コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、亡き双子の姉の“生まれ変わり”として女装を始める弟を描いた『夭逝の姉二人』をピックアップ。

作者・高川ヨ志ノリさんが2023年12月6日にX(旧Twitter)に投稿したところ、その不思議な物語に3.3万以上の“いいね”が寄せられ反響を集めている。この記事では高川ヨ志ノリさんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。

■ある日、“双子の姉”だと名乗る謎の少女たちが現れて…先の読めない展開も話題に

小学生の男の子である翡瑪(ひめ)はある日、ふとしたきっかけで母親に“自分の名前の由来”を尋ねる。すると母親から、実は翡瑪には双子の姉がいて、翡瑪が生まれる前に家が火事になり亡くなったことを初めて教えられる。その後、姉二人の命日に生まれた翡瑪は母親にとって姉たちの生まれ変わりの様に思え、彼女たちの名前である翡翠(ひすい)と瑪瑙(めのう)の一文字ずつを取り「翡瑪」と名付けたのだという。その事実を知ってから、翡瑪は部屋の隅に二人の少女の姿が見えるようになるのだった。

ふんわりカールしたロングヘアでフリルのついたドレスを身につけている少女たちは、翡瑪を見て「あんたはあたし達二人の生まれ変わりなのにどうしてそんなに美しくないのかしら」「美しくならないと酷い目にあわすわよ」と言う。二人の言葉に翡瑪は仕方なく「わかった」と答えるも母親にはその姿が見えていないようで、少女たちは「あたし達の事は誰にも言わない様に」と口止めするのだった。

それからというもの、姉二人の要望どおり、口紅を塗ったり、髪を伸ばしたり、友達の松子ちゃんからお下がりとしてもらったドレスを着たりと、見た目がどんどんかわいくなっていく翡瑪。母親も自分の話が発端である負い目からか翡瑪の女装について意見を言うこともなく、姉たちとの生活は数年続いていった。

しかし、日々の生活の中で翡瑪は姉達に対して違和感を感じることが増えていく。そんな中、成長期により翡瑪の身長がぐんと伸びてきた6年生のある日、顔の産毛が濃くなってきたことが姉たちにばれてしまう。叩かれる、と焦った翡瑪だったが、姉たちは意外にも「もうお終いよ」「大人なんかとは遊ばないの」と言い出して…。

謎の少女二人の予想外の正体が明かされるラストシーンや先の読めない展開も話題を呼び、X(旧Twitter)上では「めっちゃ良い話」「好き」「すごく良かった」「なにこれ素敵」「エモい」「美しいお話」などの声が寄せられた。また、「秀逸なタイトルで、読了後にピンときました」などタイトルに掛けられた“言葉”にも反響が集まっている。

■幽霊や妖怪をテーマにした作品を数多く手がけ 作者・高川ヨ志ノリさんが語る創作の背景とこだわり

――『夭逝の姉二人』を創作したきっかけや理由があれば教えてください。

2008年の作なので若干あやふやですが、何かしらのニュース報道を見ながら、死者の生まれ変わり扱いをされる子の「自分を通して自分ではない誰かの幻想を周囲が見ている」という状況を、主観的に描いたらどうなるか、と思ったのが始まりだった気がします。

――幼くして亡くなった姉2人の“生まれ変わり”として女装をすることになる主人公・翡瑪(ひめ)のキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?

「女の子になりたい」「可愛い服が着たい」という強い意志の無い、ただ義務感で可愛い服を着ているだけの素っ気ない女装が出来るように、翡瑪のキャラクターの造形自体は記号的で、あまり特徴の無い外見を用いました。

――翡翠と瑪瑙のフリをする二人の“妖精”の存在が印象的な本作ですが、物語を描くうえでこだわった点や「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。

基本的に「子供にだけ見えるティンカーベル」的な話なので、特にひねりは無いのですが、弟に対する姉の理不尽さと、可愛い服を着ていても足捌きが雑、という点を見て頂ければと。

――本作の中で高川ヨ志ノリさんにとって特に思い入れのあるシーンやセリフはありますか?

姉二人が消えて項垂れる翡瑪の無音の二コマは好きですね。普段セリフ多過ぎなので、セリフの無いコマが逆に効果的という点で気に入っています。

あと此処では分からない点で恐縮ですが、同人誌として刷った際の表紙の翡瑪翡翠瑪瑙の三人が可愛く描けたのが気に入っています。

――高川さんは本作以外にも『ユキヂョラウ』や『剥製嗜好』(ともに無人舘シリーズ)など幽霊や妖怪をテーマにした創作漫画を多く描かれているようにお見受けしますが、創作活動全般においてのこだわりや特に意識している点がありましたら教えてください。

幽霊や妖怪は「死んでるけど元気」「何か知らんが長生き」「いざとなったら謎能力で何とかなる」という点で人間界の悲惨さが回避できるので、主要キャラに使いがちですね。

個人的に、主人公に次々と不幸が襲う様なしんどい話があまり得意ではない為、自分の創作でも自分が読んでしんどい話にならない様に、最初から緩めの話か、真面目な話でも時々脱力地点を作る様にしています。

――2023年11月から「電撃コミック レグルス」での連載がスタートしたWEBコミック『怪奇古物商マヨイギ』(KADOKAWA)も話題を集めています。作品の見どころについて教えていただけますか。

私は同人誌歴は長いのですが商業媒体連載はこれが初めてなので、既に同人誌の方をご存じの方には「商業仕様にこの辺の芸風変えて来たな」と、新しく知ってくださった方には「妙に懐かしさのある画風の新人だな」と、共に楽しんでいただければ嬉しいです。

見どころは「明治っぽい話だけど、実は現代の時事ネタがちょいちょい入っている」所ですかね…。あと連載ですが長い一本の話ではなく、基本は一話完結なのでどこからでも読めて安心です。

――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へメッセージをお願いします。

いつもご贔屓にして頂きありがとうございます。皆様のお陰でなんやかんや描き続けていられます。しばらくマヨイギ連載がメインの活動になりますが、今後とも引き続きお付き合いいただければ幸いです!