CTを始めとしたサーフィンコンテストで父親がコーチを務めるケースは少なくない。

その中にはコーチの才能が秀でる人物もいるが、まさにヤゴ・ドラの父、レアンドロ・ドラがその良い例だ。

息子をCT選手に育て上げ、エイドリアーノ・デ・ソウザ(BRA)をワールドチャンピオンに導き、ロボことジャック・ロビンソン(AUS)の成功をサポートしているのだ。

レアンドラ・ドラは15年以上に渡るコーチの経験を活かし、AprimoreSurfというメソッドを確立。
身体、心、魂を基本としてサーフィンにこの要素を取り入れて結果を残すのを目指している。

息子のヤゴ、エイドリアーノ、ロボの他にも、CT選手のイアン・ジャンティ(HAW)、ルアーナ・シルヴァ(BRA)、CT候補のアップカマーのコーチを務めている。
また、CTを引退したエイドリアーノはAprimoreSurfのメソッドを取り入れ、現在はレオナルド・フィオラヴァンティ(ITA)のコーチを務めている。

AprimoreSurf
https://aprimoresurf.com.br/

ビジネスマンからコーチ業へ

レアンドロ自身もハードコアなサーファーで、風貌はヤゴよりもワイルドである。
プロサーファーからCruel Maniacというサーフ/スケート/パンクロックのブランドを立ち上げ、サーフショップ経営や、音楽フェスの運営を行うなどユニークなキャリアを持っている。

コーチ業を始める前、多忙なビジネスマンだったレアンドロ。
海から離れ、子供との時間も少なくなったことに疑問を抱き、ブラジルのフロリアノポリスに移住した。
オーガニックフードを販売する小さなカフェの運営を経て、若手サーファーのコーチを行うようになり、それが好評でコーチ業への道を歩み始めたのだ。

レアンドロの生み出したメソッドは革新的。

他のスポーツを取り入れた陸でのトレーニングは時に奇妙なアプローチとも言われていたが、楽しみながら行えるトレーニングで大きな効果を生み出してきた。
バラエティ豊かで遊び心があるトレーニングがサーフィンの向上に結び付くのだ。

海でのトレーニングではサーファーを撮影して分析することを重視している。
また、コンテストのプレッシャーに対処するメンタルトレーニングも重要視しているそうだが、総括すると彼のメソッドはあくまで楽しく、健全な視点でサーフィンを向上させることに最も焦点を当てている。

初の成功はリカルド・ドス・サントス

それまで若いサーファーのコーチを専業としていたレアンドロが最初にコーチを務めたプロサーファーはブラジルのリカルド・ドス・サントスだった。

リカルドは2011年、2012年と2年連続でタヒチ・チョープーでのCTトライアルで優勝。
2012年にはケリー・スレーターとタジ・バロウを倒してQFまで進み、「Andy Irons Forever Inspiration Award」を獲得。
パイプラインの映像で「Wave of the Winter」を受賞するなどブラジルを代表するビッグウェーバーだったが、2015年1月、駐車場で騒いでいるグループを注意したところ、口論となり、銃殺されてしまった。
24歳の早すぎる死は当時のサーフィン業界に大きな衝撃を与えた。

当時、コーチを務めていたレアンドロは今でも彼の魂は自分の中に存在すると話している。
また、その年にブラジリアンとして始めてワールドタイトルを獲得したエイドリアーノはスピーチで彼の話をして彼と同じタトゥーを彫ったと告白。
エイドリアーノはリカルドとレオナルドの関係を繋いだ人物でもあり、3人はとても深い絆で結ばれている。
彼らの関係は例え一人がこの世を去っても永遠に続くだろう。

ロボのCT初優勝に貢献

(CT初優勝の立役者になったレアンドロ、息子のヤゴとロボを担ぐ)
PHOTO: © WSL/Heff

レアンドロのコーチ業の中でもロボとの関係は興味深い。

かつてマーガレットリバーの神童と呼ばれたロボが最初にツアーに入った時は散々な成績だったが、彼がコーチを始めて数週間でCT初優勝を成し遂げたのだ。

レアンドロはサーフィンを見る前にロボにのし掛かっていたプレッシャーを取り除くことから始め、お互いを理解するために時間をかけて話をした。
そして、食事管理を徹底して体づくりを行ない、サーフボードのボリュームを増やした。
メンタル、フィジカルを元々あった場所に戻したロボは2021年最終戦のメキシコで始めてCTを制したのだ。

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サーファーとしてのレアンドロ

現在はコーチ業に専念しているレアンドロだが、彼自身もサーフィンフリークである。

プロサーファーだった経歴もあり、今でもサーフィンのスキルは非常に高い。
更にコーチ業で世界中のベストウェーブに乗る機会があるため、そのスキルは更に向上している。

CT選手のコーチは元々プロだった人が多く、エイドリアーノ、スネークことジェイク・パターソン、シェーン・ドリアン、ドッグことリチャード・マーシュ、トム・ウィタカー、ロス・ウィリアムスなど錚々たるメンバーが揃っている。

彼らの教え方や個性を知ることでコンテスト観戦がより面白いものになるだろう。

(空海)