地震で大きな被害を受けた石川県七尾市出身の辻口博啓シェフ。名古屋で開かれているチョコの祭典「アムール・デュ・ショコラ」で、石川県の塩を使ったショコラシューを販売するなど、スイーツを通じて故郷への支援を始めています。  名古屋で開かれている日本最大級のチョコレートの祭典「アムール・デュ・ショコラ」。見た目も華やかな、色とりどりのショコラが並んでいます。

 国内外で人気のおよそ150ブランドが集結していて、有名シェフたちも自ら店頭に立ち、アピールに懸命となっています。  そんな中、特別な思いで「アムール」に臨んでいるのが、国内外で活躍する人気パティシエ・辻口博啓シェフです。地震で大きな被害を受けた石川県七尾市の出身です。

辻口シェフ: 「実は被災地に入って炊き出しをしたりとか物資を運んだりとか、そういったことをしながらこのアムール・デュ・ショコラに臨んでいる」  元日に能登半島を襲った最大震度7の地震で、これまでに233人が命を落としました。七尾市でも8500棟以上の住宅が倒壊などの被害を受け、ほぼ全域で断水が続いています。  1月11日、辻口シェフは故郷に足を運んでいました。 辻口シェフ: 「今まで本当に何気ない日常の中で人が行き交っていた場所が、ゴーストタウンみたいになってしまって。本当にこれが現実なんだろうかと、非常に受け入れがたい気持ちがずっとあります」  高校時代に通学で使った鉄道は、列車が線路上で立ち往生。七尾市にある辻口シェフの店も休業が続いています。故郷は、一変していました。

 辻口シェフは七尾市への支援を開始しました。被災者のために3万個のお菓子を届け、地元の仲間たちと炊き出しを行いました。

辻口シェフ: 「お菓子とか、そういう子供たちの余暇になるもの、安心するものが少ないということだったので。僕はパティシエなので、おいしいお菓子を地元に届ける」

 辻口シェフは今回の「アムール・デュ・ショコラ」でも、地元・能登への思いをスイーツに込めていました。  石川県珠洲市の特産の『塩』をシュー皮とクリームの両方に使った「珠洲の塩ショコラシュー」、1日30個限定です。

購入した女性: 「おいしそうだったのと、限定ということで気になって」 購入した男性: 「(買うことで)応援ができるのであればいいかなと思っています」 辻口シェフ: 「実はうちの商品はほとんど珠洲の塩で作られているんです。塩と合わさることによって、より味わい深くなる」  珠洲市は古くから塩作りが盛んで、海水を汲んで天日で乾かす昔ながらの「揚げ浜製塩」によって、海のミネラル豊富な塩ができ上がります。  しかし、珠洲市は今回の地震で壊滅的な被害を受けました。

Q.塩の製造はストップしている? 辻口シェフ: 「ストップどころか被災していますね。これから先、『揚げ浜製塩』の塩がどこまで使えるかはまだ分からないですね」  先が見えない復興への道。辻口シェフはSNSで募金への協力を呼びかけていて、支援の輪はパティシエ・鎧塚俊彦さんら全国に広がっています。

辻口シェフ: 「スイーツでしか僕自身は協力できないので。募金とスイーツ、そこに集中して、それぞれの色んな業種の人たちが自分たちの得意とする分野を集結して、被災地に協力してもらいたいなと思います」