金のカーリーヘアをなびかせ、身長201センチ、体重117キロのワーナー・ディアンズが休まずに動く。

 いま22歳。かねて取り組む鍛錬が、実になっていると語る。キーワードは「ワークレート」だ。

【画像】W杯でも活躍した世界に名を馳せるトッププレーヤー30選「先シーズンと今シーズンとでは、個人的に動きの速さが全然、違う感じがする。ワークレートのところで成長したというか、自分自身のプレーがうまくいっています」

 4月14日、秩父宮ラグビー場。国内リーグワン1部の第13節で、ホストの東芝ブレイブルーパス東京のロックとして先発する。

 好調のコベルコ神戸スティーラーズを相手に、前半3分には走者を掴み上げてのターンオーバーを味方の先制トライに繋げた。

 以後も攻守で身体を張り、空中戦のラインアウトも制圧した。

 失点した直後の67分には、自軍キックオフの弾道を30メートルは追いかける。こぼれ球を確保。直進。仲間がテンポよく展開し、あっという間に点を獲り返した。

 その時の思いを聞かれたディアンズは、あたりにいた人をどっと笑わせた。

「疲れていて…。その後、立ち上がれなかったっす」

 ノーサイド。40―40。ハーフタイムまでにあった19点リードを吐き出す流れで引き分けるも、4傑以上によるプレーオフ行きを決めた。

 第12節以前もすべてのゲームに出た。上体を沈めてのロ―タックル、抜け出しそうな相手を捕まえるカバー防御、フットワークを活かしたランニングと、攻守で魅してきた。

 渦中、本人がテーマに掲げてきたのが「ワークレート」なのだ。高質な仕事をたくさんする。そのために動く。倒れている時間を減らす。

 その意識を、多彩な仕事の礎とする。

「プレーとプレーの間の動きがすごく大事。もちろん前からわかっていましたけど、(ボールを持たない時に動くか否かで)どれだけ違いがあるかがわかってきた。(普段の練習から)1、1(ひとつひとつ)のアクションを高いクオリティで、トップの意識でやる。そして、できるだけ体力をアップさせて…という感じです」
  プロのS&Cコーチだった父のグラントさんの仕事の関係で、中学2年で来日。進学した流経大柏高では毎朝ウェートトレーニングに励み、急激に背が伸びたのと相まって世代の筆頭格に遇された。グラウンド外では「書の甲子園」こと「第29回国際高校生選抜書展」への作品出展で話題になった。
  大学へ行かずにプロとなるや、当時のトップリーグで公式戦に出ていなかった2021年秋に日本代表デビューを果たした。その頃まだ19歳。翌年発足のリーグワンではブレイブルーパスの主戦級となり、昨秋のワールドカップ初出場を経ていまに至る。

 フランスで開かれた世界の祭典では、怪我での出遅れもあり出場した4試合すべてでリザーブスタート。決勝トーナメント進出も逃し、不完全燃焼の感があった。

 いまの職場で「ワークレート」と動きのインパクトを示したいと考えるのは、そのためでもある。シーズン開幕前に言った。

「ワールドカップでは、なかなか自分がしたいラグビーができず残念な気持ちでした。怪我の影響もあったし、結果も…。それも、経験してよかったと思います。リーグワンでは自分が足りていないところ、成長しなければいけないところを見つけ、いいパフォーマンスを出せるように頑張ります」

 5月下旬までのプレーオフを含めたリーグワンはもちろん、今年から体制を刷新するナショナルチームでも爪痕を残したい。立ち止まれない。

取材・文●向風見也(ラグビーライター)

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