「浅見光彦ミステリー」や「監察医・室生亜季子」「刑事・鬼貫八郎」などの名シリーズを世に輩出し、岩崎宏美の「聖母たちのララバイ」や、竹内まりやの「告白」、高橋真梨子の「ごめんね…」など、主題歌からもヒット曲を生み出してきた「火曜サスペンス劇場」。“火サス”の愛称で親しまれる「火曜サスペンス劇場」は日本テレビ系のドラマ枠として、1981年〜2005年までの24年間にわたり、2時間のサスペンスドラマを数多く放送してきた。そんな「火曜サスペンス劇場」の11作品が、オンライン動画配信サービス「Hulu」にて独占配信中。本記事では、Huluで配信されている“火サス”作品のあらすじや見どころを紹介していく。

■「北ホテル」シリーズでお馴染みの沢地が「幻の女」で登場

「火曜サスペンス劇場」の配信ラインナップは、「季節はずれの宿泊客」「妻殺し」「幻の女」「北ホテル」「北ホテルII」「北ホテルIII」「うさぎと亀〜桜の樹の下で〜」「うさぎと亀2−川の流れのように−」「雨やどりの恋〜うさぎと亀より〜」「松原完治 お金ちょうだい致します」「通いの天使 介護ヘルパー・田野倉滋子」の11タイトル。

「季節はずれの宿泊客」では、40歳の独身女性・田村亜紀(泉ピン子)が能登半島で経営するペンションに、上野隆(西城秀樹)という殺人犯が転がり込む。上野に惹かれ、なんとか引きとめようとする亜紀だったが、そんな彼女の暗い過去を知る福田(石井光三)がしつこく付きまとい始める――。

「妻殺し」では、地検検事の沢木卓也(滝田栄)が、妻で弁護士の百合子(平淑恵)を殺害した容疑で逮捕されてしまう。妻の浮気のことで喧嘩はしたものの、まったく身に覚えのない沢木。何者かにハメられたと察して、15年前に別れた元恋人・五味早苗(伊藤蘭)に協力を仰ぐ。そして2人は、5年前に沢木が担当した放火事件が関係していることに気付き――。

「幻の女」では、元警視庁刑事の沢地慎吾(古谷一行)が管理人をしている北海道の小さなホテルに、奥野加世子(有森也実)という女性客がやってくる。加世子を追ってきた沢地の元部下の刑事・吉村(塩見三省)によると、彼女は東京で発生した銀行強盗事件の犯人の1人だという。そこで、“加世子を囮にして主犯格の相馬(李鐘浩)を逮捕したい”という吉村からの要請に、沢地は渋々同意するのだが――。ちなみに本作では、「北ホテル」シリーズでお馴染みのキャラ・沢地が登場する。

■小樽を舞台に描かれるハートフルサスペンス「北ホテル」シリーズ

「北ホテル」では、沢地が支配人を務める小樽市の小さなホテルに宿泊している老夫婦、朝倉修平(長門裕之)と妻の冬美(南田洋子)に殺人容疑がかかる。2人は、冬美が末期の胃がんのため、最後の旅行に来ていた。殺害されたのは、市内で倉庫業を営む富岡敦志(原田大二郎)で、現場の状況から怨恨が絡んでいる可能性が高かった。そんな中、沢地は20年前の船火事で朝倉と富岡が繋がっていることに気付く――。

「北ホテルII」では、小樽の海岸で、地元の寿司屋の婿養子・耕介(中本賢)の遺体が発見される。沢地は、自身が支配人を務めるホテルの宿泊客・矢野(美木良介)が、事件直後に全身ずぶ濡れで帰ってきた事を思い出す。矢野は耕介に呼び出されていたのだった――。

