ホラー、恋愛、サスペンス、アクションなど、日々さまざまなジャンルの良作が生み出されている海外ドラマ。多彩なエンタメコンテンツを発信してきたWEBザテレビジョン編集部が、見応えのある注目コンテンツを紹介する。その一つが、オンライン動画配信サービス「Hulu」にて、全話独占配信中の「WRECK/レック」(全6話)だ。本作は、2022年10月にイギリスの「BBC Three」で放送され、批評サイトでオーディエンススコア96%という高評価を獲得したスラッシャーコメディドラマ。豪華客船内で“刃物を持ったアヒルの着ぐるみ”に追い回されるという衝撃的なシーンと共に、一人の男性が行方不明の姉を探すべく奮闘する姿が描かれる。本記事では、そんな本作のストーリーと見どころを振り返る。(以下、一部作品のネタバレを含みます)

■新人クルーに扮するジェイミーが「サクラメント号」で次々と不可解な事件に遭遇…

第1話では、豪華客船「サクラメント号」のクルーとして働く女性・ピッパ(ジョディ・タイヤック)が、なぜか刃物を持ったアヒルの着ぐるみに追い回されていた。そして船のデッキまで追い詰められたピッパは、意を決してデッキから飛び降り、そのまま消息を絶ってしまう――。

その後「サクラメント号」の運営会社・ヴェローラム社は“ピッパ自身が海に飛び込んだ”と説明。しかし、その説明に納得がいかず、自分の目で真相を確かめたいと思った弟のジェイミー(オスカー・ケネディ)は、友人のコーマックになりすまし、新人クルーとして「サクラメント号」に潜り込む。

無事潜入に成功したジェイミーは、そこで同じ新人クルーのヴィヴィアン(ザディア・グレアム)やバーガーショップ店員のオリー(アンソニー・リックマン)らと出会い、一緒に事件の真相を解き明かすことに。そんな中、ピッパの元恋人であるダニー(ジャック・ローワン)が“アヒルの着ぐるみ”を着た何者かに刺し殺されてしまう事件が発生。副船長のカレン(ハリエット・ウェブ)はこれを“自殺である”と断定するが、ジェイミーたちはダニーの遺体に刺し傷があることを発見するのだった――。

そしてその後も、パフォーマーのソフィアが襲われたり、クルーの一人・ジェロームが殺されたりと、不可解な事件が次々と起きる。“ヴェローラム社の仕業”だと踏んだジェイミーは、ヴィヴィアンと協力してヴェローラム社の悪事を暴こうと警察に訴えかけるものの、ヴェローラム社は裏で警察に巨額の賄賂を渡していたため、なかなか取り合ってもらえずにいた。

それでも諦めずに捜査を続ける中で、ピッパを追い詰めた犯人や、「サクラメント号」の裏側で取引されていた“ドラッグの秘密”を突き止めることに成功したジェイミーたち。そして物語の終盤では、この一連の事件の犯人と目的が明らかになるのだが、その内容はあまりにも衝撃で、さらにヴェローラム社が企てる一連の出来事に、ジェイミーやヴィヴィアンも巻き込まれてしまうのだった――。

本作では、“アヒルの着ぐるみ”を着てピッパたちを襲う人物の正体や、黒幕の隠された陰謀、ピッパの生死の行方など、視聴者の好奇心や不安感を掻き立てる要素を盛り込みながら、テンポよく展開していくストーリーに仕上がっている。

■“個性豊かな登場人物たち”と“ジェンダーレスな恋愛模様”が物語を彩る

本作の見どころの一つといえば、「サクラメント号」に搭乗している個性豊かなキャラクターの面々だ。まず主人公のジェイミーにとって、仲間想いで勇敢なヴィヴィアンの存在は非常に大きいものだった。ヴィヴィアンはピッパのことを心から心配しており、自分の危険も顧みず協力してくれる心優しい人物。ジェイミーが船内で危機的状況に追い込まれた際には、ヴィヴィアンが彼を救い出すシーンも描かれている。

そして「サクラメント号」で圧倒的な権力を持つ集団“航海士”も、本作を盛り上げるうえで欠かせない存在だ。リーダー的存在のサムや血気盛んなビーカーは、船の秘密をすべて知っており、クルーたちを巻き込んでいく“脅威的なキャラクター”として登場する。こうした個性的なキャラクターたちがそれぞれの立場で事件に巻き込まれていく姿が、ストーリーにより深みを与えていた。

ちなみに、本作のクリエイター兼脚本家は2023年に「世界を変える LGBTQ先駆者10人」の内1人に選出されたライアン・J・ブラウン氏が担当。ジェイミーやヴィヴィアンら主要キャストが2人とも作中で“同性愛者”として描かれる点も、他の作品とはひと味違うポイントとなっている。

それぞれ恋仲になる同姓がいたからこそ、異性同士であるジェイミーとヴィヴィアンの友情がより根深く感じられた。そして、ヴィヴィアンと恋仲になった乗客のリリーは、物語終盤で一連の事件に深く関わってくることになる…。


■壮大なスケールで描かれる物語…シーズン2の制作も決定

序盤は、“刃物を持ったアヒルの着ぐるみ”に船員たちが次々と殺されていき、愉快犯か何かによる殺人事件ではないかと思われた本作。しかし物語が進むにつれ、殺人事件の裏に潜む“巨大な陰謀や組織”が明らかになっていき、視聴者に大きな衝撃を与える結末となっている。

一連のストーリー展開にネット上では、「着ぐるみの正体がわかって終わり…ってわけじゃなかった!」「サクラメント号の闇がえげつない」「毎回ハラハラする展開が最高に面白い」などのコメントが寄せられていた。

また物語の終盤、ジェイミーとヴィヴィアンが「サクラメント号」の甲板で、「まだ終わっていない」「これからも戦う」と話していたことから、“今後ヴェローラム社の悪事をジェイミーたちが暴いてくれるのではないか”と期待も高まっている。実際にシーズン2の制作も決定しているため、今回紹介した「WRECK/レック」シーズン1の人気の高さが伺える。