日本ダービー2024

[GⅠ日本ダービー=2024年5月26日(日曜)3歳、東京競馬場・芝2400メートル]

 日本ダービー(26日=東京芝2400メートル)で史上8頭目の無敗2冠を狙うジャスティンミラノ。ダービー現役最多3勝を誇る友道厩舎が早くから5・26をターゲットにしてきたことに加え、今が旬のキズナ産駒、熱い思いに燃える追い切り役…。この馬を取り巻くファクターから死角はゼロに思える。91代目の「誉れ」を受けるのはやはりこの馬か。

ベストではない皐月賞でレコードV

皐月賞を制覇したジャスティンミラノ=戸崎圭は史上8頭目の無敗2冠を目指す
皐月賞を制覇したジャスティンミラノ=戸崎圭は史上8頭目の無敗2冠を目指す

 ダービー馬はダービー馬から――。今年、その言葉を最も体現しているのが種牡馬キズナで、実に5頭もの産駒を日本ダービーに送り込む。現役時代にキズナの主戦を務めた武豊は「本当にいい馬でしたよ。(父の)ディープインパクトらしさと違った感じと両方あって。(産駒も)走ってくるとだいたい想像はしていました。母系もしっかりしているしね。最初は牝馬が多かったけど、やはり男馬も(活躍馬を)出してきた。距離もそうですし、芝でもダートでも…いろんな条件で走れているのもすごいですよね」と評価する。

 キズナの魅力の一つである万能性。それをハイレベルな走りで証明しているのが、史上8頭目となる無敗の春2冠を狙うジャスティンミラノだ。スローの瞬発力勝負だった2走前の共同通信杯とは対照的に、前走・皐月賞は1000メートル通過57秒5という超ハイペースからの我慢比べ。未知の激流、初の右回りをクリアしての1冠奪取は、懐の深さに改めてスポットライトが当たる一戦となった。

 その奥深さは友道厩舎過去3頭のダービー馬との比較からも分かるだろう。「マカヒキ、ワグネリアン、ドウデュースは後ろから行く馬で似ているところがありましたが、その3頭とはまたタイプが違う。この馬にはポジションを取りに行く脚もありますから」と藤本助手だ。

 皐月賞を1分57秒1のレコードで制したジャスティンミラノだが、もとより大目標は日本ダービー。大跳びの走りを見てもトリッキーな中山内回りがベスト条件ではなかった。その中で結果を出せた要因の一つが、ここにきての上昇度で「大型でまだ緩さが残る現状でも、この馬にはそれを上回る成長の速さがある。四肢やトモの使い方に力がついて、乗っていても時計感覚が狂うくらいに歩幅が大きくなってきました」(藤本助手)。

“これで走らせられなかったら康太に笑われちゃうよ”

【日本ダービー】ジャスティンミラノ無敗2冠へ〝絆〟あり 藤岡康太さんの遺志を受け継いだ調教パートナー

 前走後は自厩舎のダービー馬3頭と同様に在厩調整。ダメージの回復を図りつつ、精力的に負荷をかける――。大一番の勝ち方を知る西の名門は、この相反するタスクをクリアしながら、15日の1週前追いでウッド6ハロン81・6―11・3秒と守りに入ることなく攻めてきた。「ここでお釣りを残す必要はありませんから、前走よりもう一歩踏み込んだ調整を。2週前追いの時点でこれ以上ないほどいいところまで仕上がっていましたし、1週前のひと追いで100%になったと思います」

 この重要な1〜2週前追いの手綱を任されたのは荻野琢。天国に旅立った同期の藤岡康太騎手から調教パートナーのバトンを受け継いだ。「“これで走らせられなかったら康太に笑われちゃうよ”。荻野騎手もそんな思いで取り組んでくれました」。そんな戦友との絆も2冠を後押ししてくれるに違いない。

「あとは他路線組との兼ね合いがどうかですが、一番レベルが高かったのは皐月賞だと思っています」。キズナ産駒初、そして友道厩舎4度目のダービー制覇へ。ジャスティンミラノの視界は極めて良好だ。

著者:西谷 哲生