競輪の第127(男子72人)、128回(女子21人)選手候補生の入所式が16日、静岡・伊豆市の日本競輪選手養成所で行われ、計93選手候補生が保護者らに見守られながら晴れの式典に臨んだ。

 その中の一人である市田龍生都(りゅうと、22=福井)候補生は〝相当の覚悟〟を持って輪界に飛び込んできた。父の佳寿浩氏は2010年にGⅠ寛仁親王牌を制するなど18年12月の引退までに通算451勝を挙げた名選手。一見、輪界入りは自然な流れのようにも思われるが、高校卒業後の進路を決める際には父から「覚悟がないならやめておけ」と言われ、中央大への進学を決めている。

 大学時代にはナショナルチームでも研さんを積み、22年にはインカレでチームスプリント、ケイリン、1キロTTで2年連続の3冠を達成。昨年のインカレでも1キロTTとケイリンの2冠に輝き、全日本選手権と全日本学生選手権でも1キロTTを制すなど、めきめきと力をつけて「脇本雄太2世」と言われるまでになった。

 厳しい世界であることは父の生き様を見て知っている。17年のGⅡウィナーズカップ(高松)で初日に落車した際には右股関節脱臼骨折に右大腿骨粉砕骨折。病室で動けずにいる父、不屈の闘志でリハビリに励む父、復活して「不死鳥」と称された父を目の当たりにしてきた。「落車やケガの可能性は誰にでもあるし、仕方がない。あの時(17年)も、たまたま父だったというだけ。自分は自転車で生きていくしかない」。力をつけて、覚悟を決めた今の龍生都に迷いはない。

 目標とするのは「自在で戦う姿がカッコよかった。自分には到底かなわない選手」と尊敬している父だ。学生時代に培った力に磨きをかけて、まずは早期卒業を狙う。