熱狂の本当の立役者は…。ボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(31=大橋)に挑戦したルイス・ネリ(29=メキシコ)の株が急上昇している。6日に行われたタイトルマッチ(東京ドーム)で、ネリは6ラウンド(R)TKO負け。それでも、モンスターから初ダウンを奪うなど果敢に立ち向かった〝悪童〟を称賛する声は少なくない。総合格闘家の〝バカサバイバー〟こと青木真也(40)もその一人だ。

 かつて元WBC世界バンタム級王者の山中慎介氏と2度戦ったネリは、1度目がドーピング陽性、2度目が大幅な体重超過で〝悪童〟として日本中の嫌われ者となった。だが、今回は計量も500グラムアンダーでパスし、試合では果敢に攻めて〝あわや〟の場面もつくってその戦いぶりを評価する声も上がった。

 青木も試合中、興奮のあまり「いけ! ネリ!!!」と自身の「X」に投稿し、一部ボクシングファンから反感を買った。一夜明けて取材に応じると「参ったよ…。『X』でゆたぼんにまで怒られちゃった。大谷翔平と井上尚弥に逆らっちゃいけないっていうのが、今のこの国のルールなんだっていうことをすっかり忘れていた。トホホ…」と、言葉とは裏腹にしゃがれ声を弾ませる。その上で〝格闘技界きっての逆張りオジサン〟は、ネリへの思いをこう力説した。

「だって素晴らしい〝仕事〟だっただろ。1Rにダウンを取って沸かせて、最後にちゃんと寝る。見せ場をつくってみんなの期待通りにしたんだから、最高の悪役じゃないか。その上、最後は隙あらば『皇治』(頭突き)を狙っていたじゃん。あそこで皇治を出すのが、悪役として最高だ」

 そして青木は、今回のネリから「学ぶことが多かった」と断言。SNSでファンの声が大きくなった時代だけに「要は、嫌われることも商売になるっていうことなんだよ。特に今回のように〝国のスター〟のライバルを目指すのも選手として大事なことだと思った。国の敵になることが金になるから。青木においてはそれがエドゥアルド・フォラヤン(フィリピン)なんだけど」と指摘する。

 さらに「だって計量を500グラムアンダーでクリアしたらしたで『ナメてんのか』って言われてさ、入場でもブーイングされたりってすごかったじゃん。なのに全然のまれていなかっただろ。いや、のまれないどころかダウンを奪ったんだから。あの姿勢は多くの格闘技選手が学ぶべきだと思う」とメガネを光らせた。

 その上で「1回会ってみたいし、(シンガポールの格闘技イベント)ONEにも推薦したい。ロッタン(ジットムアンノン=タイ)とかと戦ったら面白そうじゃん。あとはサイバーファイトの新社長にも推薦したい」とニッコリ。最後に「それはそれとしてグリートの鈴木社長がALL TOGETHERに真正面からマーダービンタをぶっ放していて、その姿勢はまさにネリで感動しました、はい。そんな僕はいつになったらグリートできるんでしょうか…」とつぶやくと、神宮前から自転車で走り去った。