アニメ「怪獣8号」(毎週土曜夜11:00-11:30ほか、テレ東系列ほかにて放送/X(Twitter)にて全世界リアルタイム配信/ABEMA・ディズニープラス・FOD・Lemino・TVerほかで配信)の第4話「フォルティチュード9.8」が5月4日に放送された。知能を持った怪獣の出現で謎をはらむ物語となった今話。四ノ宮キコル(CV.ファイルーズあい)の過去、怪獣化した日比野カフカ(CV.福西勝也)のワンパン勝利など、見どころの多いエピソードに視聴者の反響も大きかった。(以下、ネタバレを含みます)

■つらいバックグラウンドを持っていたキコル。感情移入が一気に高まる

討伐試験終了後、突然現れた謎の怪獣に襲われ、絶体絶命の窮地に陥ってしまったキコル。そのときキコルを奮い立たせたのは、幼い頃に父から受けた厳しい言葉だった。カフカに亜白ミナ(CV.瀬戸麻沙美)と交わした約束があるように、キコルにも防衛隊に入り、力を示さねばならない理由があった。

日本防衛隊の長官・四ノ宮功(CV:玄田哲章)の娘として生まれたキコルは全てにおいて完璧でなければならなかった。「この国の未来のため」「死んだ母のためにも」。討伐中学校に首席で合格するのは当然の通過点。「完璧であり続けろ」「歩みを止めるな」――それが厳しい父の教えだったからだ。「未来の防衛隊の要」と称賛されるキコルが背負う使命はとてつもなく大きい。必要以上に力を誇示しようとする高慢な言動。犠牲者(リタイア)を出させないように1人で先陣を切るのも、きっと父に認められなければいけないという重圧と背負った使命感からくる裏返しだったのだ。

傷つきながらも必死に立ち上がり、仲間のために足止めしようと最後まで怪獣に立ち向かおうとするキコルの姿はここまでに描かれてきた生意気な人物像とは大きく違うもの。SNSではこのキコルの姿に胸を打たれた視聴者から、「どこまでやれば父は納得するのか、可哀想」「真実を知った。キコルは本当は弱くて救いを求めている」「キコルちゃん、ただの戦闘狂ではなくてやっぱり守る側の人だった」などのコメントが続出。明らかになったキコルの過去によって、感情移入が一気に高まっていく。

しかし、そんなキコルもついに力尽きてしまう。「ごめんなさいパパ…。私、完璧でいられなかった」と涙を浮かべたとき、目の前に現れたのはキコルの窮地を知り、全力で駆け付けたカフカだった。「よく頑張ったな、キコル!」と、それは彼女が今まで一番言って欲しかった言葉だった。ニカっと笑うカフカ、ハッとした表情を見せるキコル。ここでキコルの心で何かが動いたのはたしかだった。この2人のシーンには「最高なおっさんだよ!」「第一声がこれって泣けちゃう」「これはキコルちゃん、キュンとしちゃうわね」と視聴者も盛り上がりを見せていた。

■鬼密度で魅せたワンパン粉砕シーン

大きなハイライトとなったのは、本獣と怪獣8号に変身したカフカとの対決シーン。対決といっても、勝負はまたしてもワンパンの決着だった。復活した本獣のフォルティチュード(怪獣の強さを示す強度)は6.4。これだけでも防衛隊が一個中隊で処理するレベルらしいが、怪獣8号のフォルティチュードはそれを遥かに上回る9.8。歴史に残る大怪獣だと判明した。そして、その力がどれほどのものなのかは次の一瞬で明らかになる。

本獣の拳と怪獣8号の拳が激突すると、わずかな拮抗のあとに衝撃の波が本獣の体を木っ端微塵に吹き飛ばす。足の固定、肘のブーストを経て、怪獣8号の体にみなぎるパワー、衝撃のすさまじさが強烈なインパクトを残したこの数秒は、「またしてもワンパン決着、サイタマかよ!」「痛快のワンパンKO」「テンションぶち上り!」など、視聴者からどよめきが上る場面となっていた。

ちなみに周知のとおり、本作の制作は「攻殻機動隊」シリーズ、「銀河英雄伝説 Die Neue These」シリーズなどハイクオリティー作品で名を馳せるProduction I.Gで、そこにモンスターデザイン&ワークとして「ヱヴァンゲリヲン 新劇場版」を手掛けるスタジオカラーが加わっている。このタッグならバトルシーンの作画が抜きん出ているのは当然だが、スロー再生で見ると今回のワンパンシーンは一層すさまじいことになっているのがよく分かる。原画、動画、エフェクト処理が鬼の密度になっているので、興味がある方はじっくり見てみるといいだろう。

■謎と波乱に満ちた王道展開。カフカの今後は?

物語としては、謎と波乱に満ちた展開だった第4話。まず、人の言葉をしゃべる知能を持った怪獣の登場だ。カフカのように怪獣に寄生された存在なのか、それとも別の形で生まれた怪獣なのか。どんな目的で選抜試験に現れたのかも不明だが、人間社会に溶け込んでいる危険な存在であることはたしかだろう。公式サイトでは「怪獣9号」と紹介されており、怪獣8号に続く識別怪獣になるようだ。

また、キコルの前で怪獣に変身してしまったカフカの今後も気になるところ。今回キコルはカフカの秘密を口外しないでくれたが、市川レノ(CV.加藤渉)が確信しているように、カフカは誰かを守るためなら人前での変身も辞さないだろう。薄氷を踏むようなカフカの運命はどう進んでいくのか。放送終了後、SNSには「めちゃ面白くなってきましたよ!」「王道展開だけどそれがいい」「ラストの引きもうまくて続きが気になりすぎる」など、燃える展開に引き込まれる視聴者の感想が多数寄せられている。

■文/鈴木康道