心不全で死去した大相撲の元横綱・曙太郎さん(享年54)のプロレスラーとしての素顔は…。2001年に角界を去った後、格闘技戦を経て05年にプロレス初参戦。3冠ヘビー級王座を獲得するなど全日本プロレスを中心に活躍した。当時、ともにリングに上がっていたカズ・ハヤシやケンドー・カシンがプロレスラー・曙さんの天才ぶり、さらに3冠戦も戦った船木誠勝が、生前の曙さんが語っていたある〝本音〟を明かした。

 曙さんがプロレス転向当初、練習相手を務めた一人がカズだった。「横綱までいった人なのに、ゼロから学ぼうという姿勢で僕が恐縮してしまうくらいでした」と謙虚な姿勢を振り返る。そして「よく練習をさせていただきましたけど、受け身とかもすぐに覚えていましたね」と当時の驚きを語った。

 また2014年のチャンピオン・カーニバルで対戦するなどしたカシンは曙さんの人となりを「偉ぶらないですよね。みなさんおっしゃる通り、謙虚な感じがしました」と話す。レスラーとして「最高の部類に入るんじゃないかと思います。あの体で動けましたから。最初からプロレスに順応していて〝キャリアが浅いのになんでこんなにできるの?〟って感じでした」と評価。その理由を「言われたことを素直に聞くからだと思います。一つの道を極めたのに、また一から覚えようという気があった。それがなかったの小川直也じゃないですかね。曙さんは受け身の練習とかも相当やったんだと思います。小川直也はそもそも受け身を…(以下略)」とあさっての方向に流れ弾を放ちながら分析した。

 曙さんの訃報後、関係者がこぞって語ったのが謙虚さと優しさだ。その裏側を語るのが船木。13年3月に3冠王者として曙さんを返り討ちにするなどリングでやり合った一方、巡業に出れば浜亮太を加え飲みに出る、文字通りの〝戦友〟だった。その友について「いつも寂しがっていた記憶がありますね」と意外な言葉を口にしてからこう続けた。「ひと一倍、体が大きいので…。だから横綱になれたんですけど、それを本人はすごく気にして、人に恐怖を与えないように気を使っているんだなと、当時近くにいたからこそ感じました」

 体格で恵まれているからこそ、他人に恐怖感を与えないよう気遣っていると感じたという。それを物語るエピソードとして「酔っぱらうと『俺なんか、外に一歩出たらバケモノ扱いだから』って言うんですよ」と明かす。そして「特に相撲を辞めた時に見られ方の差を感じたんだと思う。だから格闘技の世界に戻ってきたと思います。〝格闘技をやっていればバケモノじゃない〟という。そういうのを気にしていた人だなと思いました」と続け、周囲から「横綱」と慕われるに至った優しさの裏の〝本音〟を語った。

 最後に船木は「夜中までずっと笑って飲んでいましたね。それが楽しくて…」。大横綱であり名レスラーだった曙さんの冥福を祈った。