悪魔の血を引く少年・奥村燐(CV:岡本信彦)が、父親である魔神(サタン)を倒すために最強の“祓魔師(エクソシスト)”を目指す『青の祓魔師』のTVアニメ第3シーズン『島根啓明結社篇』(毎週土曜夜0:30-1:00ほか、TOKYO MXほか/U-NEXT・Hulu・dアニメストア・アニメ放題ほかで配信)。悪魔とのド派手なバトルが見どころのダークファンタジーながら、家族や友達との絆、葛藤や成長、青春コメディまで、少年漫画の醍醐味がギュッと詰まった大人気シリーズだ。2月3日に放送された第5話は、舞台を島根に移して啓明結社イルミナティの謎に迫っていく「運命」。(以下、ネタバレを含みます)

■飛行機にビビる可愛い燐と、勝呂を励ますカッコいい燐!


イルミナティにさらわれた神木出雲(CV:喜多村英梨)を奪還するため、奥村雪男(CV:福山潤)は燐たち塾生メンバーを連れて出雲のいる島根へ向かうことに。駅前に集合した燐たちは、出雲の親友である朴朔子(CV:高梁碧)に見送られて電車に乗り、さらに飛行機で島根へと飛び立つ。機内にて雪男は、世界中の正十字騎士團が攻撃されている現状や、イルミナティの情報を塾生メンバーらに伝えて共有。三輪子猫丸(CV:梶裕貴)は、スパイだったことが判明した志摩廉造(CV:遊佐浩二)に想いを馳せ「子供のころから見てきた志摩さんを信じる」と、改めて仲間を信じる気持ちを明らかにする。

塾生メンバーが揃っての遠征は、『京都不浄王篇』以来2回目。前回は勝呂竜士(CV:中井和哉)たちの地元・京都だったが、今回は出雲の故郷である島根だ。緊張感がなく、すっかり旅行気分な燐のハイテンションっぷりは京都の時と同じで、どこか懐かしい。ただ、前回は燐が悪魔の血を引いていることが明らかになったばかりで、周囲から腫れ物扱いされていたことを考えると、今回の島根行きのほうが雰囲気はずっといいだろう。とくに飛行機に乗るのは初めてという燐のリアクションには注目で、離陸時に雪男の腕を掴んで怖がりまくるなど、随所で可愛さが際立っていた。ちなみに杜山しえみ(CV:花澤香菜)も飛行機は初体験らしく、離陸してすぐに弁当(草サンド)を配ろうとしたり、「味はよくないと思う」と自覚しながらも持参してしまうなど、こちらも地味に浮き足だっているのがなんとも可愛らしい。

島根に着いた一行は、さっそく目的地の「稲生大社」へ。その道中、ずっと元気のなかった勝呂竜士を心配した燐は、「くれえぞ 勝呂〜!!」といきなり飛び蹴りを食らわす。派手に吹っ飛ばされて怒り心頭の勝呂だったが、燐の素直でストレートな物言いにあてられ、少し元気を取り戻すのだった。

責任感が強いがゆえ、つい思いつめてしまいがちな勝呂に、飛び蹴りというとんでもない手段で心をほぐそうとするのがいかにも燐らしい。「もしもの時は あいつを殺して 俺も死ぬ!」と息巻く勝呂に対して大笑いして見せるなど、不浄王との戦いを通じて絆を深めた間柄だからこそできる大胆なコミュニケーションも光っている。いまやすっかり塾生メンバーに溶け込んでいる燐を見ていると、その成長っぷりを感じられてなんとも感慨深い気持ちになるシーンだ。


■気持ちいほどのクズキャラが登場…その名も「外道院」!



イルミナティの極東研究所にて目覚めた出雲。そこに現れたのは、出雲の母親・神木玉雲(CV:大原さやか)だった。玉雲は極東研究所の所長である外道院ミハエル(CV:檜山修之)の実験と研究によって、まともに喋ることすらできなくなっていた。出雲が祓魔師を目指す理由は、高度な召喚術をマスターし、母に代わって外道院の研究に協力するため。本来ならば時期尚早だが、玉雲の肉体の劣化が進んでしまったこと、研究が進み今の出雲でも玉雲の代わりが務まるようになったことが、今回の出雲拉致にいたった真相だった。

これまで家族などのバックボーンがほとんど描かれていなかった出雲。今回その一端が明らかになったが、それはあまりに酷な再会だった。車椅子に乗せられ身体はボロボロ、呂律の回らない口で出雲に助けを求める玉雲の姿は視聴者にとってもかなりショッキングで、SNSでは「出雲ちゃん、燐に負けず劣らずの地獄みたいな境遇だったんだな」など、出雲への同情の声が集まっていた。さらに、それ以上に強烈なインパクトを与えたのが新キャラの外道院だ。登場シーンの高笑いを聞いただけで“クズ”キャラだと確信できる芝居もさすがだが、出雲を見て「いい感じに育ったじゃん」とニヤニヤしたり、「どうする? 月雲ちゃんに……代わる?」と、 出雲の妹である神木月雲(CV:遠藤璃菜)を人質に取るなど、まさに「外道」そのもの。『青エク』は信念や矜持をもつ敵キャラも多いだけに、ここまで振り切ったクズキャラは珍しく、もはや清々しささえ感じるほど。外道院についてはSNSでも「外道院ほど『名は体を表す』キャラもいないだろ」、「アニメだとウザさが倍増で余計にイライラした」など、盛り上がっていた。

目的地である「稲生大社」に到着した一行。しかし大社の周辺にはなぜか飲食店が立ち並び、テーマパークのような賑わいを見せていた。現地調査を進めるも、なかなかイルミナティとの接点は見つからない中、宝ねむ(パペット CV: 井上剛)が物質への憑依召喚を行う。召喚されたのは、出雲の使い魔で、白狐の“御饌津“(ミケ)だった。一方出雲は、なぜイルミナティのスパイになったのかと志摩を問い詰める。「何も彼も嫌で」という志摩の返答を聞いた出雲は、思わず志摩を平手で打ち付け、「裏切り者!」と叫ぶのだった。

第5話終盤は、やはり出雲と志摩のぶつかり合いが印象的。人間関係や育った環境の全てが嫌になってスパイになったと言う志摩は、本音なのか演技なのか、かなり軽いノリで自らの心境を語る。ヘラヘラしながら「まぁ 女の子にはそうはいかへんのやけどぉ」と、ことさらおどけて見せる志摩の表情は、出雲でなくても手が出てしまいそうなほど、だらしなさ満点だ。しかしそれが逆に、これまで隠れていた出雲の「仲間を想う」本音を引き出す結果となったことも事実で、ある意味で「志摩、グッジョブ!!」なのも面白い。この掛け合いはSNSでも「志摩のビンタされたあとの表情が好き」、「ヒリヒリした緊張があっていいシーンだった」と、多くの絶賛の声があがっていた。

激動だった第4話から引き続き、ついに出雲や志摩を中心に物語が動き出した第5話。次回の第6話「もう誰も頼れない」は2月10日(土)放送予定。なんとも絶望的なサブタイトルが示す通り、これまで語られなかった出雲の壮絶な過去が描かれそうだ。期待して待とう。

■文/岡本大介