝祖は母ドナブリーニ。ドナブリーニは競走馬としてチェヴァリーパークS(GⅠ・芝6F)を勝利している。繁殖としてはさらに優秀で、本馬の半姉には重賞2勝のドナウブルー(父ディープインパクト)、三冠牝馬のジェンティルドンナ(父ディープインパクト)が出ている。

Lyphardの影響が強く粘り強さがあるのがこのファミリーの特徴。父にキングカメハメハを迎えた本馬はドナブリーニのスピードとLyphardの粘り強さを上手く引き出していて、半姉たちとは舞台は違えどOPクラスで活躍している。

2走前は展開に恵まれたとはいえOPクラスで0.7秒差の圧勝、前走はあまり適性がない阪神コースで2着と実力は十分。機動力と粘り強さが本馬の武器で、ベストは小倉コースだがロングスパートになりやすい京都コースも適性がないわけではない。少なくとも阪神よりは条件面で上積みがあるだろう。そう考えるとハギノアレグリアスに負ける姿は想像しづらく、年齢の割引データには該当するものの、しっかりと好走はしてきそうだ。

スレイマンの血統表,ⒸSPAIA


・ハギノアレグリアス
日本での牝祖は3代母タニノシーバード。叔父にはダービー馬タニノギムレットがいる血統。スタミナ豊富なファミリーだが、本馬は父がキズナ、母父がジェネラスでパワータイプに出ていて長距離よりは中距離が良いタイプ。1800〜2000mがベストで、2走前の2400mは距離が長すぎた。

阪神のダートコースは前走以前まで【3-2-0-0】とオール連対していた舞台。みやこS2着、シリウスS勝ちと重賞でも結果を出していて適性は抜群だった。その阪神コースで大きな不利もなく3着に敗れてしまったことから年齢的にピークは過ぎた感がある。京都替わりは決して歓迎ではなく、人気を集めるようなら軽視したい。

ハギノアレグリアスの血統表,ⒸSPAIA


・ミッキーヌチバナ
日本での牝祖は3代母ニキーヤ。祖母の全兄がゴールドアリュール、叔父にマーチS勝ちのソロル、近親にはGⅠ馬ペルシアンナイトや根岸S勝ちのゴールスキーがいるという良血馬。牝系の活力は今回のメンバーでも随一のものがある。

元々ダート色の強いファミリーで姉にはJRAダート3勝のギャラクシーソウル(父クロフネ)、妹にはJRAダート2勝のアコークロー(父フェノーメノ)がいる。母がキングカメハメハとサンデーサイレンスを持つのでつけられる種牡馬が限られるが、それでもしっかりと活躍馬を出しているのはニキーヤ牝系だからだろう。

本馬は父がダノンレジェンド。スタミナは豊富でパワーもある。晩成タイプで出世は遅れたが3勝クラス勝ちの舞台でもある京都は適性面でも合っていて、前走同様流れに乗って徐々にポジションを上げる競馬ができれば面白い存在だ。


ミッキーヌチバナの血統表,ⒸSPAIA


Cアナライズではミトノオー、ミッキーヌチバナを推奨

今回はデータからはミトノオー、前走内容と血統からはミッキーヌチバナを推奨する。データでは4、5歳からしか勝ち馬が出ておらず、該当馬で最も勝利に近いのはミトノオーだろう。早期からダート路線で活躍して将来的にはGⅠを勝てるだけのパフォーマンスを見せていた。しかし、前走のマーチSはそこまでメンバーレベルの高くなかった一戦。好走こそしたが、大きな不利もなく勝ち切れなかった点は伸び悩みを感じる。

そこで好走データには該当しないがもう一頭推奨したい。それが6歳馬のミッキーヌチバナだ。晩成タイプで出世は遅れたが、前走のアンタレスSでは実力馬のハギノアレグリアスやスレイマンに完勝した。フロック視されてこの2頭より人気がないようであれば必ず押さえておきたい。

【ライタープロフィール】
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか「競馬王」など商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。

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