世界各国のカカオや国内のさまざまな食材を組み合わせ、手作業で作られる色彩豊かなチョコレートが人気の「久遠(くおん)チョコレート」(本店・愛知県豊橋市)。

看板商品の「QUONテリーヌ」をはじめ、オリジナリティあふれる商品には定評があるが、人気作を生み出してきた背景には、従業員約700人が多種多様な人たちで構成されている、という特徴がある。

代表の夏目浩次さんがこだわるのは、障がいや生きづらさを抱える人たちに、単なる「居場所」ではなく「稼ぐ場所」を作ること。

「リアルな所得があってこそ、リアルな生きがいは生まれる」という信念のもと、全国の障がい者の平均賃金約1万6000円という壁を打ち破り、その10倍以上の賃金を支払う「稼ぐ場所」を創出している。

とはいえ、夏目さんは「社会貢献ブランド」をうたっているわけではない。目指すは、ただひたすらに「一流のチョコレート」。

夏目さんの著書『温めれば、何度だってやり直せる チョコレートが変える「働く」と「稼ぐ」の未来』から一部を抜粋、編集し、その思いを伝える。

僕にとって「久遠チョコレート」の商品が自慢なのはもちろんだけれど、もっと誇らしく思っているのは、ここで働くスタッフたちだ。久遠チョコレートの従業員はおよそ700人。その700人は、「QUONテリーヌ」と同じように、多種多様な人たちで構成されている。

働く仲間の約95%は、お菓子作りの未経験者。身体や心や発達に障がいのある人たちが、全体のおよそ6割を占めている。さらには引きこもり経験者もいれば、子育て中・介護中でフルには働けないという女性たちもいる。

障がい者と働くと「感動」がある?

あるとき障がい者のイベントに呼ばれ、ステージに上がって司会者とトークすることをお願いされたことがあった。

事前に流れを見せてもらうと、そこには「障がい者雇用で大変なところはどこですか?」とか「障がい者と日常的に関わり、どんな感動がありますか?」といった質問がリストアップされていた。