本作は、学校でいじめられ、居場所がなくなった高校生スヒョンが、学校に現れた幽霊たちとバスケを通じて奮闘し、勇気と自信を取り戻していく韓国発の青春感動ミュージカル。日本ではほぼ無名だった本作を7月に1日限りでプレビュー公演を上演し、それを経て、より完成された本作、見所である笑いあり感動ありのストーリー、生バンドでお届けする美しく心躍る楽曲、舞台上でのキャストの汗や熱量、実物のボールを使って行われるリアルなバスケプレーなど、注目どころ満載。

バスケットボールの音、大歓声、熱い試合を連想させる音、歌いながらキャストが登場、バスケットボールを操りながら踊る、明るく、いかにも青春!という感じの出だし。主人公のスヒョン(橋本祥平)は運動が苦手、勉強もあまり得意ではない。いじめられる、お金を巻き上げられる、「なんのために生きるんだろう」と気分はどん底。寂しげな楽曲、自分のロッカーの扉を開けるとゴミが入っていた、「クズ」と書かれた紙、「いっそ、消えてしまいたい」と歌い…自殺を試みるも…なぜか助かった。見たことのない高校生が3人。スヒョンにははっきり見えるが、警備員には見えない。

「?!」かなり焦る主人公、3人はスヒョンに言う「僕らの願いを叶えてください」「15年ぶりに人間と会話した」あまりのしつこさに根負けした形でスヒョンは了承。憑依される瞬間は、雷の音が!ここの動きはちょっと笑えるし、憑依の表現もアナログ、だが、考えられた動き。

スヒョンはとにかく鈍臭いが憑依されると、とにかく動きが別人に!バスケが得意な3人、普段のスヒョンだったら絶対にできないことも軽々と。

場面変わり、バスケットボールのコーチ・ジョンウ(平野良)と選手、この選手、超やる気なし。メガネをかけたいかにもお偉いさんが来てハッパをかける。「勝てないならバスケット部は廃部」崖っぷち、「次の大会で区民や役所が納得する結果を」と言われ困りはてるコーチ。「自分の人生すら納得いってないのに」と歌う。それにしても部員が足りない、試合どころではない。

スヒョンにバスケ得意な幽霊が憑依すると…弱気なスヒョンはいきなり「イケイケ」にキャラ変(笑)、それをみたコーチが「君、すごい!」あれよあれよという間に、チームに入ることに。面白いのはトレーニングになると3人は憑依しない、なぜから「トレーニング必要ない」から(笑)、よってトレーニングシーンではスヒョンはヘタレのまま(笑)、「僕にはできない〜」とバタッと。

さまざまなエピソード、部員たちは海に行こうと言い出し、その本音は…遊びたい(笑)、そんな時になぜか遠征費用が出て、親善試合の話も。幽霊たちの想い、現世に未練がある、無理もない、高校生のまま、幽霊になり、しかも成仏してない。幽霊のダイン(梅津瑞樹)、スンウ(糸川耀士郎)、ジフン役(吉高志音)、個性的で気のいい奴ら、といった風情。スヒョンはキャプテンに任命されてしまう。内心「どうしよう」状態、「やめる」とコーチに言うも、「バスケで一番大切なのはチーム」とコーチ。果たして、スヒョンは?幽霊たちは成仏できるのか?が大体の流れ。


キャスト陣は橋本祥平以外はメインキャラクターのほかに役を演じる。幽霊3人組はジョンウ率いるチームの選手も演じているのだが、すぐに遊びたいだの練習もろくにしないヘタレ、その豹変ぶりは劇場で!また、サンテを演じる太田将熙は、スーツ着てコーチにあれこれ言う”お偉いさん”に扮するが、ここも笑いどころ。そして何よりスヒョン演じる橋本祥平、素のスヒョンは目を三角にして困り顔だったり、疲れ切った表情をするのに対して、憑依したあとは「誰?」と言うくらい(笑)その切り替えは注目。

また、全体としては歌唱シーンが多く、ここはキャスト陣の練習の賜物、動きもプレビュー公演を経たこともあり、ビシッと決まる。ラスト近く、幽霊3人組がなぜ、成仏しなかったかが明かされるが、ここは感動。

