フランスのパリで開催される夏季オリンピックの開幕が、約4か月半後に迫った。地元での金メダル獲得を目標に掲げているフランス男子バスケチームは、先月から始まった2025年のユーロバスケット予選でも2戦2勝(対クロアチア 73-61、対ボスニア・ヘルツェゴビナ 74-65)と好調なスタートを切ったが、オリンピック本戦に出場するメンバーは、6〜7割がこの予選メンバーとは違う顔ぶれになる。

 現在、地元紙『レキップ』の電子版では、オリンピック本戦のメンバー12人を選ぶアンケートが開催されているのだが、現時点で読者が選んだ最強チームは以下の12人だ。(%は得票率、※は東京五輪出場メンバー)

ポイントガード
アンドリュー・アルビシー(グラン・カナリア)47.7% ※
トマ・ウーテル(ゼニト・サンクトペテルブルク)44.5% ※

シューティングガード/スモールフォワード
ニコラ・バトゥーム(ロサンゼルス・クリッパーズ)91.6% ※
エバン・フォーニエ(デトロイト・ピストンズ)83.7% ※
ビラル・クリバリー(ワシントン・ウィザーズ)71.4%
ナンド・デ・コロ(アスヴェル、元サンアントニオ・スパーズほか)70.6% ※
エリー・オコボ(モナコ、元フェニックス・サンズ)33.1%
 パワーフォワード/センター
ヴィクター・ウェンバンヤマ(スパーズ)99.1%
ルディ・ゴベア(ミネソタ・ティンバーウルブズ)98.4% ※
ガーション・ヤブセレ(レアル・マドリー、元ボストン・セルティックス)86.8% ※
ヴァンサン・ポワリエ(レアル・マドリー)74.5% ※
ムスタファ・フォール(オリンピアコス)46.9% ※

 この顔ぶれを見ると、ともに2009年のユーロバスケット(5位)で国際トーナメント初出場を果たした最古参のバトゥーム(当時20歳)、デ・コロ(同22歳)を筆頭に、今年のNBAルーキー2人(ウェンバンヤマとクリバリー)、そしてモナコで活躍中のオコボ以外は、おなじみのメンバーが選出されている。

 ポジション別に見ると、フランスが最も豊富な人材を誇るのはフロントコート陣だ。ウェンバンヤマとゴベアの2人はNBAでもトップクラスのディフェンダーであり、ケガさえなければ、彼らがパリ・オリンピックでフランス代表の主力メンバーとなることは間違いない。
  ヤブセレはヒザのケガで11〜12月に離脱していたが、現在は復帰し、ポワリエとともに欧州の最強軍団レアル・マドリーの一員としてユーロリーグ優勝を目指している。フォールも好調オリンピアコスのスターティングセンターとして奮闘。また、上位5人から漏れた中には、今季のユーロリーグのラウンドMVPに最多の3回選出されているマティアス・ルソール(パナシナイコス)も控えている。

 逆に、人材不足が顕著なのがポイントガードだ。

 NBAの殿堂入りしたトニー・パーカー(元スパーズほか)が引退した後は後継者が育っておらず、最上位につけたアルビシーとウーテルも得票数は5割以下。この数字が、絶対に外せない強力メンバーがいないことを示している。

 彼ら2人以外に候補に挙がるのはキリアン・ヘイズやテオ・マレドン(サンズ)、昨年のワールドカップでシニア代表として国際トーナメントにデビューしたシルヴァン・フランシスコ(バイエルン・ミュンヘン)らだ。
  2020年のNBAドラフトで7位と、ドラ1のウェンバンヤマが登場するまではフランス歴代最高位での指名を誇ったヘイズだが、2月にピストンズとの契約が解除され、現在はフリーエージェントとなっている。昨シーズンは平均10.3点に6.2アシストとキャリアベストを記録したが、伸び悩み感は否めない。

 かつて“超期待の新人”と言われたフランク・ニリキナも、同じく2月にシャーロット・ホーネッツから解雇された。オリンピック出場の可能性を視野に入れて、現在は欧州リーグで復帰の道を探っているという噂もある。

 アルビシーは大会時には34歳、ウーテルは35歳。ともに大会経験は豊富で、特にウーテルはクラッチプレーヤーとしてビッグマッチで活躍できる素質を備えているが、彼はロシアによるウクライナ侵攻が勃発したあと「ロシアおよびベラルーシのクラブとは契約しない」というフランスバスケットボール連盟との約束を破ってゼニトと契約したことで「代表追放」を言い渡されている。
  しかし代表のチームマネジャーであるボリス・ディーオウ(元スパーズほか)やヴァンサン・コレ代表HC(ヘッドコーチ)との話し合いでは、最終選考の時点で別クラブに所属していれば対象に入ると言われているとのこと。「減給を飲んででも」新たなクラブを探すと、先日出演したパーカーのポッドキャストでコメントしている。

 ウイング勢はバトゥーム、フォーニエ、デ・コロのベテラントリオに加わる新戦力がカギとなりそうだ。

 そこで注目したいのは、イタリアのビルトゥス・ボローニャに所属するアイザイア・コルディニエ(27歳)。ハンドボールの元フランス代表を父に持つ彼は、とにかく運動神経が抜群。自身もかつてハンドボールをプレーしていたことがあり、ボールを持った状態でのボディコントロールは傑出している。
  2016年のドラフトではアトランタ・ホークスから44位で指名。シニア代表での国際トーナメント出場はまだないが、冒頭のユーロバスケットの予選では主力として活躍している。ラトビア代表のルカ・バンキHCが率いるボローニャでも、3ポイントが打ててディフェンス力も高い万能戦士としてスターターに定着中だ。

 2年前のユーロバスケットではほぼ無名だったテリー・タルペイ(当時ル・マン、現モナコ)が大活躍したように、今年のオリンピックではコルディニエがフランス代表の“ジョーカー”となるかもしれない。

文●小川由紀子

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