15年にわたり静岡県のかじ取り役を務めた川勝平太知事が5月9日に退任します。県政史上初となる政治経験のない学者出身の知事として注目を浴び、良くも悪くも記憶に残る言葉を発して来た15年を、その“川勝語録”とともに振返ってみたいと思います。


初の学者出身 知事が新風


いよいよ5月9日は静岡県知事選の告示日です。そしてこの日に川勝知事は退任の日を迎えます。そこで川勝県政15年について“川勝節”から検証します。


川勝平太知事(2009年)

静岡県・川勝平太知事:(2009年)
(皆さん)やる気満々ですか、イエス。よしこれで行きましょう。静岡県の顔として、バッジに、日本一の富士山に恥じぬようしたいと思っています

川勝知事は2009年 初当選後の就任式でこのように意気込みを語っていました。


川勝平太知事(2009年)

そして知事に就任した川勝知事が、ことあるごとに口にしてきたのは「富士山」への思いです。

静岡県では初めての学者出身の知事となった川勝知事は、学者としての教養や知識に裏打ちされた独自のアイディアで新たな風を吹き込みました。


「富士山の日」制定 世界遺産も尽力


静岡県議会(2009年)

静岡県・川勝平太知事:(2009年)
日本一の『ふじのくに』、これを創って参りたいと

静岡を日本の理想郷『ふじのくに』にすると訴え、県内の施設や計画名などあらゆるものにも『ふじのくに』を使用し、就任の年には「富士山の日」を制定。


三保松原と富士山

そんな富士山への熱い思いが届いたのか、2013年には富士山が世界遺産に登録。
歴史や文化的背景を熟知して、三保の松原を含めた構成資産の一括登録に向けた
流れづくりをリードしました。


韮山反射炉

さらに2015年には韮山反射炉が世界遺産に登録されたほか、独自の人脈を生かして、ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピック自転車競技の誘致にも成功。大きな経済効果と観光の活性化を生み出しました。
 


静岡ホビーショー「こどもの招待日」(2019年)

静岡県・川勝平太知事:(2019年)
こういうことをしていなければ普通の授業でしょ。それは1週間もしたら忘れます。だけどきょうのこの体験は一生忘れない

また、2019年ホビーショーでは子供たちにモノづくりの魅力を感じてもらいたいと、国内最大級のプラモデルのイベント・静岡ホビーショーに「こどもの招待日」を設定しました。


「川勝流」は対立を生む場面も


川勝平太知事(2013年)

一方で根回しをせず、サプライズを演出する「川勝流」は軋轢も生み出しました。

静岡県・川勝平太知事:(2013年)
これ(学力テスト)が最低というのは先生の授業が最低だということ

2013年全国学力調査で、県内の小学生の国語が最下位だったことに知事は激怒。
県教委や文部科学省との対立が決定的になりました。


田辺静岡市長(2015年)

また2015年、静岡市長とのトップ対談の場ではこんな場面も。

川勝知事:
キミのためでもない、私のためでもない

田辺市長:
キミ キミとおっしゃいますけど、静岡市長です。聞いてください


川勝平太知事(2016年)

そして2016年の政令市サミットでは…
川勝知事:
静岡市は私は政令指定都市としては失敗事例だったと

田辺市長:
この公の席で失敗と断じた。これは断じて看過できません。静岡市政に口出しをしすぎているのではないでしょうか」

静岡市の前の市長のことを「キミ」と呼び、ことあるごとに深い確執が浮き彫りになりました。


川勝平太知事(2021年)

静岡県・川勝平太知事:(2021年)
命の水を守るために、水源である南アルプスを守らないといけないということで、私たちは立ち上がっている

リニア問題を巡っては、大井川を「命の水」と表現。重要性を繰り返し訴え、JRや国に強い姿勢で相対し続けました。


川勝平太知事(2024年4月入庁式)

静岡県・川勝平太知事:(2024年4月入庁式)
県庁はシンクタンク。毎日野菜を売ったり、牛の世話をしたり、物を作ったりということと違って、基本的に皆さんは知性の高い方たちです

時に独自の力強い言葉で県の魅力を発信し、時に舌禍を招き、自らの言葉で辞職に追い込まれた川勝知事。5月9日 知事としての務めを終えます。


川勝語録について

川勝知事15年の川勝語録と功績を整理してみましょう。

「ふじのくに」「日本の理想郷」「富国有徳の国」「世界クラス」など独自の発信力で静岡県を国内外にPRしてきました。

一方で、「点数が最低なのは先生の授業が最低」「政令市失敗」「コシヒカリ発言」など、舌禍につながったケースも多々ありました。


菊地さんと大山さん

弁護士・菊地幸夫さん:
いろいろな評価の仕方があると思いますが、極端に言えばやることをやっていれば多少口は悪くても良いと思います。そういう意味では少なからず功績があったのではと思いますので、冷静に評価してあげても良い気がします

バレーボール元日本代表・大山加奈さん:
スポーツに身を置く者としては、ラグビーワールドカップやオリンピックの自転車競技を招致するなどスポーツの振興にも力を注いだ良い方という印象があります。15年も選ばれ続けたのだからそれだけ魅力があったのでは。それだけに強い発信力が最後は悪い方に働いてしまって残念ですね

良くも悪くも様々な記憶に残る言葉を残した川勝知事。5月9日に退任の日を迎えます。