そして、スヒョンは気付きを得る。人生観も変わっていく。「自分の人生を生きる」名言。ノンストップのおよそ2時間、青春モノにカテゴライズされる作品だが、それ以上の多くのことが詰まっている。生演奏がかっこいい。東京公演は25日まで。3月2日からは大阪で開幕。

公開ゲネプロ前に簡単な取材会が行われた。
橋本祥平「半年前に一度やって本番に向けて…あっという間に初日、月日が流れる早さを感じています。(プレビュー公演後も)稽古はしたのですが、半年前の感覚が身体に染み付いていて…すぐに通し稽古したり。準備をしながら成熟されていくような感覚があり、今は最高に仕上がっている状態」と語る。プレビュー公演が本公演に生きている状態。
梅津瑞樹は「稽古場がすごく楽しくって」と座組みのよさをアピール。
糸川耀士郎「ようやくたくさんのお客様に見ていただける」とコメント、東京だけでなく、大阪公演も用意されている。「ミュージカルもお芝居もバスケも全部好き」と好きなものしかない(笑)。
吉高志音「プレビュー公演から半年、ついに俺たちの力を見せつける時がきた!」と宣言。「稽古場が温かく楽しく、同じクラスの仲間の感覚、関係性が深まった」とコメント。
太田将熙は「プレビュー公演から本公演までの間に韓国への理解が深まって」とコメント。韓国では大ヒットのミュージカル。
平野良「半年前のプレビュー公演では『これから始まるな』と…楽曲がずっと頭を巡っていた」と語るが、楽曲がキャッチーなものが多く、しかもちょっと難易度も高い部分もあり、だが、プレビューと稽古で培った賜物で皆、歌唱力の高さを発揮。「(草月ホールは)一体感が生まれる劇場」と語る。決して広くない劇場だが、それだけ舞台との距離が近い。
日本では珍しくプレビュー公演を行ってからの本公演、よって役への掘り下げやダンス、歌など、充分な状態での披露。吉高志音は「仲間感アップ」とコメントしたが、チームワークの良さは細かいところにまで行き届いている。
プレビュー公演では韓国の公演関係者や俳優陣が観劇したそう。「韓国のチームから受け継いだ想い、作品の素敵なところを伝えて、この先につなげていける舞台にしたい。関わっていらっしゃる皆さんの愛が深い。全力で愛に応えて作品を守って届けたい」と熱い想いを語った。

あらすじ
「僕は、誰にも見えないんだ」
クラスメイトから無視され、親からも見放されていた高校生のキム・スヒョンは自ら命を絶った……はずだった。
目覚めたスヒョンの前には15年前に死んだ高校生の3人がいた。
「どうせ死ぬなら、その体を俺たちの為に使ってくれないか?俺たちの願いを叶えてくれ」
スヒョンは成仏できない幽霊のスンウ、ダイン、ジフンからの頼みを断りきれずに体を貸し、憑依される事を受け入れる。
運動音痴のスヒョンだが、バスケが得意な幽霊に体を貸したことにより、スター選手だと勘違いされ、ジョンウがコーチをする弱小バスケットボールチームに入部することになり……。
幽霊たちの願いとは……。

概要
日程・会場:
東京:2024年2月15日(木)〜2月25日(日) 草月ホール
大阪:2024年3月2日(土)〜3月3日(日) 松下IMPホール
キャスト
スヒョン役 橋本祥平、ダイン役 梅津瑞樹、スンウ役 糸川耀士郎、ジフン役 吉高志音
サンテ役 太田将熙 ・ ジョンウ役 平野良
<バンドメンバー>
キーボードコンダクター:田中葵、ギター:朝田英之、ベース:澤田将弘、ドラム:足立浩
スタッフ
作 :パク・ヘリム
作曲:ファン・イェスル
オリジナル・プロダクション:アンサン文化財団、IM Culture
演出・振付:TETSUHARU
日本語上演台本・訳詞:私オム
協賛:スポルディング・ジャパン株式会社
企画・制作:株式会社FAB
主催:株式会社FAB、サンライズプロモーション大阪

公演HP:http://littlebasketball.jp/

©︎リトルバスケットボール団 製作委員会