◇セ・リーグ 阪神4−2巨人(2024年5月5日 東京D)

 阪神・近本光司外野手(29)が5日の巨人戦で殊勲の決勝弾を放ち、プロ野球最長に並ぶ「こどもの日8連勝」へ導いた。3回1死二塁からの右越え4号で先制点をたたき出し、中堅守備でも4回の窮地で好捕。同一カード3連敗を阻止した。「5月5日」はコロナ禍で開催がなかった20年を除き、入団から5年連続安打で通算21打数9安打の打率・429。身長1メートル71の小柄な体で子供たちに夢を与える大活躍を届けた。

 背番号5の近本は5月5日に特に打つ。3回1死二塁。3月31日の開幕第3戦では6回1安打無得点に抑えられ、防御率0・95でセ・リーグを席巻中だった下手投げ高橋礼の高めに浮いた変化球を右翼席へ放り込んだ。

 「とにかく先制点がほしかった。しっかり還す気持ちでいた」

 前夜までの2連勝で1ゲーム差に迫ってきた巨人を再び突き放す殊勲の一撃。捕手・小林の「高めに構えることが多い」という傾向を頭に入れていたことが、追い込まれてからの強打につながった。

 「高めの真っすぐをしっかり打とうと思っていた。それがスライダーだったので、打球が上がった感じ」

 初回の左前打と合わせて2安打で、コロナ禍で開幕が6月に遅れた20年を除いて「こどもの日」は入団から5年連続安打。通算21打数9安打(打率・429)、1本塁打の好相性には自覚があった。「自分の中でも、こどもの日にけっこうヒーローになっていると思っているので…」。4回2死三塁では正面に飛んできた坂本のライナーを飛び込んで失点を防ぎ、攻守にわたる活躍。21年の1分けを挟み15年から始まった「こどもの日の連勝」はプロ野球最長タイの8まで伸びた。

 スポーツ教室などで離島の子供を支援する一般社団法人「LINK UP」を4月に立ち上げた。野球少年少女のために一肌脱ぐ思いを常に持ち合わせるからこそ、近年SNSなどで氾濫する野球技術を、子供たちや周辺の大人がうのみにしないよう警鐘を鳴らす。

 「プロの選手、メジャーの選手と同じようにやろうとしても、本当に凄く難しい。その人の体に合った動きが凄く大事だから」

 本格的に体の使い方を学び始めたのは「社会人から」という。旺盛な探究心で知識の引き出しはアメーバ状に広がった。

 「(トップの位置で)ヘッドが入りすぎたらダメと言われるけど、力が入る角度は人それぞれだし、右利きと左利きでも違う。それに、子供は成長期に入ると、力を入れやすい関節の角度も、しょっちゅう変わるみたいなんですよ」

 ヘッドが深く入る独特のスイングは、1メートル71のサイズでもパワーを生み出す術を考え抜いてたどり着いた形だ。会心の決勝弾は、全国の少年少女へ向けたエールと言っていい。(倉世古 洋平)

 ○…阪神は15年から5月5日「こどもの日」の試合で1分けを挟んで8連勝。55〜63年の西鉄(現西武)、64〜70年のロッテ(64年のダブルヘッダー2勝含む)に並ぶプロ野球記録で、同じく14年から2分けを挟んで8連勝のソフトバンクとともに3、4例目となった。

 ○…負けていれば今季初だった同一カード3連戦全敗を回避。昨季の3連戦全敗は6月23〜25日のDeNA3連戦での1度だけ。今季1、2戦の連敗は3月29〜31日、巨人との開幕3連戦(●●○)以来2度目だった。