宮田氏(右)から講習を受ける北村宏
宮田氏(右)から講習を受ける北村宏

 社台スタリオンステーションでハンドラー(馬を持つ人)の育成やテクニカルアドバイザーを務めるホースクリニシャン・宮田朋典氏による講演会「人と馬との共生」および実馬による実習が、8、9日の2日間にわたってJRA美浦トレーニングセンターにて行われた。

 JRA主催の講演会は、美浦トレセン内の厩舎関係者が競走馬との日常業務をより安全に行えるようになることを目的に、定期的に開催されている。会場には200人を超す関係者が参加し、立ち見が出るほどの盛況ぶりで参加者の中にはGⅠ馬を複数管理する調教師の姿も見られた。

 8日の講演会では、馬のメンタル・生態に注目し人間との信頼関係からコミュニケーションを図る「ナチュラルホースマンシップ」について講義が行われ、参加者は力を用いずロープ一本で馬との距離感を操作する宮田氏の解説に興味津々の様子だった。

 講演に参加した田中勝春調教師は「ずっとこの講演会を楽しみにしていた。ナチュラルホースマンシップに興味を持ちユーチューブなどで勉強していた。騎手だった頃から『馬を動かすのは力ではなく、いかに神経をつなぐか』と考えていたので、今日の講演会で改めてなるほどと思うこともあり、いい勉強になりました」と感想を述べた。

 また、9日の講習会では前日の講義の内容を踏まえて実馬による実習が行われた。宮田氏がリードロープを指2本だけかけた状態で馬を前後に自由に動かす様子に、参加者からは驚きの声が上がった。

 講習会に参加し、実際に操作を体験した北村宏は「乗馬から競馬の世界に入ったので、こういうことには興味があり以前から知っていた。騎手という立場上、馬をひくことは今はなかなかないが、やってみると新しい発見があった」と感想を述べた。

 今回で美浦トレセンでの講演が2度目となる講師の宮田氏は、多くの関係者が参加したことに対し、「厩舎関係者の指示する側と指示される側で知識を共有することで、より多くのホースマンが安全に活躍できるよう力になれればという気持ちで講演しました。今後も広めていきたい」と意気込み、「競走馬のメンタルをいたずらに損なわないのがナチュラルホースマンシップの強み。強いメンタルを保った競走馬からは良い子供が生まれやすいといわれており、そういった情報も発信していければ」と今後の抱負を語った。

著者:東スポ競馬編集部