今年の夏、フィリピンの東で対流活動が活発になる影響で、日本では暑い夏になるでしょう。世界の異常な天候の要因になると考えられているエルニーニョ現象が発生する可能性も高くなっています。

日本 今年も梅雨の大雨に警戒 暑い夏に

夏にかけて、西太平洋熱帯域にあたるフィリピンの東で、対流活動が活発でしょう。この影響で、盛夏にかけて次第に、チベット高気圧の西日本付近への張り出しが平年より強まる見込みです。7月を中心に梅雨前線の活動が活発で、8月になっても南から雨雲の元である暖かく湿った空気が流れ込みやすいでしょう。
今年も、梅雨の大雨に警戒、注意が必要です。梅雨が長引くことはなさそうですが、梅雨が明けてからも局地的に大雨になることも考えられます。暑い夏になるでしょう。

エルニーニョ現象発生の可能性高い 通常の現象と違い熱帯の状況が複雑

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太平洋赤道域の東部の海面水温は、平年より高くなってきており、エルニーニョ現象の発生に近づいています。

エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状況が1年程度続く現象です。世界中の異常な天候の要因になり得ると考えられています。

気象庁が、今月5月12日に発表した、エルニーニョ監視速報によると、今後、夏までの間に、エルニーニョ現象が発生する可能性が80%と、高くなっています。

エルニーニョ現象が発生すると、通常は、西太平洋赤道域で海面水温が低下し、対流活動が不活発になります。このため、日本では夏(6月〜8月)、太平洋高気圧の張り出しが弱くなり、気温が低く、日照時間が少なくなる傾向があります。
ところが、前述したように、日本では、今年はエルニーニョ現象発生時の典型的な低温の夏になる兆しはありません。通常のエルニーニョ現象と大きく違う点は、西太平洋熱帯域にあたるフィリピンの東で、対流活動が不活発になることはなく、活発なことです。熱帯の状況は例年になく複雑になり、エルニーニョ現象の夏といっても、今のところは、例年以上に暑い夏になる可能性さえあります。

エルニーニョ現象発生の翌年は世界の気温が上昇 2016年は最も高かった

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エルニーニョ現象が発生した翌年は、世界の気温が上昇することが知られています。

世界の年平均気温偏差の経年変化をみると、様々な変動を繰り返しながら上昇しており、長期的には100年あたり0.74℃の割合で上昇しています。特に1990年代半ば以降、高温になる年が多くなっています。

2015年は、春以降、エルニーニョ現象が発達しました。エルニーニョ監視海域の海面水温は、月平均値の基準値との差が12月に期間中最大の+3.0℃に達しました。この値は、1949年以降に発生した16回のエルニーニョ現象発生期間中の最大値としては、3番目の記録になりました。発生期間は8季節で、1949年以降に発生したエルニーニョ現象の中で最も長くなりました。
この翌年2016年、世界の平均気温の偏差は+0.35℃で、1891年〜2022年で最も大きくなりました。

今後5年間 世界の平均気温が観測史上最も高くなる可能性

世界気象機関WMOが5月17日に発表した報告によると、今後、5年間に少なくとも1回は、2016年の世界の平均気温の記録を超える確率が98%で、2023年から2027年の5年間の世界の平均気温が、観測史上最も高くなる確率も98%とのことです。

北極の温暖化は、北半球の今後5年間の冬の間、地球規模の気温の偏りの3倍になると予測されています。
5月から9月の降水量は、今後5年間は、サヘル、ヨーロッパ北部、アラスカ、シベリア北部で増加し、アマゾンやオーストラリアの一部で減少することが示唆されています。

日本の天候にも、今後5年間は、エルニーニョ現象の何らかの影響が出てくることも考えられます。今後発表される長期予報にご注目ください。

参照:世界気象機関WMOホームページ
https://public.wmo.int/en/media/press-release/global-temperatures-set-reach-new-records-next-five-years