ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)がNBA史上最も偉大なシューターの1人だということに異論がある者はほとんどいないだろう。しかし、NBA史上ベストポイントガード(PG)の候補に入るかというと、意見は分かれる。殿堂入り選手のアイザイア・トーマスは、カリーのベストPG否定派としての見解を述べている。

 現代のNBAを代表するスーパースターのカリーは現在36歳。NBA歴代最多となる3680本の3ポイントを成功させている天才シューターで、3ポイント全盛のトレンドを作り出した人物であり、バスケットボールそのものを変えたとも言われる。ウォリアーズを4回のリーグ優勝に導くなど、実績も十分だ。

 カリーは昨年9月「自分が歴代で最高のPGだと思うか?ああ、そうならないといけない。僕とマジック(ジョンソン/元ロサンゼルス・レイカーズ)の比較だよね?もちろん、イエスだと答えないといけないが、マジックの履歴書は本当にクレイジーなものだ。こんな会話を今していること自体、想像していなかった」と、自身が№1だとジョーク交じりに答えていた。
  そのなかで、かつて“バッドボーイズ”と呼ばれたデトロイト・ピストンズのリーダーとしてチームを牽引した殿堂入り選手のトーマスは、カリーの同僚ドレイモンド・グリーンがホストを務めるポッドキャスト番組『The Draymond Green Show』に出演。史上最高のPGの議論について問われ「まずはPGの定義をしっかりしないといけない」と指摘した。

「今はポジションレスと言われる時代だ。でも、ステフがPGなのか、それともPGでないのかと問いたい。PGについて私の考え方を話すと、ゴールデンステイト・ウォリアーズでは君(グリーン)がPGだ。君はステフよりもアシスト数が多い(カリーが平均4.9アシスト、グリーンが5.9アシスト)。君がボールを運び、“ショー”を動かすんだ。ステフはスクリーンを使い、シュートを撃つ。ステフは史上最高のシューターの1人だ。ある意味で、彼は誰もやっていなかったことをやっている」
  トーマスは「私の場合、得点とアシストでチームを牽引して、バック・トゥ・バック(リーグ2連覇/1989〜90年)を成し遂げた。マジックが得点とアシストの両面で(レイカーズの)バック・トゥ・バック(1987〜88年)に導いたとは思わない。アシストで牽引したり、得点で牽引はしていたかもしれないけどね。私は唯一その両カテゴリーをやってのけた」と、自身は1980年代当時、独自のスタイルで結果を残したと自負しつつ、カリーをPGにカテゴライズしない理由について触れている。

「ステフはレジー・ミラー(元インディアナ・ペイサーズ)やレイ・アレン(元ミルウォーキー・バックスほか)といったキャッチ&シュートの選手と競い合っている。もうひとつ上のレベルに行ったと言ってもいい。ただ、現代のPGではないだろう。アレン・アイバーソン(元フィラデルフィア・セブンティシクサーズほか)にはエリック・スノウがいた。アイバーソンはPGではなく、スノウがPGだった。スノウにPGという肩書きを与えたくなかったかもしれないけどね。
  ゴールデンステイト・ウォリアーズでは君(グリーン)がPGだ。ステフはあのサイズでほかの選手ができないことができ、自分だけのカテゴリーに属している。誰が史上最高のPGかという話をする時には、どの時代で話をするかによるだろう。(史上最高のPGの)候補はマジックとオスカー・ロバートソン(元シンシナティ・ロイヤルズ/現サクラメント・キングスほか)かな。彼らはサイズがあって、私やステフと比べて常にアドバンテージがある。マジックは得点することもできるし、ショーを仕切ることもできる。私からすると、彼が歴代ベストの存在だ。2番目がオスカー・ロバートソンだね」

 トーマスは自分が歴代3番目のPGと自負していることを覗かせつつ「アレン・アイバーソンは、ステフがやっていることをやるのに最も近い“スモールガイ”(小さな選手)だった」と、攻撃的ガードとして計4回の得点王に輝いた殿堂入り選手のアイバーソンも高く評価している様子だった。

構成●ダンクシュート編集部

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