修羅たちによる「最強」vs「最強」を描いた壮絶なバトルファンタジー「異修羅」(毎週水曜夜11:00-11:30ほか、TOKYO MXほか/ディズニープラスで見放題独占配信・YouTube・ABEMAで見逃し配信)。迫力のバトル描写はもちろんのこと、豪華キャスト陣が演じる個性溢れるキャラクターたちが織りなす重厚な人間ドラマも見どころの本作。2月28日に放送された「第九話」は、先週に引き続き修羅同士の戦いが描かれた「空からの戦火」。(以下、ネタバレを含みます)

■「ニヒロvsソウジロウ」味方同士でまさかのバトル!

リチア新公国の防衛線へとやって来たソウジロウ(CV:梶裕貴)。リチア兵からの集中砲撃を難なく刀で弾き落とすと、そこへヘルネテンに搭乗した濫回凌轢ニヒロ(CV:高橋李依)が駆け付ける。ニヒロの任務は黄都兵がリチアへ侵入するための露払いで、あっという間にリチア兵たちを殲滅していく。しかし、より強い相手と戦いたいだけのソウジロウは、同じ黄都勢力でありながらも、一方的にニヒロに襲いかかる。その攻撃をかわしたニヒロは、「キミと戦うつもりはない」と言い残し、リチアの街中へと去っていく。

冒頭からいきなりニヒロとソウジロウが接触。任務を忠実にこなそうとするニヒロと、強ければ敵だろうが味方だろうが関係なく斬りかかるネジの外れたソウジロウという構図が面白いが、それぞれのバックボーンを考えれば納得もできる。ニヒロは鎹のヒドウ(CV:岡本信彦)と契約を交わしており、任務を達成すれば黄都市民として晴れて自由の身となるため、こんなところで味方と戦っている場合ではないのだ。一方のソウジロウは、強い相手と戦うためだけに行動しており、国同士の争いには興味がない。しかも「第七話」での音斬りシャルク(CV:山寺宏一)との交戦では、最終的に相手に逃げられており、ソウジロウ的には相当ストレスが溜まっているのだろう。ふたりの戦いは一瞬ではあったものの、ソウジロウはニヒロの「命」の所在を突き止め、さらにヘルネテンの無敵の装甲を削るなど、相変わらず規格外の洞察力と強さを見せつけた。また同時に、リチア兵に対するヘルネテンの大暴れっぷりも見どころ。とてつもない硬さの装甲と俊敏性、さらには遠距離攻撃手段も持ち合わせており、かつて一方面軍を壊滅させたというのも納得のいく戦いっぷりだった。

■レグネジィVSアルス、因縁の対決

メイジ市を出て、ひとりリチアへと馬を走らせる静寂なるハルゲント(CV:大塚明夫)と、その動きに追従するかのように自らもリチアへ向かう星馳せアルス(CV:福山潤)。そんなアルスの行動を監視し、リチア上空で待ち受けていたのは、夕暉の翼レグネジィ(CV:森久保祥太郎)率いるワイバーン軍だった。レグネジィはメイジ市での戦いでアルスが使った魔具の性能と特徴を把握しており、その対策を配下のワイバーンたちに叩き込む。その直後、リチアへと到着したアルスはレグネジィと対面し、ワイバーン軍本隊との戦闘が始まる。

レグネジィとアルスの因縁については「第三話」でも少し描写されている。二匹はかつて同じ群れに属していたが、アルスはある日、群れを離れていった。レグネジィはそのことに強い憤りを感じており、それ以来アルスに対抗心を燃やしているのだ。「真に強き者は率いる者」だと信じて疑わないレグネジィと、自由気ままな一匹狼のアルスは相容れない存在で、言わばライバル関係とも言える。もっともアルスのほうはレグネジィをたいして意識はしておらず、「めんどくさい奴」程度の認識なのもまた興味深い。ともあれ、レグネジィにとっては自分の正しさを証明するために絶対に負けられない戦いであり、その執着がどう結果に影響するのかに注目だ。

■怒涛の空中戦! アルスのカッコよさが頂点に

煙幕や狙撃兵、詞術などを効果的に組み合わせることで、これまでにアルスが見せた魔具をうまく封じて優位に立つレグネジィ。しかしアルスは、ここで初めて見せる魔具「地走り」を使用し、リチアの街を火の海に変える。しかし空中にいるワイバーンたちには影響はなく、依然として状況は変わらず。さらに集まってきた狙撃兵による集中砲火が始まると、ついに被弾したアルスは地表へと落ちてゆくのだった。

無数のワイバーン兵たちとの空中戦は、前話のメイジ市での戦いをはるかに超える迫力で描かれており、3Dを駆使したハイブリッドアニメの醍醐味を感じさせてくれる。アルスは今回も「マスケット銃」、「ヒレンジンゲンの光の魔剣」、「キヲの手」、「慄き鳥」、「地走り」と惜しみなく魔具を披露してくれていてサービス満点。とくに今回のバトルは夜であるため、薄暗い闇に照らされる魔剣とキヲの手が放つ煌々とした光が最高にエモい。また今回初披露となった「地走り」も、一滴垂らすだけで街中が炎に包まれるというとんでもないシロモノで、地を這うようにしてたちまち炎が広がっていくシーンは圧巻。この超絶バトルにはSNSでも「アルス、映るシーンの全てが絵になってんだけど。頭おかしいよこのカッコ良さ」、「バトルIQが2人共高すぎる」「地走り アニメでみると最悪の魔具すぎる」などさまざまなリアクションが飛び交っていた。

地表へと落ちていくアルスを見届けて勝利を確信するレグネジィだったが、血が飛び散っていなかったことに気づき、すぐに追撃の指示を出す。ワイバーン兵たちは低空飛行をするアルスを見つけ出し、再び上空へと駆り立てる。ここでレグネジィは、胴体に爆薬を仕込んだワイバーン兵を突撃させ、さらに詞術で虫を操ってアルスを襲わせる。これら一連の流れはすべてレグネジィの思惑通りで、ついにアルスを追い詰めたかに思えたその瞬間、アルスの「地走り」による巨大な炎が塔の最上部から噴出。ネグレジィたちは逃げる間も無く炎に巻かれてしまう。こうしてワイバーン同士による因縁の対決は、アルスの勝利で幕を降ろしたのだった。

高い知能と緻密な戦術でアルスを追い詰めたかに見えたレグネジィだが、やはりアルスのほうが一枚上手だった。「地走り」は炎を自在に操れる能力であり、アルスは時間をかけて炎を塔の最上部まで運んでいたのだ。とにかく時間稼ぎがしたかったアルスに対し、最後まで侮蔑の言葉を延々と喋り続けたレグネジィ。アルスが「黙っていれば もうちょっとやっかいだった」と語った通り、勝敗を分けたのはレグネジィが抱くアルスへの過剰なまでの敵対心だったのかもしれない。いずれにしろ、アルスも相応の苦戦を強いられたことは事実で、これまで無敵のように思えたアルスをここまで追い詰めたレグネジィには「よくぞここまで善戦した」と素直に拍手を送りたい。さて次回「第十話」は3月6日(水)放送予定。期待して待とう。

■文/岡本大介