リビングのはじからはじまで、天井近くの壁に1列に飾ってある20匹以上の折り紙の猫。小学2年生だった次男が作った


「子どものあと」は、子育て中の方に、これまでの歩みを振り返っていただくコーナーです。「あと」は、子どもが残した「跡」。暮らしの中で生まれた子どもの足あとや痕跡を写真で紹介しながら、子育てで大切にしていることや、思い出深いできごと、「あの時、こうしておけば良かった」という苦い思いや、大変だった頃の自分に向けたメッセージを記録します。

今回、話を聞いたのは…

ハルカさん

46歳、イラストレーター、東京都大田区在住。子どもは、中学3年生の長男と小学4年生の次男。

外せない猫の折り紙

次男が2年生の時、折り紙に夢中になりました。その時たくさん作った猫は、今もリビングの天井近くに1列に飾ってあります。猫の表情がペンで描いてあるんですけれど、次男のこの時の絵は、この時期だけのもので、今はもう描けない。そう思うと外せなくて。

子ども2人には「自分を肯定させてあげたい」と思って、日々の声かけに気を付けています。何をやりたいのか聞いて、子どもが言ったことを「やってみよう!」と背中を押しています。折り紙もそのひとつです。

「次男のこの絵は、この時期だけのもの。もう描けない」とハルカさん


不安にならないように「大好きだよ」と声をかけたり、ギューッと抱きしめたり。小学4年生の下の子は自分からギューッとして、「一緒に寝よう」と言ってくれます。中学3年生の上の子は反抗期なのでツンとした反応で、振り払うようなしぐさをすることもあるけれど、表情は緩んでいます。

電車で泣かせないために

とにかくよく泣く子だった長男は、電車で移動するのも一苦労でした。口の中に何か入っていれば泣かないけれど、小さい頃はお菓子をずっとあげ続けるのも抵抗があって。電車に乗る時は、いつも小さいチーズを携帯して細かく細かくちぎってあげていました。それこそ100かけらくらいに。チーズは私にとってお守りみたいなものでした。

今思うと、小さい子が泣くことをそんなに気にしなくてもよかったのかな。でも、当時は子どもの泣き声をかわいいと思わないであろう人の目が気になったし、実際に「うるさいな」と声や態度に出す人もいました。

パニックになったあの夜

5歳差で下の子が生まれてから2〜3年は、つらかった記憶しかありません。夫が休日もほとんど取れないほどの激務だったため、ほぼワンオペで育ててきました。

都内の釣り堀で、釣りに挑戦する当時小学6年生の長男(左)と小学1年生の次男=2021年8月


2人目が生まれたばかりの時に、上の子がぜんそくになってしまいました。片腕で泣く赤ちゃんを抱っこして、もう片方の腕で苦しそうに呼吸する上の子を抱えて。病院に長男を連れていきたいのに、夜になっても夫が帰ってこないから次男を置いていけない。長男が息苦しそうで、死んでしまうんじゃないかと不安でたまらなかった。タクシーを呼ばなきゃ、病院に連れていかなきゃと思うのに、その時は絶望的な状況にパニックになって朝まで動けなかった。

その上、まだ生後2カ月にもならなかった下の子もRSウイルスに感染して入院する羽目になり…。搾乳した母乳を冷凍して、上の子が幼稚園に行っている間に、自転車を走らせて10日間病院に届けました。

一生懸命やったことほど

でも、子どもが大きくなって、今はだいぶ変わりました。こうやって振り返ると、自分が一生懸命やったことほど鮮明な記憶として残っています。下の子が生まれる前に上の子との思い出を作ろうと、大きなおなかを抱えて東京タワーやミニSLのある世田谷公園に遊びに行ったり。妊娠中に出かけるのはしんどかったけれど、長男のうれしそうな顔を見られて、私もうれしかった。大変だったけれど、思い返すとほほえましく感じられます。

一番つらかった7〜8年前の自分や、今頑張っている人に、「もっと自分優先にしてあげてもいいんだよ」と声をかけてあげたい。「子ども、子ども、ってそんなに優先してあげなくても大丈夫だよ」って。

大きくなった2人。右が中学3年生の長男、左が小学4年生の次男=2024年4月