近年盛り上がりを見せている台湾映画・ドラマをWEBザテレビジョンで大特集。今回は、80年代の日系ナイトクラブを舞台にした「Light the Night 華燈初上ー夜を生きる女たちー」(NETFLIXで配信)を紹介する。サスペンス、人間ドラマ、ロマンスといったさまざまな側面をあわせもつ、本作の魅力にせまりたい。

■舞台は煌びやかなナイトクラブ、80年代ファッションや豪華ゲストにも注目を

本作は、台北・林森北路の日系ナイトクラブ「スナック光」を舞台にした愛憎劇となっている。林森北路は日本人向けのお店が多い歓楽街だ。日本がバブルに沸いていた1980年代終盤を描いているうえ、「スナック光」は日系ナイトクラブであるため、店内には日本人客や日本語があふれている。

バブルの恩恵を受けられなかった世代としては、ドラマを通して、煌びやかなナイトクラブの様子や裏側のドロドロ、女性たちが身にまとう80年代ファッション、日本人客の豪遊ぶりなどが見られるのも楽しい。

また、本作は主演兼プロデューサーであるルビー・リンを筆頭に、キャストの豪華さも話題になっている。主要キャストだけでなく、ゲストもビビアン・スーやワン・ポーチエなどそうそうたる顔ぶれだ。ルビー・リンの夫であるウォレス・フォの登場にも驚いた。

■遺体発見から時系列をさかのぼって描かれるスナック光をめぐる人間模様

1988年10月、写真部の学生たちが台北の山中で女性の遺体を発見したことから物語はスタートする。恐らく30代で身元は不明。土砂崩れで埋まっていたため遺体は泥まみれで、死因や外傷があるのかないのかなど詳しくは検死の結果を待つしかない。手がかりは布と一緒に埋まっていたことと、「スナック光」のマッチだけだったー。

しばし時をさかのぼった事件発覚の3カ月前、その「スナック光」では夜の蝶たちがさまざまな問題を抱えながら日々を過ごしている。店の中心人物は、親友同士でもある2人のママ、ローズ(ルビー・リン)とスー(シェリル・ヤン)だ。

スーは、愛を捧げてくれる人に愛を返せないこと、好きになるのはろくでなしばかりであることに悩んでいる。一方、ローズは脚本家のジャン・ハン(リディアン・ヴォーン)と近頃会えておらず、電話ももらえないことに苛立っていた。思いつめて、家にまで押し掛けたローズだったが、ジャンにもう愛していないと告げられてしまう。挙句の果てに、ジャンはスーを口説きにかかるのだった。

ある夜、店で働く女性が借金取りともめたことでコワモテの男たちに後をつけられたローズは、通りすがった男性を追手だと勘違いして殴りかかり、その隙をついて逃げ出すことに成功する。殴りかかられたのは、刑事のウェンチェン(トニー・ヤン)。彼はローズの落としものから、スナック光のショップカードを発見するのだが……。

■じっくり描かれる、被害者はそして犯人は誰なのかの種明かし

「Light the Night 華燈初上ー夜を生きる女たちー」はパート1から3まであり、1パート8話全24話から成っている。ストーリーの軸となっているのは、スナック光にかかわる誰かが遺体となって発見されるという事件だ。

パート1では、スナック光をめぐる人間関係、それぞれの人物の人となり、そして事件の被害者が誰で、それは他殺なのか自殺なのかが判明するまでが描かれる。2では事件の捜査の進展とさらなる事件の発生、3で2つの事件の真相が明らかになるというのが物語の大きな流れだ。

パート1の最後の最後になるまで遺体の身元が明かされないというのは意外だったが、話の進みがゆっくりすぎるという印象は受けなかった。華やかなお店の裏側で女性たちが抱えている事情やそれぞれの生きにくさ、上手くいかない恋愛、嫉妬、客の取り合い、暗い過去、借金、ドラッグ、裏切り、ライバル店の登場、仲間たちの分裂の危機などがぎゅっと詰め込まれており、見応えがあるからだ。

とはいえ、続きや真相が気になってしまって、24話をイッキ見してしまう可能性はかなり高いので、体調をこわさないよう気をつけてほしい。

■キレイごとではないリアルな人間ドラマが台湾映像作品の魅力

本作は、視聴者による被害者当てや犯人当てなどが盛り上がり、サスペンスとしても成功をおさめた。だがそれだけにとどまらず、骨太な人間ドラマでもあり、いくつもの恋や愛が錯綜するロマンスドラマとしても成り立っている。

恋や愛にしても、真っすぐな思いばかりではなく、ナイトクラブが舞台なだけに欲や打算に基づくロマンスや、相手に騙されている関係、一方的な搾取関係、強引に結ばれたロマンスなどドロドロしたものも多い。

だが、台湾映画や台湾ドラマはそうしたキレイごとではない部分に踏み込んだ、リアルで濃密な人間ドラマを描くことに長けているように思う。そして、その先に小さな救いや希望の光を用意することにもまた長けている。それが本作の、また台湾ドラマの魅力だといえるだろう。