ロシアのウクライナ侵攻から2年。現在の心境を話すダリア・ドゥブロフスカさん=北区で


 ウクライナの戦禍を逃れ、あこがれだった日本で新たな一歩を踏み出した高校生がいる。ウクライナ人のダリア・ドゥブロフスカさん(15)。キーウ出身で、昨年9月から、北区の東京成徳大学高校に留学中だ。ロシアの侵攻を受ける母国を離れて2年。「今日も普通に学校に行ける。この人生、本当にうれしい」

父はキーウ 母と妹はスペインに

 ドゥブロフスカさんは、国際交流団体「ヒッポファミリークラブ」を通じ、東京都内でホームステイをしながら高校に通う。会社員の母親(40)と小学生の妹(7)はスペインで避難生活を続ける一方、配車サービス業を営む父親(41)はキーウに残ったままだ。

 「ダリア、戦争が始まった」。2022年2月24日午前6時。いつものように学校へ行こうとベッドから起き出すと、母親から告げられた。「こんな時代に戦争が始まるわけない…」。すぐに状況をのみ込めなかった。クラスメートとのグループチャットにも「今日学校はあるの?」などと牧歌的な文言が並んだ。

 当日のうちに家族と車で西を目指した。だが、父親は戒厳令と総動員令のため国内に残留。残る3人と愛犬でルーマニア、ポーランドを経由し、たどり着いたスペインでの避難生活が始まった。「2週間ぐらいでキーウに戻れる」という期待は日に日に遠のいた。

ハイキュー!!とちゃんみなが好き

 半年後、キーウの学校がオンラインで授業を再開。その傍ら、日本語の勉強を始めた。「漢字がかっこいいと思った」から。その過程で日本のアニメや音楽にも興味を持ち、「日本に行きたい」という気持ちが募った。はじめ反対した母親も、その熱意に押されて快く送り出してくれた。

 日本語に不自由はなく、高校ではバレーボール部に所属。友人たちとはすぐに打ち解けた。好きなバレーボール漫画「ハイキュー!!」やラッパー「ちゃんみな」の話もできる。留学期限は1年だが、正規入学も検討している。将来は得意の数学を生かした仕事に就くため、日本の大学への進学も考えている。

後ろめたさも…精いっぱい生きる 

 一方、母国の家族や友人を思うと不安は募る。特に父親はいつ動員されるかわからず、「戦争は終わってほしい。終わっても元の生活には戻れないかもしれないけれど、ウクライナを元の形に戻してほしい」と訴える。

 安全な場所にいる自分に後ろめたさを感じたこともあるが、精いっぱい生きようと決めている。「家族が私を留学させてくれたので、できるだけ頑張りたい。ウクライナは戦争で大変な状況だけど、一度きりしかない自分の人生は楽しく生きたい」

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2024年2月29日