北海道に年間6万人のサーファーが訪れる町がある。道南エリアで南岸の海に面した厚真(あつま)町だ。人口約4,300人の町で、サーフィン目的の移住者も増えてきた。

地元の子供たちにサーフィンを体験してもらう活動も今年で8年目を迎え、学校の登校前、下校後に海へ通う子供たちの姿も見られるようになった。全日本出場やオーストラリアへのサーフィン留学を果たす子も現れ始めたが、いまだサーフタウンとしての課題は多い。


北海道南部の太平洋に面する厚真町(赤点線部分)

その解決のため、厚真町が立ち上げたのが、ふるさと納税を活用した行政主導のクラウドファンディング。集めたお金の使途は、他のクラファン同様、明確だ。ただ、寄付の方法としてふるさと納税を選択できるため、クラファンの応援者は、厚真町のサーフタウン発展に貢献した上、納税による返礼品がもらえるという一石二鳥の仕組みができ上がった。

返礼品には北海道ならではの美食がラインナップされている。他に類を見ない試みに打って出た厚真町で、日本最北のサーフシーン盛り上げなるか注目される。

雪国の子どもたちにサーフィンを

道内でも元気に自転車を漕いで海に向かう子どもたち

厚真町のクラファンは「雪国の子どもたちのサーフィン環境を整えたい」と題して始まった。目標金額は500万円だが、1月末時点で、寄付者は11人、寄付額は約15万円にとどまっている。ただ、すでに寄付をした方々の応援メッセージは熱い。

「マリンスポーツを長年してきましたが、冬の北海道でサーフィンしている子どもたちがいることを初めて知りました。海を通してたくさんのことを感じて学んでください」

「年間を通してコンスタントに波があるこのビーチを定期的に清掃活動をする団体や役場など、多くの方たちの支えがあってこそ未来あるサーフィンスポットになっていくと信じています」

「キッズが増えてから海が賑やかになって、いつも元気をもらってます。 浜厚真からたくさんのキッズサーファーが育つよう、応援しています!」

北海道サーフィンの中心「浜厚真海岸」

浜厚真海岸

厚真町のサーフポイントは「浜厚真海岸」。遠浅で、初心者や子供たちでも安心してサーフィンを始められる地形という。800台収容可能な駐車場があり、大会も頻繁に開かれる北海道サーフィンの中心地として位置付けられてきた。

2016年には、地元サーファーの有志と町が協力し、「サーフィン少年団(あつまビーチクラブ)」を発足。定期的にサーフィン体験会を開き、子供たちがサーフィンに触れる機会を増やしている。クラファンのページでは、サーフィンに打ち込む子供たちについて「毎日自然に触れ、地域を大切に思う気持ちも育んでいると思います」と紹介している。

キッズ体験会でボードの乗り方を教える様子

これからも、子供たちが安心安全に浜厚真海岸でサーフィンを続けるために、町はいくつかの課題をあぶり出した。

・キッズ用ウェットスーツ、体験用サーフボードの確保

寒冷地ゆえ、冬は4月までフル装備。真夏でも、スプリングは欠かせない。サーフィンを始めたい子供たちが寒い思いをしないために。

・キッズ体験運営費用

現在は完全ボランティアで、キッズのサーフィン体験教室を開催。せめて、インストラクターの交通費は出せるようにしたい。

真剣な表情でサーフィンを習う子供たち

・海岸の整備

浜厚真海岸には台風のたび大量の流木が漂着。歩くこともままならないビーチの流木撤去費用とシャワーの設置で、利便性を向上させたい。

ビーチに流れ着いた流木やごみ

クラファンとふるさと納税の融合プロジェクトの仕掛け人の1人は、自身もサーフィン好きが高じて厚真町に移住した、町まちづくり推進課の宮下桂課長だ。

宮下さんは「大人ばかりのサーフシーンだったが、ここ10年でキッズサーファーが増え、コンペでも活躍し始めた」と話す。これまで、町が誘致をせずとも、勝手に道内外からサーファーが集まって来ていた。一方で、町民は浜厚真海岸を素通りしてきたが、サーフィンで活躍する子供たちが増えたことで、町民にとっても海岸はなじみがある場所に変化していったという。

大会開催となれば全国からキッズサーファーが集まる

宮下さんは「なんの資本投下もせず観光として年間6万人のサーファーが来てくれる場所。これを生かし切れない課題感はあった。浜厚真を利用し、応援してくれる『来訪者の人たち』にも恩返しができて、サーファーたちが使う場所もきれいになる、ふるさと納税。これを仕組化してサーフタウンを目指したい」と話す。

返礼品にはジンギスカンやコメ、ハンバーグも

厚真町のふるさと納税の返礼品

クラファンによって厚真町のサーフタウンとしての発展に寄与できるだけでなく、“お礼”もいただけるのが今回の取り組みの特徴だ。9,000円の寄付では「人気の老舗がつくる秘伝タレの鶏ジンギスカン800g」「厚真町限定ブランド米さくら米<無洗米>5kg」が、15,000円の寄付では「厚真町産放牧豚×あか牛ハンバーグ5個セット」などが選べる。もちろん「返礼品なしで応援」も選択可能だ。

子供たちも喜ぶサーフィン体験

クラファン参加者は、本来はクローズドの浜厚真サーフィン情報を交換するLINEのオープンチャットにも招待される。北海道サーフィンの愛好者、北海道サーフィンに興味がある方、寒い北海道で海に入るキッズサーファーを応援したい方、クラファン&ふるさと納税に申し込んでみては。

ふるさと納税「雪国の子ども達のサーフィン環境を整えたい」

クラウドファンディング型「ふるさと納税ForGood」

開催ページはコチラ
https://furusato-forgood.jp/projects/9a65da14-c357-41fb-8c40-90d13d8d433f

あつまビーチクラブのメンバー

取材協力・写真提供:厚真町役場まちづくり推進課

(沢田千秋)