日本の競馬ファンにとっても、春の風物詩になったドバイワールドカップ・ミーティングが今年も日本時間の30〜31日にかけて開催される。馬券の発売は今回も「JRAプール」の方式で行なわれ、インターネット投票とUMACA投票での購買が可能となる。

 メインのドバイワールドカップの4頭をはじめ、ゴールデンシャヒーン、ターフ、シーマクラシックの3レースを含めて総勢16頭の日本馬がスタンバイ。31日に阪神競馬場で開催される大阪杯(GⅠ、芝2000m)が手薄に感じるほどの精鋭が、中東での祭典でビッグタイトルに挑む。

 やはり一番の注目を集めるのはメインのドバイワールドカップ(G1、メイダン・ダート2000m)。ここには日本から、ウシュバテソーロ(牡7歳/美浦・高木登厩舎)、ウィルソンテソーロ(牡5歳/美浦・小手川準厩舎)、デルマソトガケ(牡4歳/栗東・音無秀孝厩舎)、ドゥラエレーデ(牡4歳/栗東・池添学厩舎)が出走する。
  実績的には、サウジカップ(G1、キングアブドゥルアジーズ・ダート1800m)で火の出るような叩き合いを演じて1、2着を分け合ったセニョールバスカドール(牡6歳/米・T.フィンチャー厩舎)と、昨年の覇者である日本のウシュバテソーロが人気上位となるのが必然だろう。

 だが、ここで積極的に推したいのは、サウジカップを5着で終えたデルマソトガケだ。

 ご存じの方も多いだろうが、前走のデルマソトカゲは休み明けのうえ、輸送機のなかで顔に外傷を負い、サウジアラビアへ到着してから馬場入りを控える日があったりと、調整過程が大きく狂ってしまった。それでも、レース当日までには一応の仕上がりまで持って行ったものの、万全の出来とは言い難かった。

 レース後、音無調教師は「今回はトラブルがあって思い通りにはいかなかったが、次(ドバイ)は良くなってくれるでしょう」とコメント。差し脚が鈍っての5着という結果にもかかわらず、悔しさはあるにしろ悲観的なムードは感じられなかった。

 ドバイへ移動してからは理想的な調整ができたこともあり、トラックでの追い切りで迫力あるフットワークが戻っている。そうなると昨年のブリーダーズカップ・クラシック(G1、サンタアニタ・ダート2000m)で2着に入った力量は他馬より一枚上。2023年のUAEダービー(G2、メイダン・ダート1900m)において”持ったまま”2着に0秒9もの差を付けて逃げ切りで圧勝したように、舞台がメイダンに替わるのもプラス材料だ。休養明けをひと叩きされて、先行有利の馬場で持ち前のスピードを活かし切ってくれるだろう。

 音無調教師は「来年の2月で定年になりますから、私にはもう来年のドバイはないです。デルマソトガケにタイトルを取らせてあげたいのはもちろんですが、私もドバイでのラストチャンス。ぜひ勝って帰りたいと思っています」と語って腕を撫している。

 日本馬のなかではウシュバテソーロに次ぐ人気になるだろうが、それでも筆者はデルマソトカゲの「アタマ固定」で票を投じたい。

 相手はサウジカップの1、2着に前走でメイダンを舞台にG1ウィナーとなった通算成績11戦10勝(2着1回)のカビールカーン(牡4歳/米・D.ワトソン厩舎)を加えた3頭が本線。サンタアニタハンデ(G1)を勝利し、米国を代表する伯楽B.バファートが剛腕のランフランコ・デットーリ(イタリア)を鞍上に据えて参戦する、米国のニューゲート(牡4歳)も押さえておきたい。 ドバイターフ(G1、メイダン・芝1800m)には、昨年の本レースを跛行で取り消しを余儀なくされたドウデュース(牡5歳/栗東・友道康夫厩舎)がリベンジを狙ってエントリーしている。

