修羅たちによる「最強」vs「最強」を描いた壮絶なバトルファンタジー「異修羅」(毎週水曜夜11:00-11:30ほか、TOKYO MXほか/ディズニープラスで見放題独占配信・YouTube・ABEMAで見逃し配信)。迫力のバトル描写はもちろんのこと、豪華キャスト陣が演じる個性溢れるキャラクターたちが織りなす重厚な人間ドラマも見どころの本作。3月13日に放送された「第十一話」は、リチア新公国と黄都の戦いの終焉を描いた「落日の時」。(以下、ネタバレを含みます)

■レグネジィとカーテの最期に号泣

星馳せアルス(CV:福山潤)の魔具による大規模火災や濫回凌轢ニヒロ(CV:高橋李依)による蹂躙によって、すでに壊滅状態のリチア新公国。自軍の敗北を悟った鵲のダカイ(CV:保志総一朗)は、この地を離れる前に幽閉していた遠い鉤爪のユノ(CV:上田麗奈)を解放しようとする。しかしユノは、最後まで戦い抜こうとしないダカイに対して牙を剥き、詞術での攻撃を試みるも、あっけなく弾き返されてしまう。

冒頭からユノの感情が大爆発。強き者への復讐のために生きるユノにとって、ダカイのように圧倒的な力を持った存在は、それだけで復讐の対象ではある。さらにダカイの場合、自国の勝利にさほど興味がなく、命を賭けて戦おうとする気概もない。一方的に蹂躙されるしかなかったユノからすれば、その強者ゆえの傲慢さが許せなかったのだろう。とは言え、明らかに勝ち目のない戦いを仕掛けるユノは愚かでパニック状態のようにも見える。果たしてユノには何か勝算があるのだろうか?

瀕死の重傷を負った夕暉の翼レグネジィ(CV:森久保祥太郎)は、晴天のカーテ(CV:雨宮天)の元へ帰還していた。重傷のレグネジィにショックを受けるカーテだったが、そこへ静寂なるハルゲント(CV:大塚明夫)が駆けつけたことで事態は一変。多くのメイジ市民を殺したワイバーンを許せないハルゲントは、銃口を向けてトドメを刺そうとするも、カーテはレグネジィをかばおうとする。問答の末、レグネジィは最後の力を振り絞ってハルゲントに襲いかかるが、アルスの狙撃によりレグネジィが倒れる。さらにその弾丸は、カーテをも貫通していたのだった。

修羅のひとりであるレグネジィと、その心の支えだったカーテの最期は、シリーズ随一とも言える感動シーンに仕上がっている。最期までカーテを守ろうとするレグネジィと、彼を庇うカーテの絆はもちろんだが、人間であるカーテを殺したくないハルゲント、そのハルゲントを守ろうとするアルスに至るまで、誰かを守ろうと想いの連鎖がこの悲劇を生んだことを考えると、なんともやるせない気持ちになる。レグネジィにとってせめてもの救いは、カーテの歌を聴きながら死んでいけたこと。そしてカーテにとっての救いは、通り禍のクゼ(CV:三木眞一郎)によって看取られたことかもしれない。このシーンはSNS上でも「こんないい子がこんな風に失われる異修羅世界の過酷さよ」、「カーテの死に際の歌、ヤバすぎ!」、「レグネジィとカーテの血が混じり合う演出すごすぎ!」など、芝居と作画の両面で賞賛の声が贈られていた。

■弱者のユノが、ダカイに一矢報いる

警めのタレン(CV:朴璐美)は、音斬りシャルク(CV:山寺宏一)に報酬として本物の魔王が倒された場所についての情報を渡す。タレンはシャルクとの会話で、理想を実現できなかった悔しさを認めつつも、敗戦の将としてやがて訪れる死を覚悟する。一方、ダカイに対して無謀な戦いを挑み続けるユノの前には、ソウジロウ(CV:梶裕貴)が現れる。ユノの真の狙いは時間稼ぎであり、事前に飛ばした鏃でソウジロウを誘導していたのだ。こうして修羅であり、ともに客人(まろうど)でもあるソウジロウとダカイの戦いが始まった。

ユノがダカイに対して無謀な戦いを仕掛けた理由が明らかとなり、弱者なりの戦いぶりが初めて功を奏した形となった。逸脱級の盗賊であり、相手の目論見を瞬時に見破ることを得意とするダカイだけに、彼を欺けたことは奇跡にも等しいが、それもこれも圧倒的な実力差があったからこそだ。ダカイはそもそも本気でユノのことを相手にしておらず、気まぐれの遊び感覚であしらっていただけ。ユノはそんなダカイの気持ちを利用したわけで、ダカイからすればまさにしてやられた気分だろう。ダカイがここまで大笑いするのは初めてで、おそらく本心からのものに違いない。

ソウジロウの初撃に対し、絶対先手の魔剣「ラズコートの罰の魔剣」で応じたダカイは、ソウジロウの刀を空中に飛ばしてカウンターの一撃を狙うも、ソウジロウは剣を握るダカイの腕を掴み、剣を振り下ろさせない。次の瞬間、落ちてきた刀を掴んだダカイは無防備なソウジロウの胴体を斬りつけるが、なぜか斬ることができない。ソウジロウの刀は刃が欠けたナマクラで、とても人を斬れるような代物ではなかったのだ。予想外のことに動揺を隠せないダカイに対して、ソウジロウはその手に握っているダカイの剣を、そのままゆっくりとダカイの身体へと沈めていく。こうして修羅で客人同士の戦いは、ソウジロウの勝利で幕を降ろした。

同レベルかに思えたふたりの戦いは、結果だけを見ればソウジロウの圧勝だった。振り返ってみれば、そもそもダカイがソウジロウの刀を警戒した時点で、勝負はあったのかもしれない。ソウジロウはこれまで見せたことのない構えから、どうぞ刀を飛ばしてくれと言わんばかりの突きを繰り出している。最後にダカイが「すべてを読み切っていたのか?」と驚いた通り、おそらくソウジロウは最初からこの攻防の一部始終が見えていたのだろう。ダカイのタレントである「略奪の観察眼」も十分人間離れしているが、こと命の取り合いに関して言えば、ソウジロウの「殺戮直感」はそれをはるかに上回る性能なのだろう。たった一度の立ち会いで勝負が決したこの一戦は、派手さこそないものの緊張感に満ちており、音楽、アクションともに最高の見せ場だった。またダカイが絶命する直前に見せたユノの表情もとても印象的だ。冷たい目に静かなる意思をたたえたその表情からは、ユノの成長や覚悟を感じられる。SNS上では「強者同士の決着は一瞬」、「ダカイめちゃくちゃ強かったのに退場だと!?」、「ダカイ死に顔が良すぎる」などの声が挙がっていた。

さて次回、「第十二話」は3月20日(水)放送予定。期待して待とう。

※朴ロ美のロは、王へんに路

■文/岡本大介