現在の神奈川区台町周辺で幼少期を過ごした小島ひろ子さん(76)が、自身の生い立ちや家族との思い出を記した『思い出は横浜駅西口から』(文芸社・1200円+税)をこのほど自費出版した。

元通産省の繊維工業試験所(現・沢渡中央公園)の近くにあった公務員宿舎で3歳から22歳までを過ごした小島さん。著書では両親と姉、妹、祖母の6人で暮らした日々や、就職先で出会った夫との馴れ初めから最期のひととき、亡き母の子ども時代の手記などが記されている。

2年前に日刊紙で同社の文学賞の記事を読み、以前遺品整理で亡き母が自身の思い出を綴った文章を見つけていたことから「母の文章を色々な人に読んでほしい」と、自分の生い立ちと合わせた作品を応募した。

賞には漏れたものの、同社から自費出版を提案され「人生の終わりの大冒険の心境で書きました」と小島さん。家族の協力のもと当時の記憶をたどりつつ、中央図書館にも通って相鉄の社史などから当時の正確な情報を書き残した。

昭和中期の風景を

家族でのお出かけや妹が作った組み紐のアクセサリーなど、文中の挿絵も鉛筆で自ら描いた。

本文中には横浜駅名品街で食べたドライカレーや市電の花電車、こっそり忍び込んで小川でザリガニ釣りをした繊維工業試験所、夫からのプレゼントが隠された駅近くのコインロッカーなど、昭和20〜40年代の横浜西口周辺の風景がアルバムのように書かれている。「昔一緒に遊んだ子や近所に住んでいた方たちの目にこの本が留まってくれれば」と小島さん。

書籍は全国の書店で取り寄せできるほか、Amazonなどからも購入できる。