 レーティングは124ポンドと、ドウデュースは出走馬のなかで最上位だが、ここはレーティング122ポンドと次位ながら、やや評価が低いルクセンブルク(牡5歳/愛・A.オブライエン厩舎)に狙いを定める。

 今年の本レースは差し・追い込み脚質の馬が多く、ルクセンブルクは理想の単騎逃げに持ち込める公算が高く、展開面では明らかに有利。愛チャンピオンステークス(G1、カラ・芝2000m)で逃げを打ち、欧州で現役最強とも言われるオーギュストロダン(牡4歳/愛・A.オブライエン厩舎)を相手にゴール寸前まで粘って2着に入ったポテンシャルを見直すべきだろう。

 相手本線はドウデュースと、昨年の本レース2着馬であるダノンベルーガ(牡5歳/美浦・堀宣行厩舎)の2頭。オッズ次第ではあるが、昨秋からGⅠのマイルチャンピオンシップ制覇を含め、安定した走りを続けているナミュール(牝5歳/栗東・高野友和厩舎)も争覇圏にあるとみる。
  ドバイシーマクラシック(G1、メイダン・芝2410m)は、先述したオーギュストロダンvs.日本馬という図式になるだろう。

 日本を代表する種牡馬ディープインパクトのラストクロップであるオーギュストロダンの強さは認めたうえで、敢えて上位にピックアップしたいのは日本の牝馬2頭。スターズオンアース(牝5歳/美浦・高柳瑞樹厩舎)と、昨年の牝馬三冠を達成したリバティアイランド(牝4歳/栗東・中内田充正厩舎)。なかでも配当的なメリットがあるスターズオンアースを狙ってみる手に妙味があるのではないか。

 スターズオンアースは昨年、牡馬との混合GⅠを3戦し、大阪杯が2着、ジャパンカップが3着、有馬記念が2着。勝利こそないものの、極めて高いレベルでの安定感を誇っている。その底力は遠征先の異国でも発揮できる。

 相手はオーギュストロダンと定め、3連系の馬券での穴候補に日本の3騎を挙げる。

 前述したリバティアイランド、ブリーダーズカップ・ターフの3着が光るシャフリヤール(牡6歳/栗東・藤原英昭厩舎)、地力あるジャスティンパレス(牡5歳/栗東・杉山晴紀厩舎)を据える。一発狙いなら、昨年の香港ヴァーズ(G1、シャティン・芝2400m)を制したのち、フランスでひと叩きしてからドバイへ乗り込んできたジュンコ(せん5歳/仏・A.ファーブル厩舎)まで手を広げてみたい。

 ドバイゴールデンシャヒーン(G1、メイダン・ダート1200m)は、昨年の覇者であるシベリウス(せん6歳/米・J.オドワイヤー厩舎)と、2月のサウジアラビアでリヤドダートスプリント(G3、キングアブドゥルアジーズ・ダート1200m)を快勝したリメイク(牡5歳/栗東・新谷功一厩舎)の一騎打ちとみる。

 シベリウスは昨年と同じローテーションで臨む点に好感が持て、リメイクはサウジアラビアから直接移動できた有利さがある。かたや鞍上は世界的名手のライアン・ムーア(英国)、リメイクは日本が誇るトップジョッキーの川田将雅という意地をかけた戦いも見どころのひとつとなるだろう。それに次ぐ存在として、昨年のブリーダーズカップ・スプリント(G1、サンタアニタ・ダート1200m)で3着に食い込んだナカトミ(せん5歳/米・W. ウォード厩舎)をマークしておきたい。

 最後に本レースに4頭エントリーしている日本馬の中で、JBCスプリント(JpnⅠ、大井・ダート1200m)のタイトルを手にしたイグナイター(牡6歳/兵庫・新子雅司厩舎)のスピードがどこまで通用するのか。期待を込めて応援したいと思っている。

文●三好達彦

【動画】日本馬が世界の頂点を狙うドバイW杯の参考レースをチェック!
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