お笑い芸人 笑い飯・哲夫さんは、6歳の女の子、4歳の男の子、6カ月の男の子のパパです。そして哲夫さんは、学習塾の経営者でもあります。塾を開設したのはもう10年以上も前のことだとか。学習塾開設の理由や、哲夫さんが考える子どもたちに必要な教育について聞きました。
全2回インタビューの2回目です。

東京では塾代が月5〜6万円もかかると聞いて、リーズナブルな学習塾を開設


哲夫さんが経営する学習塾「寺子屋こやや」は、リーズナブルな月謝で学べることが特徴です。そこには哲夫さんの教育への思いがあります。

――学生時代は教師の道も考えたことがあるとか。

哲夫さん(以下敬称略) 僕は高校まで奈良の学校に通っていたのですが、いい先生たちに恵まれました。
そうした影響もあり、大学時代は教職課程の単位をとり、塾講師や家庭教師のアルバイトをしたこともあります。ずっと教育には興味を持っていました。

――リーズナブルに通える学習塾「寺子屋こやや」を開設した理由を教えてください。

哲夫 知り合いが「子どもの塾代が、毎月5〜6万円もかかって大変! 高すぎる」という話をしていたんです。なんでそんなに高いんだろう? そんなに高いと塾に通える子と通えない子が出ることになってしまう。お金に余裕がある裕福な家庭の子どもしか塾に通えなくなるんじゃないかと感じました。そしたら、学力の差がどんどん開いてしまうと思ったんです。

僕は奈良で生まれ育ちましたが、近所に月3000円で勉強を教えてくれるおばちゃんがいたんです。リーズナブルな月謝でだれでも通いやすい塾があれば、学力の差がなくなるんじゃないかと思ったんです。ちょうどそのころ、手伝ってくれる人もいて格安の補習塾を始めようと思ったんです。

――学習塾「寺子屋こやや」の月謝などを教えてください。

哲夫 現在宮原本校、東田辺校、吹田校と大阪に3つの教室がありますが、小学生の月謝は月3500円からです。
子どもたちの教育は大切です。僕は、今の子どもたちがどんどん賢い子に育っていって、どうにか地球温暖化を止めてほしいと願っています。

いじめは見て見ぬふりをせず、徹底的に無くさなければならない


教育現場でのさまざまなことが報道されることがありますが、哲夫さんは先生たちは子どもたちの指導がやりにくい部分もあるだろうな、と感じていると言います。

――教育現場の問題で気になることはありますか。

哲夫 いじめは撲滅して、徹底的になくさなくてはいけませんね。いじめの現場を目撃したら、先生だけでなく、まわりの大人も真剣に怒らなくてはいけません。見て見ぬふりはダメです。

子どもたちも、見て見ぬふりはいけません。僕は小学生のころ、クラスで 1 人の女の子があるグループにいじめられていて「かっこう悪いことすな!」と注意して、いじめが収まったことがあります。当時、僕はクラスでリーダー的な存在だったので仕返しもありませんでした。

大人になって、その女の子と再会したら「あのときはありがとう。うれしかった」と言われました。いじめを止められるヒーローみたいな子を育てていかなくてはいけません。

――そのほかに、日本の教育で気になることはありますか。

哲夫 先生たちのおかれている状況が気の毒ですよね。やりづらいだろうな〜と思います。
もちろん犯罪行為はいけませんが、今は、子どもにたちに対して慎重に対応することが必要と言われる時代で、先生が苦心していると感じます。どこからが、という線引きが難しいのはわかります。体を張った指導が難しい時代だということもわかります。

僕が子どものころは、悪さをすると先生からしかられることはよくありました。小学校のときに、生徒が悪さをすると先生がしている金属製のバンドの腕時計を手に巻いて、メリケンサックのようにしてそれでたたく先生もいたんです。でも僕は、その先生が大好きでした。そして親も、その先生を信頼していました。

僕はサッカーが好きで、よく校庭でサッカーをしていたのですが、ときにはボールがフェンスを超えて、近隣の家の庭に入ってしまうこともありました。そうしたら、そのメリケンサックの先生が、僕たちのために小さいゴールを用意してくれたんです。小学生のときは「こんな小さいゴールなんて・・・」と思っていたのですが、今、考えるとフットサル用のゴールみたいな感じです。小さいゴールを用意してくれたことで、そこでできるサッカーがすごく楽しくなったんです。

今の時代なら、腕時計を手に巻いてたたいてくる先生がいたら体罰と言われるでしょう。暴力はいけません。が、子どもは大人たちにしかられることで成長すると思っています。

――親がしかるだけではダメでしょうか。

哲夫 先生や地域の人など、親以外の大人にもしかられたほうが、子どもは反省します。親にしかられても、聞いていない子もいますよね。
他人にしかられることで、相手が嫌な思いをしたことに気づくようになります。相手に嫌な思いをさせないには、どうしたらいいか? 子どもなりに考えるようにもなると思うんです。

奈良に引っ越して4人目を考えるように。少子化は、若者の都心部流出が一因


3人の子どものパパでもある哲夫さん。できたら4人目も欲しいとか。止まらない少子化についても聞きました。

――日本の少子化対策をどのように見ていますか。

哲夫 少子化の一因には、若者が都心部に移り住んでしまうことがあると思います。都心部に住むと、晩婚化や未婚が進むでしょうし、結婚しても子どもを産むことをちゅちょする人もいるでしょう。

少子化対策としてお金を配る政策が有効なのか議論されていますが、僕は賛否あるものの、岡山県が少子化対策のために同窓会に補助金を出すっていい案だと思うんですよ。地方は出会いの場が少ないので、同窓会をきっかけに結婚を考える人もいると思います。

僕はこの春から、生まれ故郷の奈良で暮らしますが、できたら4人目がほしいと考えています。この間話したお母さんは、7人子どもがいると言っていました。都心部への若者の流出を防ぎ、地方で暮らしたいと思えるような対策も少子化には有効だと考えています。

お話/笑い飯 哲夫さん 協力・写真提供/吉本興業株式会社 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部

哲夫さんが生まれたのは昭和49年です。哲夫さんは「今の時代の子育てや教育は、子どもも親も先生もみんな追い込まれて疲れてしまう。そうならないためにも、ときには昭和のころのようなゆるい教育や子育てが必要」と言います。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年4月の情報であり、現在と異なる場合があります。

笑い飯 哲夫(わらいめし てつお)


PROFILE
1974年奈良県生まれ。関西学院大学文学部哲学科卒。2000年に西田幸治と漫才コンビ・笑い飯を結成。2010年M-1グランプリで優勝。『えてこでも分かる笑い飯・哲夫訳 般若心経』(ヨシモトブックス)など著書多数。

『がんばらない教育』


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