近畿日本鉄道は営業キロ501.1kmと私鉄で日本一の長さの路線網を誇る。駅数は286駅で、こちらも日本の私鉄で一番多い。そのなかでもっとも利用客が多いのが大阪市阿倍野区に位置する南大阪線の大阪阿部野橋駅だ。

JR・大阪メトロの天王寺駅との乗り換え需要を背景に、1日乗降人員(2022年11月8日調査)は14万475人を数える。伊勢志摩方面の豪華特急「しまかぜ」や名古屋と大阪を結ぶフラッグシップ特急「ひのとり」が発着する大阪線の鶴橋(13万5330人)、難波線の大阪難波(10万8368人)を上回る。

通勤通学に加え観光利用も

南大阪線は大阪阿部野橋と奈良県橿原市の橿原神宮前を結ぶ39.7kmの路線。レールの幅が1067mmの狭軌で、大阪線や名古屋線の標準軌(1435mm)とは異なる。途中、道明寺から道明寺線、古市から長野線、尺土から御所線が延びていて、通勤通学など生活路線の性格が強い。橿原神宮前には標準軌の橿原線も乗り入れる。

大阪阿部野橋は橿原神宮前で吉野線に直通する有料特急や急行も走る。代表的な車両は特急「さくらライナー」や観光特急「青の交響曲(シンフォニー)」だ。吉野線は、古代の史跡が点在する明日香村の飛鳥駅などを経て、桜の名所として知られる吉野に至る。

沿線には西国三十三所の札所でもある葛井寺、岡寺、南法華寺(壺阪寺)のほか、吉野神宮、金峯山寺などの寺社を多数抱える。吉野山の桜のシーズンには臨時の特急や快速急行が運行されており、大阪阿部野橋は吉野方面への観光の玄関口としての役割も大きい。