テレビアニメ「百千さん家のあやかし王子」(毎週金曜深夜0:00-0:30、TOKYO MXほか/ABEMA・Huluほかで配信)の第12話が3月22日(金)に放送された。ついにフィナーレを迎えた本作。幻想的な花火をバックに、ひまりと葵が結ばれる幸せなラストが視聴者の感動を呼んだ。

■「百千さん家のあやかし王子」とは

本作は、漫画雑誌「ASUKA」(KADOKAWA)にて、2013年から2019年にかけて連載され、累計発行部数110万部以上、10言語で翻訳・出版されるなど海外でも人気を集めている硝音あやによる漫画が原作。亡き両親の遺言状により、山奥の日本家屋を相続することになったヒロイン・百千ひまり(CV:川井田夏海)と、そこに住み着くあやかしたちとの生活が描かれる。

2015年には実写舞台化もされ好評を得た“あやかし系和風ファンタジー”がこの度、満を持してアニメ化された。「七つの大罪 怨嗟のエジンバラ」のボブ白旗が監督を務め、「うちの会社の小さい先輩の話」の蒼樹靖子がシリーズ構成を担当。アニメーション制作はドライブが担当する。

■平和が戻ってきた百千家でパーティーを開催!

ひまりの活躍により、百千家に平和な日常が戻ってきた。あれから那智(CV:羽多野渉)は姿を消した。表向きの理由は転勤だが、あまりにも急で何も知らないひまりのクラスメイトたちは寂しがる。

そんな中、班目(CV:松田利冴)から夜に行われるお祭りに誘われるひまり。だが、この日はどうしても外せない様子があった。みんなと「来年は一緒に行こう」と約束し、ひまりが帰宅すると紫(CV:立花慎之介)や伊勢(CV:小野友樹)たちが部屋を飾り付けている。那智との闘いに決着がついたので、百千家では互いをねぎらうために“お疲れ様パーティー”を開催することになったのだ。

飾り付けに使える花があれば…という、ひまりを小妖怪たちは襖の前に連れていく。襖を開けると、そこには見事な向日葵(ひまわり)畑が広がっていた。向日葵が大好きなひまりは大喜び。向日葵は太陽に向かって咲く。ひたむきで元気なひまりのイメージにぴったりな花だ。「私の名前、向日葵から両親がつけてくれたのかな…なんて思ってるんだ」と、しみじみ語る彼女を見て、葵(CV大塚剛央)はある決心を固める。

百千家の蔵で飾り付けに使えるものを探している中、ひまりに「思ほゆの棚」の話をする葵。そこで葵の棚を選んだことで、ひまりはずっと探していた両親の手がかりを得ることができなくなった。そのことを葵は申し訳なく思っていたのである。「後悔はない」というひまりに、葵は今までずっと隠していた秘密を語り始めるのだった。

■葵がずっと隠していた秘密とは?

葵が百千家に迷い込み、数年が経った頃。主人不在の間に溜め込んだ不浄のせいで魑魅魍魎が跋扈(ばっこ)していた百千家で、突然御守様に指名された葵は来る日も来る日もあやかし退治に明け暮れていた。紫は「あなたが御守様でいてくださるおかげで現世の安寧が守られている」と言ってくれたが、葵にとってはその実感もなくただ辛いだけの毎日だったという。

そんな時、葵が蔵で見つけたのがひまりの母が書いた日記だ。百千の血を引きながらも、御守様になれるほどの妖力を持たなかったひまりの母。日記には「そんな自分にも愛する人が、共に支え合うことができる人が現れた」と綴られている。その人と結ばれ、生まれたのが娘のひまり。見たことも会ったこともないけれど、確かに百千家に存在していた家族の幸せな物語に葵は夢中になった。

しかし、ある日突然、日記が不浄に食われて読めなくなってしまう。すると日記からは亡霊のようなものが浮かび上がる。大した妖力を持たないゆえに百千家に溜まった不浄の餌食になってしまったひまりの両親だった。「せめて最後にあなたの心を照らしたい。そう思ってこの日記を残したの」と母親は語る。ひまりも母親と同じく大した妖力を持たない。そんなひまりの未来を両親は案じていた。だから、わずかな妖力を日記に込め、娘にメッセージを残したのである。

「あなたの人生にどんな困難が訪れようと最後には安寧がありますように。愛してるわ」

両親が残したひまりへの愛が、葵の凍てついた心を溶かした。これからはひまりを守るために生きる。そう誓った葵。雲入道の妖気に当てられて倒れたひまりが寝床で聞いた「ひまりを助けられなかったら僕が今まで生きてきた意味がないんだ」という葵の言葉の意味がようやく明らかになった。両親の顔も知らずに育ったひまり。もう会うことは叶わない。けれど、葵が両親の思いをここまで繋げてくれた。そのことにお礼を述べるひまり。そのことによって、両親がひまりに残した愛を自分が奪ってしまったという葵の長年の罪悪感は消える。葵はひまりを優しく抱きしめた。

■葵の口からひまりの名前の意味が語られる感動のフィナーレ

いよいよお疲れ様パーティーの時間。テーブルの上には紫が腕によりをかけた料理が並ぶ。チョコレートファウンテンならぬ、おしるこファウンテンも。ひまりや伊勢たちが宴会芸を披露し、闇鍋会以来の賑やかさが百千家に戻ってきた。

そして宴もたけなわになった頃、ひまりからみんなにサプライズが。庭には蔵で見つけたいくつもの花火が用意されている。しかし、どれも火がつかない。ひまりがガッカリしていると、葵が鵺に変身。手から出た青い炎が着火し、花火が夜空に上がる。同時に光の龍が登っていく幻想的な光景に見惚れるひまり。彼女が蔵で見つけたのは、花火は花火でも妖怪花火だった。

ひまりは葵の手を引き、龍の背中に飛び乗る。一緒に空を飛ぶ2人。そこから見えるのは町の灯だ。御守様である葵は百千家から出ることはできない。そんな葵に、ひまりは彼によって町の安寧が保たれていることを知ってほしかったのだ。

それを受け、葵はひまりの両親が日記に残していた言葉を伝える。『遠く万里までその灯火が渡るように』両親はそんな願いを灯万里=ひまりという名前に込めた。

「僕は君の名のもとになったこの灯を守っているんだね」

ひまりのおかげで、ようやく自分の使命に気づくことができた葵。紫が言うように、2人の出会いは運命だったのかもしれない。みんなが見上げる花火をバックに、キスを交わすひまりと葵。ロマンチックで心が温まる感動のフィナーレに視聴者からは「きゅんきゅんで胸いっぱいの最終話だった」「最終回で結ばれる作品は多々あれど、名前の由来からラストシーンに繋げるのはエモい!」「幸せな気持ちで胸いっぱい」「めちゃめちゃ泣きました…なんてあたたかい作品だったんだ」「素敵なアニメをありがとうございました」という声が上がった。

なお、3月20日にはBlu-ray&DVDの第1巻も発売された。硝音あやによる漫画を原作に、ひまりが大きな愛で葵の孤独を癒し、2人が結ばれるまでを描いた本作。その圧巻の映像美をパッケージ版でプレイバックしよう。

■文/苫とり子