建設業と物流業で今年4月から時間外労働の上限規制が適用され、人手不足が深刻化すると見込まれる「2024年問題」。実は、すでに昨年から人手不足が原因で倒産する企業が増え始めていました。本稿では、企業の人手不足の現状を確認したうえで、対策のあり方を検討していきたいと思います。

建設業・物流業の人手不足の状況

帝国データバンクによると、2023年1〜10月の人手不足倒産は206件に上り、すでに年間の過去最多を更新しました。このうち、「2024年問題」に直面する建設業・物流業が109件と半数を占めています。

今回、人手不足倒産したN建設を取材しました。N建設は1960年代に創業し、道路・上下水道などの工事を中心に発展し、最盛期には40名超の従業員がいました。しかし、公共工事の減少で業績が徐々に悪化し、昨年ついに行き詰まりました。

N建設の増川社長(仮名)は、「当社は後継者不在だったので、(信用調査会社による分類では)人手不足倒産ということになっていますが、ちょっと首をかしげます」と困惑した表情を見せました。

「たしかに、現場作業員を確保できずに仕事を逃すこともあり、後継者を含めて人では苦労しました。ただ、新規顧客開拓のために採算度外視で受注したことや工程管理が甘かったことなど、そもそも事業運営がずさんでした。人手不足は数ある倒産原因の1つというところです」

物流業はどうでしょうか。ある大手物流企業の幹部は、「すでに業務合理化など対策をかなり進めており、今のところさほど大きな悪影響は出ていません」とのことでした。

「足元の業績は良くありませんが、個人消費の低迷で荷動きが停滞していることによるもので、人手不足とは無関係です。逆に人手不足を理由に運賃改定が通りやすくなっているというプラス面があります。4月以降や他社のことはともかく、人手不足で大打撃を受けているという状況ではありません」