「北ホテルIII」では、デパートで売上金1億円が強奪される事件が発生。事件発生の夜、沢地が支配人を務めるホテルには、予約なしで訪れた野村(京本政樹)をはじめ、旅程変更で小樽を訪れたという近藤杏子(中山忍)と孝志(大沢樹生)夫妻、落ち着きがないように見える和田(本宮泰風)、丸山夫妻(西田健、田島令子)とその5歳の孫(吉川史樹)の4組が宿泊していた。翌朝、近くの海岸で和田の遺体が見つかるのだが、彼の所持品からは強奪事件の凶器が出てくるのだった――。

主人公・沢地の“熱い思い”によって犯人の心を癒していくハートフルな要素はもちろん、北海道ならではの景色も楽しめるシリーズとなっている。

■市原悦子演じる千代が、詐欺師と呼ばれる男に恋心を抱く…

「うさぎと亀〜桜の樹の下で〜」では、愛川千代(市原悦子)が給食のパートをしている小学校で人員削減が行われることとなり、千代は同僚で幼なじみの森島多恵(淡路恵子)に仕事を譲って辞める。その後、千代は仕事探しに奔走するのだが、64歳で学歴も資格もない彼女を雇ってくれるような場所を見つけることができずにいた。そんな中、河川敷で焼死体が見つかる。遺留品などから、多恵の娘婿・大場文彦(萩原流行)の可能性が高いことがわかり――。

「うさぎと亀2−川の流れのように−」では、千代が通う“ちぎり絵教室”の生徒・盛田宏子(李麗仙)が何者かに殺される。そこで、宏子と仲が良かった給食調理員の同僚・菊池亜希子(戸田恵子)の叔母・花井房枝(草笛光子)に話を聞きに行く千代。その後、裏で高利貸しをしていた宏子と亜希子の家の間で、金にまつわるトラブルがあったことがわかるのだった――。

「雨やどりの恋〜うさぎと亀より〜」では、千代が家の前の軒先で怪我をしている男・平田紀彦(忌野清志郎)を見つける。そして、借金取りに追われているという平田を匿ってあげる中で、次第に恋心を抱き始める千代。しかし、平田を追っている女・三宅奈々(小西美帆)によると、彼は以前小さな証券会社の社長をしており、多くの客を詐欺のような手口で騙していたというのだ。さらに千代は、奈々の母が平田に騙されたことで自殺してしまったことを知るのだった――。

市原が主演を務める同シリーズ。「うさぎと亀〜桜の樹の下で〜」の終盤で描かれるカーアクションシーンは特に圧巻で、「雨やどりの恋〜うさぎと亀より〜」に出演する忌野のシリアスな演技や、市原との“雨の中のラブシーン”など、見どころのあるシーンが多数盛り込まれている。

■特別税金徴収員や介護ヘルパーが事件の真相に迫っていく

「松原完治 お金ちょうだい致します」では、消費者金融の営業所所長の崎山(上杉祥三)が殺される事件が発生し、特別税金徴収員の松原完治(橋爪功)は事件に興味を抱く。そんな中、松原は税金を滞納していた丸田(美木良介)の店を訪れ、常連客の宇田(山田吾一)と出会う。宇田は、娘の寿子(高橋花衣)が自殺した原因を探るために上京したという。その後、松原は“寿子が借金のために崎山に体を奪われた”という事実を知り――。

「通いの天使 介護ヘルパー・田野倉滋子」では、介護保険事務所に勤める介護ヘルパーの田野倉滋子(三田佳子)が、東京の郊外に一人息子の花岡哲夫(布施博)と暮らす痴呆症の老人・花岡らん子(淡路恵子)の介護を行うことになる。ところが、この花岡家にはなにやら秘密めいたものがあり、次第に滋子の身にも危険が迫っていく――。

本作の脚本を務めるのは、日本文芸大賞脚本賞や放送文化基金賞脚本賞の受賞歴を持つジェームス三木。先の読めないストーリー展開はもちろん、三田や淡路らによる迫真の演技も見どころの一つとなっている。