しかしある朝、早朝の定例会議を欠席してしまう。終了10分後に寝室を出て、「寝坊しました」。食堂で朝食をとってから、事務所へ顔を出した。上司である工事主任は「気をつけてください」と一言のみだったが、広報担当者が代弁する形で「遅刻したら、飯を食う前に上司に謝りに来い」と叱責した。

このシーンは、1時間番組のうち、わずか3分ほど。その後は、工事主任から汚名返上のチャンスを与えられ、予期せぬトラブルに巻き込まれながらも、最終的には完成にこぎ着ける――といった内容で、番組を通して見ると、「若手社員の成長物語」といった印象を残す。

そんな番組が、放送から1カ月半ほどたった2月中旬、炎上の様相を呈し始めた。突如キャプチャー画像がSNS上に拡散されたのだ。安全管理がなにより求められる建設会社において、現場監督の重責を担う人物が寝坊することそのものに加えて、カメラの前で叱責した広報担当者の是非も問われている。切り取られて、文脈がわからなくなった結果だろう。

SNS上では「肝が据わっていて良い」といった好意的な声から、「現場を軽視する姿勢は許せない」「なぜ放送できると判断したのか。内容を確認するべきではないか」といった批判まで、さまざまな反応がうずまいている。

カメラを通すと、どう見えるか

なぜ、ここまで炎上してしまったのか。

ひとつは「ガイアの夜明け」が報道番組として位置づけられている点が考えられる。取材先の不利益になる内容でも、実際に現場で起きたことであれば、リアルな光景をそのまま流す。それがドキュメンタリーだ。

番組公式サイトには、「あくまで報道番組の視点から番組が独自に取材対象の選定にあたっています」との一文がある。事実、これまでも「アリさんマークの引越社」の長時間労働や、「レオパレス21」の施工不良など、CMを大量出稿している企業にも、するどいメスを入れてきた。

カメラがとらえた事実が、忖度なく流される前提の上で、さらなる炎上要素となるのが「社内外の温度差」だろう。場合によっては「業界内外の温度差」になることもあるが、「中の人」としては当たり前だと感じている商慣習や社内風土でも、一般社会に照らすと非常識にあたる場合は少なくない。