バレーボール界に新風を吹かせる兄弟をご存じだろうか――。男子の高橋塁(24=サントリー)は、2学年下で日本代表の主力として活躍する弟・藍(24=同)と撮影する、ユーチューブチャンネル「らんるい」を約2年前に開設した。2人の〝素〟が詰まったチャンネルは、5月現在で登録者数28万人を突破。コート内外で大きな注目を集める中、兄の塁が単独インタビューに応じ、2人がバレーに出会ったきっかけ、ユーチューブ撮影に込めた思い、今後の目標を明かした。

 ――小学生のころから毎日のようにバレーをしていた

 塁 僕が小学2年の時に、テレビでめぐさん(元女子日本代表の栗原恵さん)を見た時に「なんやこの競技!」と思って「やりたい」と言ったのがバレーを始めたきっかけかな。藍は僕がやりたいことについてくる感じだったので、次の日から「藍、行くぞ」とボールが見えなくなるまで公園でバレーをやって、家の中に戻ったら風船でやっていた。家の中でボールを使ったら怒られるので、風船でやっていたけど、何回も風船が割れましたね(笑い)。

 ――年齢が近いからこそ良かったのでは

 塁 そうですね。藍がいなかったらどうしていたんやろ…。当時は藍に断る権限がなかったので、「パスやるぞ」って言ったら「はい」みたいな感じだった(笑い)。バレーを始めるまではケンカもあったけど、バレーを始めてからはなくなりました。

 ――中・高時代はともに同じチームの主力として活躍したが、大学は別々の道を選んだ 

 塁 当時は一緒にやりたいとか、戦ってみたいとかはそんなに思っていなかった。高校(京都・東山高)はもう来るやろうな、一緒にやるやろうなという感じだった。でも大学の進路を決める時は、藍も「塁と戦ってみたい」と言っていたので、僕は日大に行きましたが、藍は日体大に行きましたね。

 ――藍のすごさを実感したのはいつか

 塁 中学の時の藍は小さくてスパイカーのイメージはあまりなかったけど、高校で一緒にやった時に、僕の高校1年時と比べたら藍の方が上やなと思った。高校3年生の僕と同じ仕事量をこなしていたので「抜かされるぞ」と思うようになりました。

 ――右肩上がりに成長を遂げる藍の存在はどう映っていた

 塁 藍が春高(全日本高校選手権)で優勝して、18歳で日本代表に選ばれて、東京五輪に出て、イタリアに行く中で知名度が高まったじゃないですか。以前は藍が「塁くんの弟」と呼ばれていたけど、そこから僕が「藍くんのお兄ちゃん」と呼ばれるようになった。その時に初めてそれって結構キツいなと思ったけど、今はもう1周回りましたね。大学4年の時には腰のケガをして本当に苦しかったけど、バレーが好きという気持ちはずっと消えなかったので、乗り越えられましたね。

 ――バレー界で最も注目される兄弟となったが、コート外でもユーチューブチャンネル「らんるい」が大人気だ

 塁 兄弟でバレー界を盛り上げたい気持ちと、藍の中に今までにいなかった選手になりたいという気持ちがあるので始めた。バレーをやりながらユーチューブもやる選手はあまりいないし、僕らは兄弟なので、企画の幅とかも広がるから面白いんじゃないかなと。バレー界がもっと盛り上がってほしいし、僕たちを知ってもらって、試合に見に来てもらうことなどにつながったらなと思っている。動画を最初に見てくれたのはバレーファンだと思うけど、ユーチューブはいろんな方が見られるので、バレーを知らない人にアプローチできる。副業みたいな感じで、これからもコツコツやっていきたいです。

 ――撮影時のこだわりは 

 塁 あまり(撮影用の顔を)つくらないようにしている。家族や親戚の仲がすごい良くて、この間のドライブの動画にはいとこ(モデルの杏里)が出てくれた。素の姿、オフの姿をみなさんに見てもらうことで、より僕らを知ってもらえたら。でも、気をつけている部分もあって、本業はバレーなので、バレーにプラスになるようにと考えている。僕らで企画する時もあるけど、ユーチューブを撮影するマネジャーさんとかも考えてくれているので、連携をとりながらやっています。

 ――目標のチャンネル登録者数は

 塁 最初から100万人を目標にしている。なんか面白いじゃないですか(笑い)。バレーの企画をやって100万人を目指すよりも、自分たちの日常などのバレー以外の部分でもファンになってもらえたらうれしい。最近はユーチューバーかというくらい「ユーチューブ見ています」「めっちゃ好きです」「あの動画が好きです」とか言ってもらえることが増えた。僕ら側からファンを選ぶことはできないけど「らんるい」を見て選んでくださるなんて、そんなにありがたいことはないなと。だからこそ、恩返しじゃないけど、自分たちの楽しい雰囲気をお見せしていきたいですね。

 ――やってみたいコラボ企画はあるのか

 塁 以前に「しょうやん男三兄弟」というキッズの子たちとコラボさせてもらったのが、すごい楽しかった。そういうコラボを通して、向こうのファンの方にもバレーや僕たちのことを知ってもらえたらうれしい。他のコラボは具体的には決まっていないけど、まずはとりあえず2人で撮りたい。1人で撮るのは好きじゃないというか、何をしゃべっていいのか、わからない(笑い)。また2人で撮れるタイミングがあったらいいですね。

 ――最後に今後の目標を

 塁 ここまでやっている以上は代表も狙いたいけど、現実的に見て厳しい部分はある。もっと頑張らないといけないので、藍に一歩でも近づけるように頑張りたい。藍にはパリ五輪でメダルを取ってほしい。東京五輪の時は「自分の経験値が足りないから負けた」と言っていたけど、経験値はこの数年でだいぶ上がっていると思う。あとは自分たちがユーチューブもそうだが、いろんな場面で自分たちがやりたいこと、楽しいことをやる中で、子供たちに夢を与えられるような兄弟になりたいです。

 ☆たかはし・るい 2000年1月14日生まれ。京都府出身。元女子日本代表の栗原恵さんに憧れ、小学3年時から本格的に競技を始める。京都・東山高から日大に進学すると、3年時には全日本大学選手権(インカレ)で45年ぶりの3位入賞に貢献した。卒業後はVリーグ1部サントリーに入団し、23〜24年シーズンは2季ぶり10度目の優勝に貢献。パナソニックとの決勝ではピンチサーバーとしてチームに流れを引き寄せた。弟は日本代表の主力として活躍する高橋藍。186センチ。