西武グループの西武リアルティソリューションズは18日、「所沢駅西口土地区画整理事業」地区において整備する商業施設について、名称を「エミテラス所沢」に決定したと発表しました。

 この土地区画整理事業は、所沢駅の駅前という一等地で進められているものです。もともとこの場所は、「所沢車両工場」という西武鉄道の車両基地がありました。所沢車両工場の役目は2つ。数年周期で実施する大規模な車両検査、そして「車両製造」でした。

 鉄道車両の多くは、専門の鉄道車両メーカーで製造されています。一方で、中には例外もあり、特に大規模な鉄道事業者が鉄道車両を自前で大量に製造していたのが、JR東日本の新津車両製作所(現在は総合車両製作所新津事業所)、そしてここ、西武鉄道の所沢車両工場(ただし1973年以前はグループ会社の西武建設が管轄)でした。

 大手私鉄では唯一の直営車両製造工場だった所沢車両工場では、閉鎖までに1200両以上の車両を新造。1960〜70年代に同社で活躍した車両のほとんどは所沢車両工場製でした。かつての西武の色といえば黄色でしたが、その塗装を初めてまとった101系(1969年デビュー)が生まれたのも、ここ所沢車両工場でした。現在は所沢車両工場製の西武車は数を減らしていますが、それでも9000系、2000系(一部)、新101系(一部)の3形式が、今も同工場製車両として活躍を続けています。

 その所沢車両工場も、1999年3月の9000系出場で新造業務を終了し、翌2000年6月の2000系重要部検査出場をもって、検査業務を武蔵丘車両検修場に移転。工場は役目を終えて閉鎖されました。

 工場跡地に建設されているエミテラス所沢は、ファッションや飲食品、映画館など、142店舗が出店します。これだけでは一般的なショッピングモールのようですが、西武リアルティソリューションズでは、工場の跡地という歴史を受け継ぎ、施設内に「レガシー」を設置するとしています。

 レガシーとなるのは、かつて所沢車両工場と所沢駅を結んでいた引き込み線。一部にレールを設置し、事績を伝えていくとしています。そしてもう一つ、西武鉄道が養成所で使用していた、2000系の運転用シミュレーターも展示。来場者がシミュレーターとして楽しむためのものではなく、あくまで躯体の公開のみですが、現在西武線で乗務する乗務員が養成・教育を受けたシミュレーターを設置することで、西武鉄道の安全・快適な環境を目指す取り組みを示す展示となります。

 エミテラス所沢の開業は、2024年9月を予定。西武リアルティソリューションズなどは、引き込み線とシミュレーター以外のレガシー設置も検討していると説明しています。