東海道藤沢-大船間に2032年頃の開業を見込む「村岡新駅(仮称)」周辺地区のまちづくりをテーマにしたシンポジウムが先月27日、藤沢商工会館で開かれた。市民など約80人が参加。学識者や市関係者などが登壇し、開業決定から3年が経過し、まちびらきを見据えた公民学連携の都市形成について、具体例を交えながら議論を交わした。

第1部の基調講演では、東京大学大学院サスティナブル社会デザインセンター特任研究員の三牧浩也氏が登壇。新駅設置に伴う都市形成の事例として、2005年のつくばエクスプレス開業で誕生した柏の葉キャンパス駅(千葉県柏市)周辺を取り上げた。

同エリア周辺には大学キャンパスや医療機関や企業支援施設が集積。三牧氏は行政や地域住民、不動産事業者、大学など「公民学」の連携に向けて「柏の葉アーバンデザインセンター」(UDCK)を立ち上げた経緯を説明。新たなまちづくりに向けては「ステークホルダーとビジョンを共有し、色々な人を巻き込みながら関わってもらう仕掛けが必要」と話した。

第2部ではパネルディスカッションを実施。村岡新駅周辺地区まちづくり協議会会長で東大大学院教授の中島直人氏がコーディネーターを務め、同協議会副会長で慶應大学非常勤講師の石山さつき氏、宮治正志副市長らが壇上に上がった。

中島氏は村岡新駅周辺の「まちづくりコンセプトブック」を念頭に「まちびらきの後、10年20年のプロセスがある。多様な主体を交えて議論を深めることが必要だ」と指摘。宮治副市長は「公民連携の実績はあるが、アカデミアとは経験がない。どう関わっていくかが課題だ」と述べた。

これを受けて、三牧氏は「時間軸が大事。柏の葉では20年の中で子ども向けのさまざまなイベントを積み重ねてきた」と取り組みを紹介。「10年も経てばまちづくりの担い手になる。子どもたちが自由に発想できるプログラムなどがあってもいいのでは」と助言した。

新駅設置は21年3月に県と藤沢鎌倉両市、JR東日本の4者が合意。同地区は市の6つの都市拠点の1つに位置付けられており、研究開発拠点の形成が予定されている。