女優の凰稀かなめが、NHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜後8:00)に女流歌人の赤染衛門役で出演。凜とした知的なたたずまいで存在感を放っている。そんな凰稀に、作品の舞台裏を聞いた。

 「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛〜僕を忘れる君と」などを生んだ“ラブストーリーの名手”大石静氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ63作目。千年の時を超えるベストセラー「源氏物語」を紡いだ女流作家・紫式部の波乱の生涯を描く。大石氏は2006年「功名が辻」以来2回目の大河脚本。吉高は08年「篤姫」以来2回目の大河出演、初主演となる。

 凰稀は元宝塚歌劇団宙組トップスター。大河ドラマ初出演に「めちゃくちゃうれしかったです」と顔をほころばせた。宝塚時代に大石氏が手掛けた公演「美しき生涯―石田三成 永遠の愛と義―」に出演。「大石先生の作品はすごく品があるし、人間模様を面白く描いてくださる。いつか大石先生の作品でNHKの大河ドラマに出られたらいいなとずっと思っていました」と、ひとしおの喜びを語った。

 演じるのは、源倫子(黒木華)のサロンで姫たちに学問を指南する才色兼備な女性。いかに知的に見せるかを意識した。「声のトーンを少し落としてゆったりとしゃべることを意識しました。それからお菓子には手を付けないように。みんなが足を崩している中、ずっと正座することも心掛けました」。所作を体に染みこませるため、自宅でもすり足で移動。徹底した役作りが気品あるキャラクターを生んでいる。

 一方で、姫たちと“恋バナ”を楽しむ、かわいらしい一面もある。「遊びをたしなむように楽しく学びの場を設けられたら。先生という立場ではあるけど、自分も楽しむことを大切にしたかった」と語った。

 第8話「招かれざる者」(2月25日放送)では、打毬をする直秀(毎熊克哉)に心奪われた様子で、「人妻であろうとも、心の中は己だけのものにございます」という名言が飛び出した。凰稀は「気持ちの自由さや考えの自由さがあったと思う。思い通りにいかないことが多い中で、心を自由にしているからこそ、いろいろな苦難を乗り越えていけるのではないかという気持ちで言わせていただきました」と語った。続けて「私自身、自由って何だろうと思う。それを衛門先生から学んでいる感じです」と告白。強く賢く生きる赤染衛門は凰稀にとっても“先生”となっている。

 今後、赤染衛門はまひろと共に倫子の娘・彰子に仕える。まひろについて「良きライバルだと思っています。人とは違う感性に多少なりとも嫉妬があるのではないかな」と吐露。「宮中で仕事をしている人たちは同志。私も苦楽を共にしてきた仲間たちへの意識はすごく大きいので共感できる部分は多いです」と、宮中を宝塚に重ねて答えた。

 赤染衛門は女房として働く“キャリアウーマン”である一方で、良妻賢母だったとも伝えられており、「肝っ玉母ちゃん的な肝っ玉が据わっている人だと思うので、少しずつ人間味を出せていけたら」と笑みを浮かべ意気込んだ。 

 「千年も前だけど、現代も昔もあんまり変わっていない。時代と共に変化もあるけれど、やっぱり女性は何に対しても強いなと思う。昔の人もできていたんだからできるよねって逆に力をもらっています」。千年の時を超えて、赤染衛門の生き方に勇気をもらいながら撮影に励んでいる。