侍ジャパンの完全ドキュメンタリー映画「憧れを超えた侍たち 世界一への記録」の公開記念舞台挨拶が4日都内で行なわれ、第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本を14年ぶりの世界一に導いた栗山英樹前監督が登壇した。

 映画は栗山氏の監督就任から、宮崎合宿を経てWBC公式戦7試合にチーム専属カメラが密着。3大会ぶりの優勝を掴むまでの奮闘や苦悩、感動の場面が秘蔵映像としてふんだんに盛り込まれている。

 栗山氏は舞台でのトーク後、集まった報道陣に対し「本当にいろんな年齢層の方が来て頂いて、野球を応援してもらってありがたかった」とあらためてファンへ感謝を口にした。「映画を見ると思い出すところはいっぱいあるし、そこに至るまでの会話もあった。選手たちは本当によくやってくれた」と話すと、印象的な場面に準決勝メキシコ戦を挙げた。

 1点ビハインドで迎えた9回裏。先頭打者の大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)がヘルメットを投げ飛ばす激走で二塁打にし、主砲・村上宗隆(ヤクルト)の劇的なサヨナラ打で決勝進出を決めた死闘はWBC史上屈指の名勝負として刻まれた。「一番苦しく負けているときに、選手たちがどんな表情で野球をやろうとしているのか」が気になったといい、最後まで誰ひとり諦めなかった姿勢を映像で見ると、「彼らはさすがだなと思いました。選手たちの想いがこれほど大事なものだとは」と感服した。
  栗山氏は、「野球は誰もがヒーローになれる半面、誰もが負ける要因を作るスポーツ」と力説する。映画に出てくるワンシーンごとに「俺が思っている以上に、それぞれ選手たちは責任を背負っている」と熱弁。その最たる試合がセミファイナルのメキシコ戦だった。

 負けたら終わりの一発勝負に侍ジャパンは若き剛腕・佐々木朗希(ロッテ)に先発を託したが、21歳は先制3ランを打たれ、4回3失点で降板。ベンチ裏では、同投手が涙を流すシーンをカメラが捉えていた。栗山氏は「あの映像を見たときは申し訳ないけど、良かったと思った」としたうえで、その理由を次のように述べた。

「これから日本を背負う大エースになる人が悔しさとか悲しみ、苦しさを背負ったらもっと大きくなってくれると信じているので。心の底から野球の怖さ、難しさを感じてくれただけに、さらに飛躍するキッカケになってくれると信じています」

 今回の映画は、日本ハムで指揮を執っていた時代の愛弟子である大谷が決勝のアメリカ戦の試合前にチームメイトに送った「憧れるのをやめましょう」がタイトルに掛かっている。

 同選手の声かけについて、「すべての選手が勝ちたがってくれた。命がけでやってくれたのが大きく、象徴的な言葉だった」と、メジャーでも唯一無二の二刀流を貫く男の名言は確かにチームの士気をより高めたという。

 加えて、「大谷翔平がなんですごいのかは、才能や能力だけではない野球脳の部分であると思うので。普通は映像で見ることができないものなので、それはみなさん楽しんでもらいたい」と柔和な眼差しで映画の見どころを語り、会見場を去った。

取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

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